交通事故による怪我は、日常生活に大きな支障をきたします。
特に、家事とパートのお仕事を両立されている兼業主婦の方の場合、休業による損害の算定が複雑になり、保険会社から不当に低い金額を提示されるケースが少なくありません。
今回は、交通事故に遭われた兼業主婦の方が、パート収入が平均賃金よりも低かったため、当事務所にご依頼いただき、主婦としての家事労働に対する休業損害を平均賃金ベースで請求し、通院慰謝料などと合わせて弁護士基準(裁判基準)による適正な賠償を受けることができた事例をご紹介します。
紛争の内容:兼業主婦の休業損害と保険会社の提示額
ご依頼者様(Gさん・兼業主婦)は、自転車で横断歩道を横断中、左折してきた自動車にはねられる交通事故に遭われました。
この事故により、Gさんは右足首の骨折と全身打撲の怪我を負い、約6ヶ月間の通院治療と、その間の家事・パートの休業を余儀なくされました。
Gさんは週に3日程度、近所のスーパーでパートとして働いていましたが、その収入は月額にすると約8万円程度でした。
事故後、相手方の任意保険会社から休業損害の提示がありましたが、その金額はGさんのパート収入実績に基づいたものであり、Gさんが家事労働に従事できなくなったことへの評価はほとんどされていませんでした。
また、通院慰謝料についても、保険会社独自の低い基準で算定されており、Gさんは提示された賠償額全体に強い不満を感じ、「家事もできず、パートも休まざるを得なかったのに、この金額では納得できない」と当事務所にご相談に来られました。
交渉の経過:弁護士による「主婦休損」の主張と弁護士基準での請求
当職はGさんから詳細な状況を聴取し、特に休業損害の算定において、Gさんのパート収入が女性労働者の平均賃金(賃金センサス)を下回っている点に着目しました。
交渉方針として、以下の点を強く主張することとしました。
休業損害の算定基礎
Gさんは兼業主婦であり、パート収入の他に、日々相当量の家事労働に従事していたこと。
パート収入が女性労働者の平均賃金よりも低い場合、主婦としての家事労働に対する損害は、原則として女性労働者の平均賃金を基礎として算定されるべきであること(いわゆる「主婦休損」の考え方)。
本件では、Gさんのパート収入実績よりも、賃金センサスに基づく1日あたりの基礎収入額の方が高くなるため、そちらを採用して休業損害を請求すること。
通院慰謝料
保険会社提示の任意保険基準ではなく、弁護士基準(裁判基準)に基づいて算定し直すこと。これにより、大幅な増額が見込めること。
通院交通費
実際に通院にかかった公共交通機関の費用や、自家用車を使用した場合のガソリン代などを漏れなく請求すること。
まず、相手方保険会社に対し、弁護士基準に基づき算定した損害賠償請求書を送付しました。
特に休業損害については、Gさんの具体的な家事労働の内容や、事故によってどの程度の支障が生じたかを詳細に説明し、賃金センサスを基礎収入とすることの正当性を主張しました。
当初、保険会社の担当者は、
「パート収入の実績があるのだから、それを超える基礎収入は認められない」
「家事への支障は限定的ではないか」
といった反論をしてきました。
しかし、当職は、
過去の裁判例において、兼業主婦の休業損害が平均賃金で認められた事例を提示。
Gさんの診断書やカルテから、怪我の程度が家事労働に大きな支障を与えていたことを具体的に立証。
Gさんの家族構成や、事故前の家事分担状況などを説明し、Gさんの家事労働の重要性を強調。
といった主張を粘り強く展開しました。
通院慰謝料についても、弁護士基準(裁判基準)がいかに正当な基準であるかを、裁判例を交えながら説明しました。
本事例の結末:主婦休損が認められ、弁護士基準で示談成立
複数回にわたる交渉の結果、相手方保険会社もこちらの主張を概ね受け入れ、以下のとおりGさんにとって有利な内容で示談が成立しました。
休業損害
Gさんのパート収入実績ではなく、女性労働者の平均賃金(賃金センサス)を基礎収入として算定され、当初の保険会社提示額から大幅に増額。
通院慰謝料
弁護士基準(裁判基準)で合意。
通院交通費
実費全額が認められる。
Gさんは”諦めずに弁護士の先生に相談して本当に良かった。家事の苦労も評価してもらえて嬉しいです”旨満足されていました。
本事例に学ぶこと:兼業主婦の権利を正しく主張するために
本事例から学べることは以下のとおりです。
兼業主婦の休業損害は、パート収入と家事労働の両面から評価される
パート収入がある兼業主婦の場合でも、その収入が平均賃金より低いときは、家事労働分を平均賃金で評価し、より高い方を基礎収入として休業損害を請求できる可能性があります。
「主婦休損」という考え方を知っておく
家事労働も経済的に評価されるべき立派な労働です。交通事故によって家事労働に支障が出た場合、その分の損害を請求できることを知っておくことが重要です。
保険会社の提示額を鵜呑みにしない
保険会社が提示する休業損害や慰謝料は、自社の基準に基づいて低く抑えられていることが少なくありません。特に主婦の休業損害については、その評価が不十分な場合があります。
弁護士基準(裁判基準)での請求が重要
通院慰謝料や後遺障害慰謝料は、弁護士基準で請求することで、保険会社の提示額よりも大幅に増額する可能性があります。
弁護士への早期相談が有利な解決への近道
法的な知識に基づいて、被害者の状況に応じた適切な休業損害の算定方法を判断できます。
保険会社に対して、裁判例などを示しながら、論理的かつ有利に交渉を進めることができます。
被害者本人が煩雑な交渉から解放され、治療や生活の再建に専念できます。
兼業主婦の方で交通事故に遭われ、保険会社の対応や賠償額に疑問を感じたら、泣き寝入りせずに、ぜひ一度交通事故に強い弁護士にご相談ください。あなたの正当な権利を守り、適正な賠償を得るためのお手伝いをさせていただきます。
当事務所では、交通事故被害者の方の立場に立ち、親身なサポートを心がけております。お気軽にお問い合わせください。