紛争の内容
依頼者(50代男性・タクシー運転手)は、乗客を降ろした後、次の乗客を探すために走行中、赤信号で停車したところを後方から来た乗用車に追突されました。この事故により頸椎捻挫(むちうち)と診断され、首の痛みと可動域制限により、運転業務に不可欠な後方や左右の安全確認が困難な状態となりました。医師の指示もあり、約3か月間の休業を余儀なくされました。
治療が終わり、加害者側の保険会社と休業損害について交渉したところ、保険会社は依頼者の収入が歩合給であることなどを理由に、過去の収入資料の一部のみを参考にした低い休業損害額を提示してきました。
また、慰謝料についても低額な基準での提示でした。
交渉・調停・訴訟等の経過
当職は、依頼者の勤務先のタクシー会社から過去1年分の給与明細と、休業期間を証明する「休業損害証明書」を取り寄せました。
その上で、事故前の安定した収入実績を基に、事故がなければ得られたはずの休業損害を詳細に算定しました。
また、慰謝料についても、裁判(弁護士)基準で再計算した金額を提示し、粘り強く交渉を続けました。
本事例の結末
当職の交渉の結果、休業損害は当初の保険会社提示額から約40万円増額された約90万円が認められました。
また、入通院慰謝料も裁判(弁護士)基準に近い額が認められ、治療費等を含めた賠償金を獲得し、無事に解決となりました。
本事例に学ぶこと
タクシー運転手やトラック運転手のように、身体への負担が大きく、運転が業務の根幹をなす職業の場合、むちうちであっても仕事への影響は甚大です。
休業損害の算定は給与体系によって複雑になりがちですが、弁護士が収入資料を精査し、業務の実態を的確に主張することで、正当な補償を受けられる可能性が高まります。