紛争の内容
本件は、ご依頼者の方が歩道を歩行している最中に、走行してきた自動車と接触してしまった人身事故です。歩行者として通常どおり歩いていたところへ自動車が接触したという事故態様であり、ご依頼者の方には落ち度が一切ありませんでした。そのため、過失割合は加害者側100対ご依頼者の方0という、いわゆる過失ゼロの事案でした。ご依頼者の方は、接触によって負傷されただけでなく、転倒した際に着用していた衣服や所持していた鞄なども汚れたり傷んだりしており、治療費の補償だけでよいのか、身の回りの品の損害まで請求できるのかという点に不安を抱えていらっしゃいました。

交渉・調停・訴訟等の経過
受任後、まずは事故態様を確認し、過失割合が100対0であることを前提に、相手方保険会社との示談交渉を進めました。人身に関する損害については、治療費や通院に関する費用を整理して請求しました。あわせて、転倒によって損傷した衣服や鞄についても、購入時期や使用状況を確認しながら損害として算定し、人身部分の損害と一括して請求いたしました。相手方は当初、身の回り品の損害について慎重な姿勢を見せましたが、過失がゼロである以上、事故と相当因果関係のある損害は漏れなく賠償されるべきであることを丁寧に主張し、交渉を重ねました。

本事例の結末
幸いにも、ご依頼者の方のおケガは大きなものではなく、衣服についても大きな損傷ではありませんでしたが、結果として、治療費等の人身損害に加えて、損傷した衣服・鞄の損害についても全額を回収することができました。ご依頼者の方からは、見落とされがちな身の回り品の損害まできちんと補償を受けられたことに、安心したとのお声をいただきました。

本事例に学ぶこと
交通事故というと治療費や慰謝料といった人身損害にばかり目が向きがちですが、事故によって生じる損害はそれだけではありません。本件のように、転倒の際に衣服や鞄といった身の回りの品が傷んだ場合、それらも事故と相当因果関係のある損害として賠償の対象となり得ます。とりわけ過失割合が100対0の事案では、事故と因果関係のある損害は本来すべて相手方に請求できるはずであり、損害を一つひとつ丁寧に拾い上げていくことが、適正な賠償を受けるうえで非常に重要となります。たとえおケガや物の損傷が大きくない場合であっても、「物損事故ではないから」「大した損害ではないから」と諦めてしまうのではなく、ご自身に生じた損害を漏れなく見極め、正当に請求していく姿勢が大切であるということを、本事例は示しています。

弁護士 遠藤 吏恭