紛争の内容
依頼者様ご家族は、休日に乗用車で走行中、一時停止標識を無視して飛び出してきたバイクに衝突されるという交通事故に遭われました。
依頼者様ご自身とご家族も同乗されており、全員が首や腰のむちうち症状を負い、通院治療を余儀なくされました。
事故状況から、相手方バイクの過失が圧倒的に大きいことは明らかでしたが、保険会社からの初期の提示では、依頼者様側にもわずかながら過失(例:前方不注意、発見の遅れなど)が認定される可能性が示唆されました。
これにより、治療費や慰謝料、休業損害などが過失割合に応じて減額されてしまう懸念があり、ご家族全員の損害を完全に回復できるか不安を感じて当事務所にご相談にいらっしゃいました。
交渉・調停・訴訟等の経過
初期対応と治療のサポート:
ご相談後、直ちに警察への届け出状況を確認し、医療機関での適切な診断と治療継続をサポートしました。
治療状況を定期的に確認し、症状固定の時期を見極めました。
過失割合と損害額の交渉:
相手方保険会社との交渉を開始しましたが、やはり依頼者様側にも過失が主張され、提示される賠償額は、過失相殺により減額されたものでした。
当事務所は、事故状況を詳細に分析し、依頼者様の過失が極めて小さいことを主張しましたが、保険会社は頑なに自社の主張を譲りませんでした。
また、保険会社が提示する慰謝料や休業損害などの損害額も、裁判で認められる弁護士基準(裁判基準)と比較して低いものでした。
戦略的な訴訟提起と和解:
依頼者様の損害を弁護士基準で算定した上で、過失相殺による減額分も考慮すると、保険会社提示額では到底納得できるものではありませんでした。
そこで、当事務所は、相手方からの賠償金を弁護士基準に近い水準で獲得し、かつ、過失相殺により減額される部分を依頼者様ご自身の人身傷害保険でカバーするという戦略を提案しました。
この戦略を実行するため、相手方保険会社との交渉が難航した段階で、裁判所での適正な判断を仰ぐべく、訴訟を提起しました。
訴訟では、当事務所が収集した証拠と医学的資料に基づき、依頼者様ご家族の負った損害(治療費、慰謝料、休業損害、交通費など)を弁護士基準で詳細に主張立証しました。
裁判所での和解協議において、当方の主張が認められ、最終的に、当初の保険会社提示額を大幅に上回る金額で、相手方から過失相殺後の賠償金を受け取ることで和解が成立しました。
人身傷害保険の活用:
相手方からの賠償金を受け取った後、当事務所は、依頼者様ご自身が加入されていた人身傷害保険会社に対し、訴訟で確定した弁護士基準の損害額から、相手方から回収した賠償金を差し引いた残額(実質的に過失相殺された部分*について保険金請求を行いました。
人身傷害保険は、ご自身の過失割合に関わらず、ご自身の損害を保険金額を上限として補償する保険であり、かつ、通常は保険料の等級が下がることはありません(ノーカウント事故として扱われることが多いため)。
当事務所が保険会社と交渉し、訴訟で認められた損害額を根拠に請求を行った結果、スムーズに保険金が支払われました。
本事例の結末
本事例では、まず相手方との訴訟を通じて、弁護士基準で算定された損害額に基づく賠償金を過失相殺後の金額で回収しました。
その後、依頼者様ご自身の人身傷害保険を活用することで、過失相殺によって減額された部分(弁護士基準で計算された損害額の過失割合分)を補填することができました。
結果として、依頼者様ご家族は、負った損害の全額を、実質的に自己負担なく回収することができ、精神的にも経済的にも完全に救済されました。
また、人身傷害保険の利用が、今後の保険料に影響することもありませんでした。
本事例に学ぶこと
弁護士基準の重要性: 交通事故の賠償額には、保険会社が提示する任意保険基準と、裁判所で認められる弁護士基準(裁判基準)があり、後者の方が高額になることがほとんどです。適正な賠償額を得るためには、弁護士基準での請求が不可欠です。
人身傷害保険の有効活用: ご自身に過失がある場合でも、人身傷害保険は、ご自身の損害を補填する非常に強力なツールとなります。
特に、相手方からの賠償金だけでは不足する場合や、弁護士基準での損害額を確保したい場合に、その真価を発揮します。
保険料への影響: 人身傷害保険の利用は、通常、保険料の等級に影響しない「ノーカウント事故」として扱われることが多いです。
戦略的な法的アプローチの必要性: 本事例のように、過失相殺が絡む複雑な事案では、単に交渉するだけでなく、訴訟提起を戦略的に活用し、人身傷害保険と組み合わせることで、最大限の賠償額を回収できる可能性があります。
早期の弁護士相談の重要性: 交通事故に遭われた際は、安易に保険会社の提示を受け入れる前に、早期に弁護士にご相談ください。