紛争の内容(ご相談前の状況)
依頼者E君(15歳・中学3年生)は、自転車で部活動からの帰宅途中、道路の左側を走行していました。
進路を右に変更しようとしたところ、後方から並走してきたタクシーと接触し、転倒。
左足を負傷するなどの怪我を負われました。

事故の連絡を受けたご両親は、E君の怪我のことはもちろん、「未成年者の事故なので、手続きが特殊で不利になるのではないか」「相手はプロであるタクシー会社と保険会社。自分たちだけで太刀打ちできるのか」と、大きな不安に駆られました。

特に、受験を控えた大切な時期でもあり、E君本人とご両親の精神的なご負担は計り知れないものでした。
そこで、今後の対応をすべて専門家に任せ、E君を学業と治療に専念させてあげたいと考え、ご自身の自動車保険に付帯していた弁護士費用補償特約を利用し、当事務所にご依頼されました。

交渉・調停・訴訟等の経過(当事務所の対応)
ご依頼を受け、当事務所の弁護士は直ちにE君とご両親の代理人として交渉を開始。ご家族の負担を最小限にするため、以下の通り段階的かつ戦略的に手続きを進めました。

物損問題の先行解決: まず、破損した自転車の損害について、購入時の領収書や自転車店の修理見積書を速やかに保険会社へ提出。粘り強く交渉し、早期に物損問題を解決させました。

治療への専念と、通院付添費の記録: E君とご両親には、とにかくお怪我の治療に専念していただきました。
その際、弁護士はご両親に対し、「E君の通院の都度、ご両親が車で送迎している事実と、その時間やガソリン代などを記録してください」と具体的にお願いしました。これは、後の損害賠償請求で重要な証拠となるためです。

人損の交渉: 約半年の治療を終え、E君のお怪我が完治した段階で、本格的な人身損害の交渉を開始。通院期間に対する慰謝料を「裁判基準(弁護士基準)」で満額請求すると同時に、タクシーでの通院費に加え、ご両親が送迎に費やした労力と費用を「近親者付添費」として約85,000円請求しました。

当初、保険会社は「中学生一人で通院は可能であり、親の付添費は認められない」と強硬な姿勢でした。
しかし、弁護士が「未成年者、特に義務教育中の子供の通院に親が付き添うのは社会的にも当然のことであり、事故がなければ発生しなかった負担である」と、過去の裁判例も示しながら法的に強く主張を続けた結果、相手方も当方の請求を全面的に受け入れました。

本事例の結末(結果)
最終的に、E君の入通院慰謝料は裁判基準満額で認められ、さらに争点だったご両親の送迎費用も「通院付添費」として約85,000円が支払われる、極めて高水準な内容で示談が成立しました。

本件では弁護士費用補償特約を利用しましたが、支払い元である保険会社の担当者からも「中学生の通院に近親者付添費が認められるのは非常に珍しいですね」と驚きの声が上がるほど、特筆すべき成果を上げることができました。

本事例に学ぶこと(弁護士からのアドバイス)
お子様が交通事故の被害に遭われた際、「親が子供の送り迎えをするのは当たり前」と考え、その負担を請求できるとはお考えにならない方がほとんどです。

しかし、本件のように、事故が原因で発生したご家族の負担(時間、労力、費用)は、法的に正当な損害として認められる可能性があります。
重要なのは、「これは請求できないだろう」とご自身で判断せず、事故直後から全ての費用や手間を記録しておくことです。

未成年者の交通事故には、成人とは異なる特有の論点が存在します。
慰謝料の算定は勿論、本件のような付添費や、将来の学習への影響(学習遅延損害)など、専門家でなければ見過ごしてしまうような損害も少なくありません。

お子様が万が一事故に遭われた際は、ぜひ一度、未成年者の交通事故に精通した弁護士にご相談ください。
ご家族の正当な権利を守り、お子様が安心して未来へ進むためのお手伝いをさせていただきます。

弁護士 時田 剛志