労働能力喪失率とは
労働能力喪失率は、後遺症の逸失利益を計算するのに必要となります。
後遺症が残った場合、それにより、将来の労働の制限されると考えます。そこで、どの程度の制限があるかを考えるのが、労働能力喪失率です。
労働能力喪失率は、原則として、自賠責で定められている、下記の表の数字となります。
例えば、むちうちの場合、多くは、14級9号という等級に該当するのですが、14級の場合、労働能力喪失率は、5%となっています。これは、簡単に言うと、「むちうちによる後遺症により、年収が5%下がる」と考え、その5%分を補償せよということなのです。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
第1級 | 100/100 |
第2級 | 100/100 |
第3級 | 100/100 |
第4級 | 92/100 |
第5級 | 79/100 |
第6級 | 67/100 |
第7級 | 56/100 |
第8級 | 45/100 |
第9級 | 35/100 |
第10級 | 27/100 |
第11級 | 20/100 |
第12級 | 14/100 |
第13級 | 9/100 |
第14級 | 5/100 |
自賠責での後遺障害等級認定の必要性
このように、労働能力喪失が認められるためには、損害保険料算出機構によって「後遺障害の認定」を受ける必要があります。
ただ、ほとんどの場合、上記の表で労働能力喪失率は決められますが、裁判になった場合は、裁判所は、表にとらわれず、個別具体的な事情を考慮して、喪失率を決める事ができます。これは、被害者にとっては、マイナスにもプラスにもなりうる事です。
例えば、最高裁昭和42年11月10日判決では、「交通事故により左太腿複雑骨折の傷害をうけ、労働能力が減少しても、被害者が、その後従来どおり会社に勤務して作業に従事し、労働能力の減少によつて格別の収入減を生じていないときは、被害者は、労働能力減少による損害賠償を請求することができない。」として、労働能力が減少しても具体的に損害が発生していないという判断をしています。
また、最高裁昭和48年11月16日判決では、「 被害者の職業と傷害の具体的状況により、労働省労働基準局長通達に示された労働能力喪失表に基づく労働能力喪失率以上に収入の減少を生じる場合には、その収入減少率に照応する損害の賠償を請求できる。」として、労働能力喪失表以上の損害を認めることを判示しています。