【交通事故】信号機のない交差点での衝突!過失割合はどう決まる?優先関係と修正要素を解説

交通事故の中でも、特に「過失割合」をめぐって当事者間で激しく意見が対立しやすいのが、信号機のない交差点での衝突事故です。「自分は徐行していた」「相手が飛び出してきた」など、双方が自らの正当性を主張しやすいこの種の事故は、日本全国で毎年多数発生しており、保険会社同士の交渉が長期化するケースも珍しくありません。本コラムでは、信号機のない交差点での事故における過失割合の決まり方を、埼玉県大宮の弁護士が解説します。

交差点での事故はなぜ過失割合で揉めやすいのか?

交差点での事故はなぜ過失割合で揉めやすいのか?

双方が「自分は悪くない」と考えがちな理由

信号機のない交差点には、青・赤といった客観的なルールがありません。そのため、双方のドライバーが「自分が先に交差点に入った」「相手が一時停止すべきだった」と主張しやすく、水掛け論になりがちです。事故は一瞬の出来事であるため、当事者の記憶が曖昧になりやすく、客観的な証拠(ドライブレコーダー映像、目撃者証言など)がない場合、事実認定そのものが困難になります。

さらに、過失割合によって受け取れる賠償金が大きく変わるため、当事者双方が自分に有利な割合を主張しようとするのは自然なことです。たとえば、治療費・慰謝料・休業損害などの人身損害の合計が600万円の事故で、過失割合が「自分20:相手80」の場合、相手から480万円を受け取れます。しかし「自分30:相手70」となれば420万円に減り、その差は60万円にもなります。物損まで含めるとさらに差が広がります。

「保険会社に任せておけば大丈夫」と思いがちですが、保険会社の担当者はあくまで会社の立場から交渉します。適正な過失割合を獲得するには、専門家である弁護士のサポートが非常に重要です。

過失割合が決まる仕組み(別冊判例タイムズの基準とは)

交通事故の過失割合は、原則として「別冊判例タイムズ39号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)」という書籍に掲載された基準をもとに算定されます。この基準は、裁判所・弁護士・保険会社が実務で広く用いており、事故の類型ごとに「基本過失割合」が図解とともに定められています。

たとえば「信号機のない交差点で、道路幅が同程度の場合の直進車同士の出会い頭事故(左方優先)」という類型では、基本過失割合が「左方車20:右方車80」と定められています。このように事故の状況を類型化して基準を示しているため、実務では保険会社もこの基準を参照して過失割合を提示してきます。

ただし、この基準はあくまで「原則」であり、事故の具体的な状況に応じて「修正要素」によって数値が加減されます。どの修正要素が適用されるかによって、最終的な過失割合は大きく変わります。そのため、同じ交差点事故でも修正要素の解釈をめぐって保険会社と争いになることが少なくありません。

原則となる過失割合の考え方

原則となる過失割合の考え方

左方優先の原則と過失割合

信号機のない交差点において、同程度の幅員の道路が交わっている場合、左方から進行してくる車両が優先されます(道路交通法第36条1項)。これを「左方優先の原則」といいます。直進車同士の出会い頭事故の基本過失割合は「左方車20:右方車80」です。左から来た車のほうが優先されるため、右から来た車の過失が大きくなります。

「自分は左から来た」「いや、自分が左だ」という争いも実務では珍しくありません。現場の地図(公図)や事故現場の写真、ドライブレコーダー映像などから進行方向を客観的に確定することが、過失割合の認定において最初の重要なステップとなります。ドライブレコーダーがない場合は、目撃者の連絡先を確保し、できるだけ早く証言を記録しておくことが大切です。

広路優先・優先道路の原則

交差する道路の幅員が明らかに異なる場合、広い道路を走行する車両が優先されます。狭い道路から交差点に進入した車は、広い道路を走る車に対して徐行・一時停止の義務を負います。基本過失割合は「広路車20:狭路車80」です。広い道路の車にも20%の過失が認められるのは、交差点では相互に安全確認の義務があるためです。

道路幅の「差が明らか」かどうかが争われることもあります。現場の状況(実際の車道幅、路肩の有無など)を示す証拠が重要です。また、「優先道路」の標示がある場合には優先道路を走行している車の過失はさらに小さくなり(優先道路車10:非優先道路車90が基本)、より有利な過失割合が適用されます。

一時停止の規制がある場合の過失割合

交差点の入口に「一時停止」の標識・標示がある場合、一時停止義務を負う車の過失割合は大幅に高くなります。一時停止義務のある車が停止せずに交差点に進入して事故を起こした場合の基本過失割合は「一時停止あり車80:なし車20」となります。

実務では「一時停止した」か「しなかった」かが最大の争点になることが多く、ドライブレコーダーの映像が決定的な証拠になります。また、警察が作成する実況見分調書には一時停止の有無が記録されることが多く、弁護士が取り寄せてその内容を確認することが有効です。さらに、一時停止はしたものの十分な安全確認が行われなかった(停止不十分)という場合も、修正要素が適用されて過失割合が加重されることがあります。

過失割合を左右する「修正要素」とは?

過失割合を左右する「修正要素」とは?

