交通事故に遭い、頭を強く打った場合、後遺障害として、高次脳機能障害と呼ばれる様々な障害が残ることがあります。高次脳機能障害という障害があることや、その原因と症状を知るだけでも、理解につながり、また、交通事故の「後遺障害」であると認識できると思いますので、それを解説します。

交通事故に遭い、頭を強く打った場合、後遺障害として、「高次脳機能障害」と呼ばれる様々な障害が残ることがあります。
このようにも説明がされます。

「脳外傷による高次脳機能障害(以下、「高次脳機能障害」という。)とは、自動車事故などで脳が損傷されたために、認知障害、人格変化等の症状が発現する障害であり、仕事や日常生活に支障を来たす障害」

高次脳機能障害は、目に見えるものではありません(脳の画像で、推測ができる場合はありますが)。したがって、周りの理解が得られず、本人も周りもつらい状況に陥ることがあります。
高次脳機能障害という障害があることや、その原因と症状を知るだけでも、理解につながり、また、交通事故の「後遺障害」であると認識できると思います。

後遺障害の症状について

最近では、高次脳機能障害という言葉も広く浸透してきて、インターネットで探せば情報がたくさんでてきます。ただ、何が高次脳機能障害かというのはあまり整理されていないように思います。そこで、症状についてみていきます。

高次脳機能障害とはどのような症状かというと、以下のような症状が重なっておきることを指します。

記憶障害

・物の置き場所を忘れる。
・新しいできごとを覚えられない。
・同じことを繰り返し質問する。

※参考となる検査方法

全般的記憶検査:WMS-R(ウェクスラー記憶検査)
言語性記憶検査:三宅式記銘力検査
視覚性記憶検査:ベントン視覚記銘力検査、REY図形テスト
日常記憶検査:RBMT(リバーミード行動記憶検査)

注意障害

・ぼんやりしていて、ミスが多い。
・ふたつのことを同時に行うと混乱する。
・作業を長く続けられない。
・集中力が落ちた
・注意散漫である

※参考となる検査方法

CAT・CAS(標準注意検査法・標準意欲評価法)
D-CAT(注意機能スクリーニング検査)

遂行機能障害

・自分で計画を立ててものごとを実行することができない。
・人に指示してもらわないと何もできない。
・約束の時間に間に合わない。
・明確なゴールを設定できない
・順序だてて物事を運べない

※参考となる検査

BADS (遂行機能障害症候群の行動評価)
WCST(ウイスコンシン・カード分類検査)

社会的行動障害

・興奮する、暴力を振るう
・思い通りにならないと、大声を出す
・自己中心的になる
・暴れだす
・なにかに固執する
・何かに依存する
・感情が抑えられない
・1日中ふとんから離れない

高次脳機能障害の認定について

交通事故の場合は、損害保険料率算出機構(自賠責保険)が、高次脳機能障害の認定をします。自賠責保険では、しっかりと審査がされており、以下のように説明されています。

「「高次脳機能障害に該当する可能性がある事案」について、受傷後の詳細な意識障害の推移、高次脳機能障害の内容・程度の照会、被害者側への日常生活状況の確認などの詳細な情報を得た上で、専門医を中心とする自賠責保険(共済)審査会高次脳機能障害専門部会が後遺障害等級を認定する仕組みを構築しています。これを「高次脳機能障害認定システム」といいます。」

後遺障害の認定で重要なのは、「画像検査」です。また、意識障害の有無です。
いくら、頭部を負傷したと主張しても、医学的な根拠がないと、なかなか認めるに至りません。
特に、事故発生の直後から後遺障害の症状が固定するまでの画像検査資料(CT・MRIなど)(特に頭部)が重要な判断要素となります。また、画像検査資料だけでなく、受傷当初の意識障害の有無やその程度(持続時間等を含む)、症状の経過も重要です。これらは、カルテ、診断書、救急の記録から判断します。

なお、画像所見がない場合でも、「労災保険においては、画像所見が認められない症例であって、MTBI(軽度外傷性脳損傷)に該当する受傷時に意識障害が軽度であるものにあっても、高次脳機能障害を残す可能性について考慮する必要がある旨の通達が厚生労働省から発出さ」れており、交通事故でもこれが考慮されています。
画像の内容は、かなり専門的な話になりますが、いずれにせよ、少なくとも、軽度の意識障害があったことが、認定の重要な要素になります。

高次脳機能障害の後遺障害等級について

交通事故に遭って、高次脳機能障害が残った場合は、後遺障害の何級に該当するでしょうか。

自賠責保険が認定する後遺障害は、1級から14級まであります。高次脳機能障害は、症状の重さによって、このうちのいくつの級にわかれています。

こちらのページで詳しく解説していますので、ご覧ください。

後遺障害が残った場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。したがって、今後の生活のためにも、賠償金(保険金)を、しっかりと請求することが重要で、そのために後遺障害の等級を確定します。

後遺障害申請の簡単な流れは、以下の通りです。

①治療をしてもこれ以上はよくならないという時期がやってきます。それが、「症状固定」です。脳の場合、リハビリはできても根本的な治療は難しい場合があります。
②症状固定となったら、医師に「後遺障害診断書」を書いてもらいます。
③後遺障害診断書やその他必要書類を、事故の相手方が加入している自賠責保険会社に提出します。
④書類は、自賠責保険会社から損害保険料率算出機構(調査事務所)へ渡されます。
⑤損害保険料率算出機構の調査事務所で後遺障害について調査が行われます。
⑥1級~14級までの等級の認定がされ、自賠責を通じて書面で結果が送られてきます。
(非該当=後遺障害はない という結果になることもあります。)
⑦もし、認定結果に納得がいかない場合は、異議申立ての制度もあります。

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■この記事を書いた弁護士
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弁護士 申 景秀
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