交通事故で脳挫傷の傷害を負い、症状固定後も後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級が認定される可能性があります。

その場合の慰謝料や逸失利益について解説します。

1 交通事故により脳挫傷が生じる場合

1 交通事故により脳挫傷が生じる場合

⑴ 脳挫傷とは

交通事故に遭い、頭部に強い衝撃が加わると、頭蓋骨のみならず、さらに内側の脳まで負傷してしまう場合があります。

外部からの強い衝撃によって、脳の組織や血管などが損傷してしまう状態が、脳挫傷と言われているものです。

脳挫傷を負うと、頭痛や嘔吐、痺れ、けいれんなどの症状が出てきます。

多くの場合には、事故直後からこれらの症状が出てきます。

もっとも、時間が経ってから症状が出る可能性もあるため、異常を感じたらすぐに医師に相談し、診察・治療を受ける必要があります。

⑵ 症状固定とは

交通事故に遭ってから、しばらくの期間、治療やリハビリを継続しても、どこかの段階で症状の改善が見込めない状態が訪れます。

その状態を「症状固定」といいます。

症状固定は、基本的には医師によって判断されることになります。

症状固定に至ってもなお、後遺症が残っていると診断された場合には、医師に後遺障害用の診断書を書いてもらい、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

2 脳挫傷を負ったときの後遺障害

⑴ 脳挫傷によって残ってしまう可能性がある後遺症

脳挫傷を負ってしまった場合、脳機能の回復を目指してリハビリテーションが行われます。

もっとも、症状固定と判断された後も、

・体を思い通りに動かすことができない

・思い通りに話すことができない

・物の形状を認識できない

・記憶に障害が生じる

・注意力がなくなる

・物事をきちんとおこなうことができない

・感情のコントロールができない

などといった後遺症が残ることがあります。

⑵ 後遺障害の申請

症状固定後も上記のような後遺症が残ってしまった場合には、「後遺障害等級の認定」を受けることができます。

後遺障害の等級は、「自動車損害賠償保障法施行令」で定められています。

この後遺障害等級の認定を受けることによって、1級から14級の等級に応じた賠償金を受け取ることができるようになります。

後遺障害の等級は、慰謝料や逸失利益などの項目の金額に関わるので、非常に重要な手続きであるといえます。

⑶ 後遺障害はどこの機関が認定するのか

後遺障害等級認定の申請の受付は、自賠責保険会社により行われます。

自賠責保険会社は、交通事故証明書で確認することができます。

事故の加害者の自賠責保険会社に対して申請することになります。

自賠責保険会社は、請求者から送付された書類一式について内容を確認して、必要な書類がすべて揃っていれば、「損害保険料率算出機構」という機関に申請書類を送付します。

損害保険料算出機構は、送付されてきた書類等について内容を審査します。

この機構には顧問医師等もおり、客観的・公平な判断がなされます。

そして、審査結果を自賠責保険会社に報告します。

自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構の調査結果を踏まえて、後遺障害等級の等級認定を行います。

そして、その結果を請求者に通知します。

このような流れにより、後遺障害の等級が決まります。

⑷ 後遺障害の認定結果に不服がある場合

上記⑶で認定された後遺障害の等級や、後遺障害非該当との結果に不服がある場合には、異議申立ての手続きを取ることができます。

⑸ 脳挫傷の場合に考えられる後遺障害等級

⑸ 脳挫傷の場合に考えられる後遺障害等級

脳挫傷の場合に考えられる後遺障害等級は、以下の通りとなります。

ア 身体の一部または全部に麻痺が残った場合

脳挫傷後、身体に麻痺が残ってしまった場合、部位や程度に応じて、1級、2級、3級、5級、7級、9級の後遺障害が認定される可能性があります。

イ 脳の機能に障害が残った場合

脳挫傷後、記憶や認知等の「高次脳機能」に障害が残ってしまった場合、症状に応じて、1級、2級、3級、5級、7級、9級に該当する可能性があります。

ウ 植物状態になってしまった場合

生命を維持することはできているものの、いわゆる植物状態(遷延性意識障害)になってしまった場合には、1級または2級の後遺障害に該当する可能性があります。

エ てんかんが残った場合

てんかんが残り、発作が生じるような場合には、5級、7級、9級、12級の後遺障害に該当する可能性があります。

3 後遺障害が認められたときに請求できる損害項目

3 後遺障害が認められたときに請求できる損害項目

脳挫傷による後遺障害が残ってしまった場合、加害者に対して請求できる損害の項目としては、主に、後遺障害慰謝料や逸失利益が挙げられます。

なお、介護が必要になってしまったような場合には、介護費用等も計上されます。

⑴ 後遺障害慰謝料

慰謝料には、3つの基準があります。

1.自賠責基準   

自賠責保険とは、自動車を運転する人は必ず加入する強制加入保険です。その自賠責の基準は、最低限の補償をするための基準です。

2.任意保険基準             

保険会社が独自に定めた基準で、自賠責基準よりは若干高いと言われています(基本的に、その基準は非公開となっています。)。

3.裁判(弁護士)基準   

裁判所で、算定の基準として採用されているものです。金額は、3つの中で最も高額です。

この中では、被害者にとっては、裁判基準がもっとも良いということになります。

しかしながら、保険会社は一般的に、「弁護士が代理人として入っている場合」や「裁判での判決の場合」、「紛争処理センターでのあっせんを受けた場合」にしか、裁判(弁護士)基準での支払いをしようとしません。

ご自身で交渉している場合は、ほとんどの場合、自賠責基準か、自賠責基準とほぼ同じ基準である任意保険会社の独自の基準で慰謝料額を計算し、賠償金の提案をしてきます。

したがって、慰謝料を上げる簡単な方法の一つは、弁護士を代理人として付けることになります。

ご自身で対応される場合、保険会社は、たいていは自賠責基準に近い金額の慰謝料額を提示してきますので、示談を行う際には注意が必要です。

⑵ 逸失利益

後遺障害が残ってしまったが故に、将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入のことを、「逸失利益」といいます。

逸失利益の基本的な考え方は、1年あたりの基礎収入に、後遺障害によって労働能力を失ってしまうことになると想定される期間(労働能力喪失期間)と、後遺障害によって失われた労働能力の割合(労働能力喪失率)を乗じて計算することになります。

(ただし、将来もらえるはずの金額を、現時点で一括してもらうことになるので、中間利息を控除することになります)

もっとも、保険会社によっては、さまざまな理由をつけて、逸失利益の全部または一部を否定してくることもあります。

その場合、交渉や訴訟の中で、事故によって将来の収入が減少すると言えるのかが争点となることもあります。

4 交通事故によって脳挫傷を負ってしまった際は、ぜひ弁護士へ相談を

4 交通事故によって脳挫傷を負ってしまった際は、ぜひ弁護士へ相談を

交通事故で脳挫傷を負ってしまった場合、残念ながら、重い後遺症が残ってしまう可能性は否定できません。

そのような場合には、適切な賠償金をきちんと受け取れるよう、弁護士に相談することをお勧めします。

ご自身で交渉するよりも、弁護士が代理人として交渉する方が、受け取る賠償額が大きくなることが多いです。

また、弁護士費用特約があれば、弁護士費用は基本的に任意保険の保険会社に負担してもらえますので、無料で弁護士に相談したり、費用の負担なく弁護士に依頼することも可能です。

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 赤木 誠治
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