紛争の内容
ある冬の夕暮れ時のことでした。70代後半の方が道路を横断しようとした際に、走行してきた自動車に轢かれるという痛ましい事故が発生しました。
被害者の方は搬送されましたが、残念ながらお亡くなりになられました。

突然ご家族を失った悲しみの中、相続人となるご遺族全員からのご依頼を受け、当事務所が窓口となって相手方保険会社との示談交渉を行うことになりました。

ご高齢の方が被害に遭われるケースでは、身体能力の低下や視認性の悪さなどが影響することも多く、保険会社側との交渉において慎重な対応が求められる事案でした。

交渉・調停・訴訟等の経過
一般的に「歩行者は交通弱者であり、車対人の事故では車が全面的に悪い」と思われがちですが、法律の世界では必ずしもそうとは限りません。

今回の事故現場は横断歩道のない道路でした。道路交通法上、歩行者が横断歩道のない場所を横断して事故に遭った場合、歩行者側にも一定の落ち度(過失)があると判断されます。

本件においても、過去の裁判例(「別冊判例タイムズ」等の基準)に照らし合わせると、被害者側にも基本となる過失割合が生じることは避けられない状況でした。

そこで弁護士は、過失割合そのものを無理に否定するのではなく、「損害賠償額の算定基準」を最大限まで引き上げることに注力しました。

保険会社が提示する金額は、自社の支払基準に基づく低額なものであることがほとんどです。
私たちは、裁判を行った場合と同等の「裁判基準(弁護士基準)」による死亡慰謝料や逸失利益を強く主張し、粘り強く交渉を重ねました。

本事例の結末
交渉の結果、歩行者側の過失を考慮して賠償額を減額する「過失相殺」は適用されたものの、その計算の基礎となる総損害額については、こちらの主張通り「裁判基準の満額」を認めさせることに成功しました。

その結果、過失分が引かれた後であっても、最終的な受領額は3400万円以上という高額な水準で示談が成立しました。

ご遺族からは「こちらの落ち度を指摘され不安だったが、弁護士にお願いしたことで、故人の命の重に見合う結果を出してもらえた」と安堵の言葉をいただきました。

本事例に学ぶこと
本件からお伝えしたいのは、「被害者に過失があるからといって、適正な賠償を諦める必要はない」ということです。

歩行者の飛び出しや横断歩道外の横断など、被害者側に不利な事情がある場合、保険会社はそれを理由に極めて低い示談金を提示してくることがあります。
「こちらにも悪いところがあったから仕方がない」とそのまま判子を押してしまうのは早計です。

たとえ過失相殺が避けられない事案であっても、弁護士が介入し、ベースとなる賠償額を「裁判基準」で再計算することで、最終的な手取り額が数百万円、あるいは一千万円単位で変わることは珍しくありません。

亡くなられたご家族の無念を晴らし、残されたご遺族の生活を守るためにも、示談を急ぐ前にまずは専門家である弁護士にご相談ください。

弁護士 時田 剛志