紛争の内容
被害者Aさんは、暴走車にひかれ、膝の前十字靭帯損傷のケガを負いました。
長年の治療後、症状固定となり、後遺障害の申請をしたところ、「非該当」の結果となりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
当事務所で、異議申立をした結果、12級の認定。
再異議申立の結果、10級(他にも損傷しており、合わせて併合9級)の認定がありました。
異議申立では、膝の動揺性を中心に主張しました。その前提として、画像診断や、前方及び外反の動揺性が描出されたストレスXPの撮り直しをしました。そうしたところ、前方不安定性や回旋不安定性は認められるとして、併合9級となりました。
また、ポイントとしては、「腓腹筋損傷」が診断されていたことから、膝関節の4つの靭帯(ACL,PCL,LCL,MCL)の断裂で膝関節の機能は失われるところ、膝関節の動揺性が残存した場合、上腿・下腿筋の筋力で膝関節を支える機能が期待されること、膝関節の伸展時は、上腿では大腿四頭筋の緊張に加え、膝窩筋と下腿(腓腹筋)が安定を担うので立位の保持にも腓腹筋の緊張は欠かせないこと、屈曲時は、上腿では大腿四頭筋を主として、下腿の腓腹筋が補助する、つまり、本件の膝関節の場合、膝窩筋が緩み、下腿筋(腓腹筋)の筋力が著しく低下した結果、膝関節を支えることができず、緊張が不足している前十字靭帯への補助が物理的に不能となり、前方・外旋方向の動揺に拍車をかけている等の主張をしました。

その後、訴訟を提起。

本事例の結末
訴訟でも自賠責保険の上記認定が維持され、結果的に、5000万円を超える賠償金となりました。

本事例に学ぶこと
異議申立ては、やみくもに行うのでは無く、等級ごとの要件を理解しながら狙う必要があります。

弁護士 申 景秀