紛争の内容
依頼者の方は、自動車を運転していて信号待ちをしている際、後方車からの追突事故に遭いました。その後、整形外科・接骨院での治療を終え、保険会社から損害賠償金額の提示を受けました。しかし、その内容は依頼者にとって納得のいく金額ではなく、弊所に相談にいらっしゃいました。

交渉・調停・訴訟などの経過
弁護士から保険会社に対し、赤い本を基準とした客観的に相当と認められる金額を提示しました。
まず、休業損害については、依頼者はほとんど問題なくすぐに働けたはずだとして、廉価な休業損害しか認めないとの主張をしてきました。この点については、訴訟で用いられる逓減法、すなわち、時間の経過とともに徐々に身体の怪我が回復していき、労働喪失内容が徐々に減っていくものとして計算する方法をもとに計算し、反論していきました。しかし、保険会社はその内容も認めず、逓減法の計算方法について、被害者に不利な計算をしてきました。そこで、弁護士から、さらに詳細に逓減法の計算を行い、細やかな計算に基づく客観的な主張をしていきました。
次に、通院慰謝料についても、赤い本基準を大幅に下回る金額を提示してきました。訴外であるとの説得力ない理由による減額は認めないと強く主張していきました。

本事例の結末
保険会社は、理論によって説明の付かない点について、弁護士の主張を受け入れ、休業損害・通院慰謝料について依頼者が納得する金額を獲得することができました。

本事例に学ぶこと
一般の方が、保険会社と対等に交渉を進めていくことは非常に困難です。
通院慰謝料については、赤い本という、客観的・具体的な数値が掲載された基準があり、慰謝料の金額は当該基準に基づいて算定されるべきです。しかしながら、保険会社が、訴訟ではない交渉段階という理由で、低廉な自賠責基準によったり、赤い本の基準の70%から80%の金額提示をしたりしてくることが常態化しています。弊所では、被害者が得るべき賠償が訴訟か訴訟外かで異なるというのは被害者保護の観点から適切ではなく、100%支払うよう保険会社に対して強く主張しています。本件でも、保険会社の提示に安易に従うのではなく、粘り強く請求していくことで、合理的な算定方法に基づく慰謝料を獲得することができました。

弁護士 平栗丈嗣