紛争の内容(ご相談前の状況)
ご夫婦で自動車に乗っていた依頼者は、やや狭い道路で対向車とすれ違う際、相手の車と接触する事故に遭われました。
相手の進行方向左側に障害物があり、それを避けようと相手が少し右にハンドルを切ったことが事故の原因と考えられました。

しかし、相手方保険会社は「お互い様だ」として過失割合50:50を強硬に主張し、交渉は早々に難航しました。
さらに、争点は複数ありました。

衝突態様の争い: こちらは「サイドミラー」と相手車両の「右バンパー」が接触したと認識していましたが、相手は「ドラレコの音」などを根拠にミラー接触のみだと主張。
傷害の有無の争い: この事故で、助手席に乗っていた配偶者様は衝突の衝撃もしくは急ブレーキにより、むちうち症(頚椎捻挫)となり通院を開始。しかし、相手方は

これを物損事故だと決めつけ、怪我をしたこと自体を真っ向から否定してきました。
話し合いは全く進まず、膠着状態が続いていたところ、相手方保険会社は信じられない行動に出ます。
「こちらには賠償金を支払う義務はない」と主張し、裁判所に「債務不存在確認訴訟」を提起してきたのです。
突然「被告」として訴えられた依頼者様は、大きな衝撃と不安を感じ、訴訟対応を任せられる専門家として、当事務所にご依頼されました。

交渉・調停・訴訟等の経過(当事務所の対応)
「訴訟は我々にとって、主張を尽くす『本番』の舞台です。どうかご安心ください」
弁護士はそのようにお伝えし、直ちに訴訟代理人として徹底的に争う準備を始めました。示談交渉のみならず、訴訟経験豊富な当事務所の真価が問われる局面でした。

医学的証拠による傷害の立証
最大の争点である「配偶者様のお怪我」について、カルテなどの医学的資料を精査。さらに、当事務所の費用負担(保険を利用)で、協力医に「医学意見書」の作成を依頼しました。これにより、「事故の態様と発生した傷害との間に、医学的な因果関係が合理的に説明できる」ことを客観的に証明しました。

法廷での尋問
配偶者様に証人として出廷していただき、事故の状況や症状について裁判官の前で直接証言してもらいました。事前に弁護士が法廷での流れや尋問のポイントを丁寧に説明し、リハーサルも行ったため、「過度に緊張せず、落ち着いて事実を話すことができた」とのことでした。

第一審での勝訴判決
裁判の途中、裁判官から和解案が示されましたが、相手方はこれを拒否。最終的に判決が下され、その内容は当方の主張を全面的に認める「勝訴判決」でした。

控訴審での粘り強い対応と最終的な和解
しかし、相手方は判決を不服として控訴。舞台は高等裁判所に移りました。

弁護士は控訴審でも、「第一審判決がいかに妥当なものであるか」を論理的に主張。その結果、審理は一回で終結し、改めて裁判所から和解が勧告されました。

追い詰められた相手方はついに非を認め、こちらの言い分(物損、人損ともに)を全面的に受け入れる内容での和解に応じました。

本事例の結末(結果)
第一審での勝訴、そして控訴審での交渉を経て、最終的に高等裁判所において、当方の主張が全面的に認められる内容での「勝訴的和解」が成立しました。

これにより、助手席に同乗していた配偶者様は、治療費や慰謝料などを含め、最終的に約350万円の損害賠償金を受け取ることができました。

相手方の不誠実な対応により、解決まで時間はかかりましたが、最後まで諦めずに戦い抜いた結果、ご依頼者様には大変ご満足いただくことができました。

本事例に学ぶこと(弁護士からのアドバイス)
保険会社の主張が正しいとは限らない
保険会社は、自社に有利な過失割合や事故態様を主張してくることが少なくありません。
特に「むちうち症」のような外傷が見えにくい怪我は、軽視されたり、因果関係を否定されたりしがちです。
相手の言い分に納得できない場合は、安易に示談せず、専門家にご相談ください。

「債務不存在確認訴訟」を恐れない
これは、保険会社が交渉を有利に進めるために使うことのある一種の戦術です。訴えられたからといって、ご自身が不利なわけでは決してありません。
むしろ、法廷という公平な場で、証拠に基づいて堂々と主張を尽くすチャンスです。
経験豊富な弁護士に任せれば、何も恐れることはありません。

最後まで諦めない
たとえ訴訟が長引き、控訴審までもつれたとしても、正当な権利は最後まで主張し続けるべきです。
当事務所は、示談交渉はもちろん、第一審、控訴審まで、依頼者様の正義が実現されるまで、粘り強く戦い抜きます。

弁護士 時田 剛志