「著しい過失」と「重過失」の違い

別冊判例タイムズでは、基本過失割合に対して特定の事情がある場合に数値を加算・減算する「修正要素」が定められています。中でも重要なのが「著しい過失」と「重過失」の区別です。

「著しい過失」とは、通常の不注意を超える過失をいいます。わき見運転(スマートフォンを操作しながらの運転を含む)、酒気帯び運転(アルコール0.15mg/L以上0.25mg/L未満)、著しい前方不注意などが該当します。著しい過失が認められると、その当事者の過失割合に10%が加算されます。

「重過失」は著しい過失よりさらに重大なものをいいます。酒酔い運転(アルコール0.25mg/L以上)、時速30km以上の速度超過、無免許運転などが該当し、過失割合に20%が加算されます。相手ドライバーがスマートフォンを操作しながら運転していたことが証明できれば10%加算となり、最終的な賠償金に大きな差が生じます。このような事情を立証するためにも、ドライブレコーダーの確保が非常に重要です。

修正要素(加算)の主な例

著しい過失(+10%):スマートフォン操作、酒気帯び運転(0.15mg/L以上0.25mg/L未満)、著しい前方不注意

重過失(+20%):酒酔い運転(0.25mg/L以上)、無免許運転、時速30km以上の速度超過

速度超過(著しい過失):制限速度15km/h以上30km/h未満の超過

早回り・大回り右折:交差点での不適切な右折方法(右折車の過失に加算)

速度違反や「早回り右折」「大回り右折」の影響

速度違反も重要な修正要素です。制限速度を15km/h以上30km/h未満超過していた場合は「著しい過失」として10%加算、30km/h以上超過は「重過失」として20%加算となります。交差点付近での速度超過は事故の重大性にも直結するため、保険会社も無視できない要素です。

「早回り右折」とは交差点の中心付近に達する前に右折を開始する違反行為、「大回り右折」とは対向車線にはみ出すような右折方法をいいます。いずれも不適切な右折方法として、右折車の過失に加算されます。夜間の無灯火走行も「著しい過失」として評価されることがあります。

保険会社の提示に納得がいかない場合の対処法

保険会社の提示に納得がいかない場合の対処法

ドライブレコーダー映像の重要性

近年、ドライブレコーダーは多くの車両に搭載されるようになりました。事故発生時の映像は、過失割合の認定において極めて重要な証拠となります。映像から判明できる事実としては、双方の速度の概算・一時停止の有無・相手ドライバーのわき見運転やスマートフォン操作・衝突前後の車両の動きなどがあります。これらの事実が明らかになることで、修正要素の適用が変わり、過失割合の大幅な修正につながることがあります。

ドライブレコーダーの映像は上書きされてしまう場合があるため、事故直後に必ず映像を別の媒体(USBメモリやクラウドストレージなど)に保存してください。最も有力な証拠を失わないためにも、この作業は最優先で行ってください。

また、事故現場の状況も時間とともに変化します。信号機の位置、一時停止標識の有無、道路幅員の状況などをスマートフォンで撮影して記録しておくことも重要です。周辺の店舗や施設の防犯カメラが事故を捉えている可能性もありますので、早急に弁護士に相談して映像の保全を求めることをお勧めします。

実況見分調書など刑事記録を取り寄せる方法

交通事故が発生すると、警察が事故現場の実況見分を行い「実況見分調書」を作成します。この書類には、事故現場の状況、当事者・目撃者の供述、事故状況を示す平面図などが記載されており、過失割合を判断する上で極めて重要な資料です。

実況見分調書は刑事記録の一部として検察庁に保管されます。弁護士が開示請求をすることで入手することが可能です。個人が直接請求することは手続き上難しい場合もありますが、弁護士に依頼すれば適切な方法で入手し、保険会社との交渉に活用することができます。

なお、相手方車両のドライブレコーダー映像については、任意での提出を求めることが難しい場合もありますが、訴訟等の法的手続きを通じて証拠として提出させることが可能な場合があります。弁護士に相談することで、最適な証拠収集の方法をアドバイスしてもらえます。

弁護士に依頼して過失割合を覆すメリット

弁護士に依頼して過失割合を覆すメリット

専門知識を活かした交渉で受け取れる金額が変わる

過失割合の交渉は、専門的な法律知識と豊富な実務経験が必要です。保険会社は過失割合の専門部署を持ち、毎日多数の案件を処理しています。個人が対等に交渉することは容易ではありません。弁護士に依頼することで次のメリットが得られます。

第一に、別冊判例タイムズの基準と修正要素を正確に適用した主張が可能になります。「著しい過失はこの証拠から認定できる」「一時停止をしていないことはドライブレコーダー映像から明らか」といった具体的・法的根拠に基づいた交渉ができます。

第二に、証拠の収集・活用を専門的に行えます。ドライブレコーダー映像の分析、実況見分調書の取り寄せ、周辺防犯カメラ映像の保全申請など、個人では難しい証拠収集を代行することができます。交渉が決裂した場合は、訴訟・調停などの法的手続きにスムーズに移行できる点も大きなメリットです。

弁護士費用特約の活用で自己負担なく依頼できる

「弁護士費用は高い」と思っている方は多いですが、多くの自動車保険には「弁護士費用特約」が付帯されています。この特約を使えば、弁護士費用(法律相談料・着手金・報酬など)を保険会社が一定額(通常300万円まで)負担してくれます。弁護士費用特約を使っても保険の等級は下がりません。翌年の保険料が上がる心配なく弁護士に依頼できます。

まずはご自身の自動車保険の証券を確認し、弁護士費用特約の有無をチェックしてみてください。特約がない場合でも、当事務所では原則として着手金無料の方式を採用しています。

「保険会社の言う通りにしたら損をした」という後悔をしないためにも、過失割合に少しでも疑問を感じたら、まず一度弁護士に相談することをお勧めします。信号機のない交差点での事故は、証拠の確保と基準の正確な適用が解決の鍵です。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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