【交通事故】脊柱変形・骨盤骨折|圧迫骨折後の後遺障害等級と賠償を弁護士が解説

交通事故で胸椎や腰椎を圧迫骨折した。あるいは骨盤を骨折し、長期の入院を余儀なくされた。コルセットが外れて歩けるようにはなったけれど、背中や腰の痛みが消えず、長時間座っていることも立っていることもつらい——。

脊柱や骨盤の骨折は、手足の骨折と違って「見た目には治っている」ように扱われがちです。しかし、背骨の変形は一生元には戻りませんし、骨盤の変形は歩行や出産にも影響します。それにもかかわらず、適正な等級が認定されないまま低額の示談に応じてしまう方が少なくありません。

本記事では、脊柱変形とその他の体幹骨の障害について、等級認定の基準と、賠償額を左右するポイントを、埼玉県大宮の弁護士が解説します。

脊柱の障害はどう評価されるか

脊柱の障害はどう評価されるか

変形障害と運動障害の二本立て

脊柱の後遺障害は、「変形障害」と「運動障害」の二つの側面から評価されます。変形障害は背骨の形がどれだけ崩れたか、運動障害は背骨がどれだけ動かなくなったかという観点です。

どちらか一方でも基準に該当すれば等級が認定されますし、両方に該当する場合には、より上位の等級で評価されます。

第六級五号(せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの)

著しい変形とは、エックス線写真等により、脊椎圧迫骨折等によって二個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し後彎が生じているもの、または一個以上の椎体の前方椎体高が減少し後彎が生じたうえでコブ法による側彎度が五〇度以上であるものをいいます。

著しい運動障害とは、頸部と胸腰部の両方が強直したもの、あるいは頸部または胸腰部が強直したうえで所定の要件を満たすものをいいます。

第八級二号(せき柱に運動障害を残すもの)

頸部または胸腰部の可動域が、参考可動域角度の二分の一以下に制限されたものをいいます。圧迫骨折や脱臼が残存していること、頸椎や胸腰椎に脊柱固定術が行われたことなど、器質的な原因が必要です。

第一一級七号(せき柱に変形を残すもの)

脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの、脊椎固定術が行われたもの、三個以上の脊椎について椎弓切除術等が行われたものなどをいいます。

圧迫骨折の程度が軽微であっても、画像上確認できれば第一一級七号が認定されます。労働能力喪失率は二〇パーセント、赤い本の後遺障害慰謝料の目安は四二〇万円です。

圧迫骨折の見落としに注意

高齢の方や骨粗鬆症のある方の場合、受傷直後のレントゲンでは圧迫骨折がはっきりせず、数週間後のMRIで初めて新鮮な骨折であることが判明することがあります。

また、保険会社は「事故前からあった陳旧性の骨折だ」と主張してくることがあります。これに対しては、MRIのT2強調画像やSTIR画像で骨挫傷の所見(高信号域)が確認できるかどうかが決め手になります。受傷後できるだけ早い時期にMRIを撮影しておくことが重要です。

慰謝料の目安と提示額との差

赤い本の基準では、後遺障害慰謝料の目安は第六級一一八〇万円、第八級八三〇万円、第一一級四二〇万円、第一二級二九〇万円、第一四級一一〇万円とされています。

これに対し、保険会社が当初提示してくる金額は、自賠責の支払基準や社内基準によるもので、第一一級であれば一三〇万円台、第一二級であれば九〇万円台にとどまることが一般的です。弁護士が介入して裁判基準で交渉するだけで、三倍前後になる事案も珍しくありません。

また、入通院慰謝料についても、赤い本別表Ⅰを用いれば、入院二か月・通院六か月で一八一万円が目安となります。傷害の部位・程度によっては、この金額を二〇パーセントから三〇パーセント増額することが認められています。

骨盤・その他の体幹骨の障害

骨盤・その他の体幹骨の障害

骨盤骨の変形

鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すものは、第一二級五号とされます。「著しい変形」とは、裸体になったときに変形が明らかに分かる程度のものをいい、エックス線写真によって初めて発見し得る程度のものは含まれません。

骨盤骨折は、それ自体が第一二級五号となるほか、股関節の可動域制限、下肢の短縮、坐骨神経の損傷による下肢のしびれや痛み、膀胱直腸障害、女性の場合は産道の狭窄といった多様な後遺障害を伴います。これらを漏れなく拾い上げることが重要です。

