紛争の内容
本件は、走行中に車線変更をしてきた車両がウインカーを出さずに割り込んできたことによる物損事故でした。
幸いにもご依頼者様にお怪我はなく、車両の損害のみに留まりましたが、過失割合が大きな問題となりました。

当初、相手保険会社からはご依頼者様に2割の過失があるとする8:2の過失割合が提示されました。

しかし、ドライブレコーダーの映像を確認しても、ご依頼者様が事故を避けることは極めて難しい状況であり、ご依頼者様もこの割合では納得できないという強いご意向でした。
そこで、私どもはご依頼者様からご依頼をいただき、過失割合について交渉を行うことになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
交渉は当初からかなり難航しました。
相手方保険会社は、基本となる過失割合を修正する特段の事情はないため、基本割合から譲ることはできないという主張を繰り返しました。確かに基本割合を明確に変更する事情はなかったので、相手保険会社の主張も十分にあり得るところでした。

しかし、当方としては、相手方車両には①速度超過が疑われること、そして②車線変更時にウインカーを出していないこと、という明確な過失があることを強く主張しました。

この事故は相手方の100%の過失であるべきであり、100:0以外での解決には応じないという強気の姿勢で粘り強く交渉を続けました。もちろん、裁判になった場合、このような結論が出にくいことは承知の上でしたが、ご依頼者様の意向を最大限に尊重し、交渉を継続しました。

本事例の結末
結果として、約3ヶ月という比較的短期間の交渉で、過失割合を100:0で解決することができました。もっとも、この3か月で相当な量の連絡を相手保険会社に行い、綿密に本件の調査を行いました。
これにより、ご依頼者様の車両修理費用は全額、相手方から支払われることになりました。

交渉の過程で、レンタカー費用については修理にかかる3日間分という非常に短期間に限り、当方からは請求しないという形で合意しましたが、これはご依頼者様にとって最大の利益を得るための戦略的な判断でした。

過失割合が少しでもこちらにある場合、相手方の修理費用についてもその割合分を支払う必要があり、それを自身の車両保険から支払うと保険の等級が上がり、将来的な保険料負担が増える可能性があります。

これら将来的な支出まで総合的に考慮した結果、最も利益が出る解決を目指して交渉を行い、最終的に100:0という最高の成果を得ることができた事例となりました。

本事例に学ぶこと
交通事故において、初期に提示される過失割合に疑問を感じた場合、ドライブレコーダーなどの客観的証拠を基に、専門家が粘り強く交渉することで、当初の提示とは異なる有利な結果を導き出せる可能性があることを本事例は示唆しています。

特に、相手方に明確な交通法規違反(ウインカー不使用や速度超過の疑いなど)がある場合には、それを有力な交渉材料として強く主張していくことが非常に重要になります。

また、単に目先の損害賠償額だけでなく、自身の車両保険の等級変動による将来的な保険料負担増といった広範な視点から、ご依頼者様にとっての真の最大の利益を追求する交渉戦略が不可欠であると再認識させられます。

そして、時には、一部の損害(本件では3日間のレンタカー費用)を譲歩するという戦略的な判断が、全体としてより大きな利益(過失割合100:0による修理費用全額の確保と将来的な保険料の維持)を得る上で有効な手段となることも忘れてはなりません。

弁護士 遠藤 吏恭