自転車同士の交通事故も、軽車両として道路交通法に従って、けが人を救護したり警察に報告する義務があります。自転車安全利用五則により注意して運転する必要があり、ルールに違反していると自転車同士の事故における過失割合に多大な影響が及びます。日頃から、ヘルメットを着用する、自転車同士の交通事故に適用のある保険に加入しておくなど、対策をしておきましょう。
このページは、弁護士が書く自転車同士の交通事故でお悩みの方向け記事です。
1 はじめに~道路交通法との関係~
自転車は、環境に配慮した交通手段として注目を集めています。しかし、自転車同士の事故は深刻な問題となっています。自転車は、車(車両)に比べて速度が遅く、車体も小さいため、交通事故の際には運転者の身体が直接衝突にさらされることが多く、重傷や死亡事故が多い傾向にあります。
元々、自転車は道路交通法上の「軽車両」に位置付けられておりますが、令和5年4月1日から、自転車を運転するすべての人がヘルメットを着用することを努めなければならないことになりました(道路交通法63条の11)。
今回は、自転車同士の事故に遭ったときにとるべき行動について、その解決策を探っていきたいと思います。
2 自転車事故を避けるためには~自転車安全利用五則とは~
自転車同士の事故が多発する原因としては、主に人、つまり運転者の不注意やマナーの悪さが挙げられます。自転車は、歩道を走ることができるため、歩行者との接触事故や、信号無視、右左折時のウィンカーの不使用など、運転者のマナーに関する問題が深刻な要因となっています。また、夜間という暗い状況なのにライトを点灯しないことによる事故も多いです。
自転車安全利用五則とは?(交通対策本部決定)
道路交通法上、自転車は軽車両と位置付けられています。
したがって車道と歩道の区別があるところは車道通行が原則です。
そして、道路の左側に寄って通行しなければなりません。
歩道を通行できる場合は、車道寄りの部分を徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げる場合は一時停止しなければなりません。
2.交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
信号機のある交差点では、信号が青になってから安全を確認し、横断しましょう。
一時停止のある交差点では、必ず一時停止をして、安全を確認してから横断しましょう。
3.夜間はライトを点灯
夜間はライトを点けなければなりません。
自転車に乗る前にライトが点くか点検しましょう。
4.飲酒運転は禁止
お酒を飲んだときは、自転車に乗ってはいけません。
5.ヘルメットを着用
自転車に乗るときは、乗車用ヘルメットを着用しましょう。
幼児・児童を保護する責任のある方は、幼児を幼児用座席に乗せるときや幼児・児童が自転車を運転するときは、幼児・児童に乗車用ヘルメットをかぶらせるようにしましょう。
引用:警視庁HP(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/info.html)
3 自転車同士の事故に遭ったときにとるべき行動
自転車同士の事故に遭ったときにどうすればいいのか?とパニックになったり、ケガをしたけれども大したことないからといってそのままその場を離れたり、登録免許制である自動車とは異なり色々な行動をとる人がいらっしゃると思います。
自転車は道路交通法の適用がある
しかし、よく意識してください。自転車は、「軽車両」です。
つまり、道路交通法に従って、自動車やオートバイの交通事故と同様に、警察に届け出る義務があります(道路交通法72条)。
自転車の事故があったときの四つの義務
ここで重要なのは、自転車で交通事故があったら、
① 停止する
② 負傷者を救護する
③ (二次災害等の)道路上の危険を防止する
④ 警察官に報告(通報)する
という義務があることです。
万一、相手が逃げてしまったら
自転車同士の交通事故の後、相手が逃げてしまったり、言い訳をしてその場を去ってしまったら、または、その場で通報せず、後からどうするか考えたら、その時点でも構いませんので、警察官に通報し、事故を報告してください。
事故的な申し出であっても、交通事故証明書の発行を受けられます(ただし、相手方は「フメイ」とされてしまう可能性があるでしょう)。
相手が逃げてしまったら、相手の特徴(相手の情報や自転車の情報)を覚え、またはスマホなどで撮影してもよいでしょう。しかし咄嗟のことで難しい場合には、周りに事故を目撃した人と連絡先を交換しておいたり、周辺の防犯カメラの位置を確認しておくことが可能です。警察官は、相手がいなくなってしまっても、「当て逃げ」扱いで、捜査をしてくれます。また、最近は、自転車用のドライブレコーダーもあるようですので、設置しておくのもよいでしょう。
損害が発生したら
自転車同士の事故により、自転車が傷ついたり、身体に怪我を負ったりした場合には、相手方に対して、修理代や治療費、慰謝料等の損害賠償請求ができるときがあります。これは交通事故と変わりません。しかし、自動車のような自賠責保険の適用がなく、後遺障害を負うほどの怪我を負った場合には、交渉、訴訟で争いになるリスクもあるでしょう。もしあなたが、加害者にせよ被害者にせよ、自転車保険、個人賠償責任保険(弁護士費用補償特約についても同様)に加入していないと大変な思いをする可能性があります。
4 自転車同士の事故の過失割合
自転車同士の事故における過失割合は、事故の原因や状況によって異なります。一般的には、交通ルールの違反や不注意運転が原因で事故が発生することが多いため、過失割合は双方に分かれる場合が多いです。
具体的には、自転車同士の事故における過失割合は以下のようになる場合があります。
自転車同士が正面衝突した場合
双方に過失がある場合が多く、それぞれの割合は50%ずつになることが多いです。例えば、両者が同時に交差点に進入し、信号無視や交通ルール違反によって衝突した場合などが挙げられます。
自転車同士が接触した場合
接触の原因によって過失割合が異なります。例えば、前方の自転車が急に停止したことによる追突事故の場合は、後方の自転車に過失があるとされることが多いです。一方、前方の自転車が急に方向転換したことによる接触事故の場合は、前方の自転車に過失があるとされることが多いです。
自転車同士がすれ違い時に接触した場合
過失割合は、接触の原因や状況によって異なります。例えば、片側通行の道路で、対向する自転車が車線をはみ出したことによる接触事故の場合は、車線をはみ出した自転車に過失があるとされることが多いです。また、左側通行の原則を無視していた場合には、逆走と同様に、違反している方に過失があるとされることが多いでしょう。
自転車同士の事故では、過失割合が明確にならない場合もあります。そのため、事故が起こらないように、運転者自身が交通ルールを遵守し、周囲の状況を十分に確認することが重要です。また、事故が発生した場合には、事故原因や状況を正確に把握し、適切な対応をすることが求められます。
グリーンリーフ法律事務所は、地元埼玉で30年以上の実績があり、各分野について専門チームを設けています。ご依頼を受けた場合、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。