骨盤骨折に伴う周辺障害

骨盤骨折では、出血量が多く一時的に生命の危険に至ることもあります。裁判例には、両側多発肋骨骨折、両側気胸、肺挫傷、肝損傷、骨盤骨折の傷害を負い、一時心肺停止の状態に陥るなど急性期には死亡の危険があったことを考慮して、治療期間四三七日(うち入院八六日)に対し傷害慰謝料三三三万円を認めたものがあります。

骨盤輪の不安定性が残ると、歩行時の疼痛や跛行が続きます。歩容の異常は動画で記録しておくと、後の交渉で有力な資料になります。

なお、骨盤骨折に伴って尿道や膀胱を損傷した場合には、泌尿器の障害として別途の等級が認定されることがあります。残尿感や頻尿、尿失禁といった症状は診断書に書かれにくいため、泌尿器科を受診して所見を記録に残しておくことをお勧めします。

肋骨骨折と胸腹部臓器の障害

多発肋骨骨折に伴い、肺挫傷や血気胸を生じ、呼吸機能が低下することがあります。呼吸機能障害は、動脈血ガス分析による動脈血酸素分圧・動脈血炭酸ガス分圧と、スパイロメトリーによるパーセント一秒量・パーセント肺活量、そして呼吸困難の程度に基づき、第一級二号から第一一級一〇号までの等級が定められています。

脾臓や腎臓を摘出した場合も、胸腹部臓器の障害として第八級一一号または第一三級一一号が認定されます。骨折にばかり目が向いて、臓器の障害が診断書に記載されないことがありますので注意が必要です。

神経症状が残った場合

神経症状が残った場合

第一二級一三号と第一四級九号の分かれ目

圧迫骨折や骨盤骨折の後、背部痛や下肢のしびれが残ることがあります。「局部に頑固な神経症状を残すもの」は第一二級一三号、「局部に神経症状を残すもの」は第一四級九号です。

両者を分けるのは、他覚的所見の有無です。画像上の変形や神経の圧迫所見、腱反射の異常、筋萎縮、明確な知覚障害の分布といった客観的所見によって症状が医学的に証明できる場合には第一二級、症状の存在が医学的に説明できるにとどまる場合には第一四級とされます。

赤い本の基準では、第一二級の後遺障害慰謝料は二九〇万円、第一四級は一一〇万円です。労働能力喪失率も一四パーセントと五パーセントで大きく異なります。

併合で等級が上がる

脊柱変形(第一一級七号)と下肢の神経症状(第一四級九号)が併存すれば併合第一一級、脊柱変形(第一一級七号)と股関節の機能障害(第一二級七号)が併存すれば併合第一〇級となります。

裁判例には、脊柱障害(第八級二号)、右膝関節機能障害(第一二級七号)で併合第七級とされた事案や、腰椎圧迫骨折後の脊柱変形(第一一級七号)と右下肢の疼痛(第一四級九号)で併合第一一級とされた事案があります。

個々の障害を一つひとつ丁寧に主張することが、結果として等級を押し上げます。

症状固定までに確保しておきたい資料

圧迫骨折の事案で後から取り返しがつかなくなるのは、画像の撮影時期です。受傷直後のレントゲン、受傷後数週間以内のMRI、そして症状固定時のレントゲンまたはCT。この三点が揃っていれば、新鮮骨折であること、変形が残存したことの双方を立証できます。

そのほか、装用していたコルセットの処方箋、リハビリの実施記録、通院日数の記録、職場での配置転換や勤務時間短縮に関する資料も確保しておいてください。

賠償額で争われやすいポイント

賠償額で争われやすいポイント

変形障害と労働能力喪失

脊柱変形について、保険会社は「変形はあっても労働能力に影響しない」として、逸失利益をゼロまたは大幅に減額すべきだと主張してくることがあります。

これに対しては、重量物の運搬や中腰姿勢の維持が困難であること、長時間の運転や立ち仕事ができないこと、コルセットの常用が必要であることなど、業務への具体的支障を立証して反論します。就業規則、業務内容の説明書、上司や同僚の陳述書が有効です。

