基礎収入について

基礎収入とは、休業損害や逸失利益の算定の基礎となる、被害者の収入金額のことを言います。
この基礎収入は、「事故前の現実の収入」が原則となりますが、給与所得者、事業所得者(自営業)、会社役員、家事従事者(主婦・主夫)、学生、無職者といった類型ごとに細かい認定がされます。

会社員などの給与所得者の基礎収入

会社員(サラリーマン)など給与を得ている方の基礎収入は、原則として事故前の現実の収入額が基準となります。
通常は、源泉徴収票や、給与明細で証明をしていきます。

【例外①】
現実の収入が、賃金センサス(※)の平均額以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば、その平均賃金が基礎収入となり得ます。

賃金センサスとは
日本国民の平均賃金を性別や年齢、学歴などの指標により統計化した厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のことで、毎年、産業、年齢、性別、学歴、企業規模等の別やこれらを総合した数値が発表されています。

【例外②】
被害者が概ね30未満(若年労働者)である場合も、例外があります。
基礎収入は、67歳までの逸失利益を計算するための基礎となります。若い方で収入が低い時にこれを基礎としてしまうと、将来を考えると不当に低い金額となってしまいます。
そこで、30歳未満の方は、賃金センサスを用いて、全年齢平均賃金を基礎収入として計算することがあります。

自営業者など個人事業主の基礎収入

・自営業者やフリーランスの個人事業主の場合は、前年度の確定申告額に基づく収入額から固定経費以外の経費を差し引いた金額が基礎となります。
確定申告書や課税証明書(所得証明書)で証明をするのが一般的です。

・確定申告していなかった場合
ご自身で、収入額や経費等の資料を添えて証明しなければなりません。
例えば、帳簿や元帳、領収書等から、証明をしていきます。このケースでは、収入額や経費の額に争いが生じる場合が多いでしょう。
または、現実の収入の説明が困難なときは、賃金センサス等の各種統計資料から推定することもあります。

会社役員の基礎収入

会社役員は、会社から役員報酬を受け取っています。
この役員報酬は「配当」と扱われ、基礎収入にならないとされています。

しかし、会社役員も、「労務の提供」として、実際に労働をしている場合が多くあります。その労働の対価としての部分は、収入として扱われます。
役員報酬の中で、どの程度の割合が労務の部分になるかは、ケースによって変わってきます。

家事従事者の基礎収入(主婦・主夫)

主婦・主夫の場合、家事を労働とみなして、逸失利益が認められます。
基礎収入は、原則として、賃金センサスのうち、①全年齢平均の額を用いたり、②被害者の年齢に対応する年齢別平均給与等を参考にして、平均賃金で計算されます。

【パート等をしている兼業主婦の場合は?】
実収入が平均賃金以上の時は、実収入で計算します。
実収入が平均賃金を下回るときは、平均賃金で計算します。
なお、実収入があるときは、それに加えて家事労働分は認められないのが原則です。

無職者の基礎収入

①学生・生徒・幼児等
学生等は収入が無いので、事故時には収入がありません。しかし、将来は収入を得るはずですので、原則とした18歳から、平均賃金を得られるとして計算をします。

②高齢者
高齢者の場合は、就労の蓋然性があれば、平均賃金で計算をします。ただ、年齢等を考慮して、平均賃金よりも少ない金額とするケースがほとんどです。

③失業者
働いていない場合は、収入が減るわけではないので原則として逸失利益はありません。しかし、判例は、「労働能力」と「労働意欲」があれば、将来収入を得る可能性があるとして、平均賃金での計算を認めています。
例えば、職を探していたとか、特殊な技能や資格を持っていたという事が重視されます。