紛争の内容
依頼者(40代男性)は、大型商業施設の駐車場内において、駐車スペースにバックで車を入れようとしていました。
車体がスペースに半分ほど入ったところで、通路を直進してきた加害車両が依頼者の車両の右側後部に衝突しました。

この事故により、依頼者の車両はリアバンパーとフェンダーに大きな傷とへこみが生じました。けが人はいませんでした。

後日、加害者側の保険会社担当者から連絡があり、「バックで動いていた依頼者にも大きな過失がある」として、「依頼者40%:加害者60%」という過失割合を提示されました。

依頼者は、十分に後方を確認し、ゆっくりと駐車操作をしていたにもかかわらず、一方的に直進してきた車両から衝突された事故で、この過失割合に到底納得ができず、当職へ相談に来られました。

交渉・調-停・訴訟等の経過
当職は、まず依頼者のドライブレコーダーの映像と、事故現場である駐車場の見取り図を確認しました。

映像からは、依頼者の車両が駐車動作を開始し、後方の通路に他の車両がいないことを確認してからゆっくりとバックしていること、衝突時にはほとんど停止に近い速度であったことが明らかでした。

これを基に当職は、加害者側の保険会社に対し、「本件事故は、駐車区画に進入中の車両と通路を直進する車両の事故であり、基本過失割合は通路直進車に重く課されるべきである。

また、加害車両は通路を直進する際に、駐車しようとしている依頼者の車両を容易に発見し、衝突を回避できたはずである」と、過去の判例を交えて強く主張しました。

本事例の結末
当職の粘り強い交渉の結果、保険会社は当初の主張を撤回し、最終的に過失割合を「依頼者10%:加害者90%」とすることで合意しました。

これにより、依頼者は車両の修理費用の大部分を相手方の保険で賄うことができ、自己負担を大幅に軽減することができました。

本事例に学ぶこと
駐車場内の事故では、道路交通法が直接適用されない場合が多く、保険会社から必ずしも適切とは言えない過失割合を提示されるケースが少なくありません。

「バックしていた方が悪い」「動いていた者同士だから五分五分」といった単純な理屈で判断されるべきではなく、個別の具体的な状況に即して判断されるべきです。

物損事故のみで弁護士に依頼することを躊躇される方もいますが、過失割合に納得がいかない場合には、一度専門家である弁護士に相談してください。

弁護士 申 景秀