また、変形に伴う疼痛が残っている場合には、変形障害とは別に神経症状としての評価を求めることも検討します。

素因減額の主張

高齢の方や骨粗鬆症のある方の場合、保険会社は「わずかな外力で骨折したのは骨がもろかったからだ」として素因減額を主張してきます。

もっとも、加齢に伴う骨密度の低下は、通常の身体的特徴の範囲にとどまることが多く、直ちに減額の根拠にはなりません。事故前は普通に就労し、家事をこなしていた事実を具体的に示すことが反論の柱になります。

高齢者の家事従事者性

高齢の方の場合、「無職だから休業損害も逸失利益もない」と言われることがあります。しかし、家族のために家事を担っていれば家事従事者として賃金センサスを基礎とする損害が認められますし、年金受給者であっても逸失利益が問題となる場面があります。

裁判例には、腰椎圧迫骨折等の後の脊柱変形(第一一級七号)等が残った七七歳の被害者について、症状固定までの自宅等付添費日額一〇〇〇円、二九二日分に加え、症状固定後死亡までの将来介護費として日額一〇〇〇円、約三年分を認めたものがあります。

休業損害と主婦・自営業者の扱い

脊柱や骨盤の骨折では、入院期間が一か月から三か月、その後のリハビリ通院が半年以上続くことが一般的です。給与所得者であれば事故前三か月の平均賃金を基礎に休業損害を算定しますが、有給休暇を使った日も休業損害の対象になります。

家事従事者(主婦・主夫)の場合は、賃金センサスの女性全年齢平均賃金を基礎として休業損害を請求できます。保険会社は「家族が代わりに家事をしていたのだから損害はない」と主張することがありますが、これは誤りです。

自営業者の場合は、確定申告書上の所得額が基礎になりますが、固定経費(家賃、リース料、保険料など)についても、事業を維持するために必要な範囲で損害と認められます。申告額が実態より低い場合には、帳簿や通帳の入出金記録から実収入を立証する方法もあります。

弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリット

画像を読み解いて等級を見通せる

脊柱の変形は、画像上の椎体高の減少率、後彎角、側彎角といった数値で評価されます。診断書の文言だけでなく、画像そのものを確認して等級の見通しを立てます。

打ち切り後も治療を続ける方法を案内できる

重傷事案であっても、保険会社は受傷から六か月程度で治療費の打切りを打診してきます。健康保険や労災保険に切り替えて治療を継続する方法、打ち切られた治療費を後から請求する方法をご案内します。

当事務所のサポート内容

当事務所のサポート内容

①画像の精査と等級の見通し

まず画像とカルテを取り付け、圧迫骨折の新鮮度、椎体高の減少率、後彎・側彎の角度を確認したうえで、想定される等級をお伝えします。

②後遺障害診断書の作成支援

変形の程度、脊柱の可動域(頸部・胸腰部それぞれ)、神経学的所見、骨盤骨の変形や下肢短縮の有無まで漏れなく記載されるよう、主治医あての依頼書を作成します。

③被害者請求と異議申立て

申請は原則として被害者請求により行い、認定結果に不服があるときは、画像の再読影結果や医師の意見書を添えて異議申立てを行います。

④示談交渉と訴訟

赤い本の基準を前提に、逸失利益の喪失期間を制限しない形で請求し、折り合えない場合には訴訟に移行します。

おわりに

おわりに

脊柱や骨盤の骨折は、「命に別状はなかった」という一言で片づけられがちです。しかし、変形した背骨は元に戻らず、痛みは一生続きます。労働能力喪失率二〇パーセントという数字は、これから三〇年、四〇年働く方にとって、数千万円の意味を持ちます。

保険会社の提示額に納得できないとき、あるいは提示された等級に疑問があるとき、示談書に署名をする前にご相談ください。一度示談をしてしまうと、原則としてやり直しはできません。

弁護士費用特約をご利用いただける場合はご自己負担なく、特約がない場合も原則として着手金無料で対応しております。

ご相談

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 遠藤吏恭

交通事故

弁護士登録後、交通事故による後遺障害・慰謝料増額・保険会社との示談交渉など多数の事案を担当。不当要求防止責任者講習の講師として培った毅然とした交渉力を武器に、保険会社との粘り強い折衝を得意とする。交通事故問題について、テレビ朝日「グッド!モーニング」出演歴があり、また中央大学法科大学院・埼玉工業大学講師も務める。