紛争の内容
依頼者(40代男性・専業主夫)は、妻と小学生の子供2人の4人家族で、炊事、洗濯、掃除、育児といった一切の家事を担っていました。
ある日、商店街の横断歩道を青信号で横断していたところ、前方をよく見ていなかった加害者の運転する自転車にはねられて転倒しました。
この事故により、依頼者は頸椎捻挫(むちうち)と腰椎捻挫と診断され、約6ヶ月間の通院治療を余儀なくされました。
特に事故後の数ヶ月は首と腰の痛みがひどく、かがんで掃除機をかける、子供を風呂に入れるといった日常の家事労働に大きな支障が生じ、妻が仕事を早退したり、一時的に家事代行サービスを利用したりして乗り切る状況でした。
当初、相手保険会社は「主夫としての活動が怪しい」という態度で、治療費以外の補償に難色を示しました。
交渉・調停・訴訟等の経過
当職は、依頼者から事故後の具体的な家事への支障(料理の時間が倍になった、子供の送迎を妻に頼まざるを得なくなった等)を詳細に聞き取り、陳述書としてまとめました。
その上で、主夫の休業損害も専業主婦と同様に、賃金センサスの女性全年齢平均の賃金額を基礎として算定すべきであると法的に主張しました。
また、入通院慰謝料についても、依頼者の通院期間と精神的苦痛を考慮し、最も高額となる裁判(弁護士)基準で算定。これらの損害額を詳細な計算書と共に保険会社に提示し、交渉に臨みました。
保険会社は当初、主夫の休業損害の算定に抵抗しましたが、当職が家事労働への具体的な影響と法的根拠を粘り強く主張したことで、徐々に態度を軟化させていきました。
本事例の結末
最終的に、当方の主張が概ね認められ、休業損害として約95万円、入通院慰謝料として約90万円、その他治療費や家事代行サービス利用料などを含め、示談金として総額200万円を獲得することができました。
本事例に学ぶこと
「主夫」の家事労働も、専業主婦と同様に財産的価値のある労働として、法的に保護されます。
事故によって家事労働に支障が出た場合、それは明確な「損害」であり、休業損害として加害者に請求する正当な権利があります。
加害者本人や保険会社から不当に低い評価をされた場合でも、弁護士が介入し、具体的な支障を的確に主張・立証することで、裁判基準に準じた適切な賠償を受けられる可能性が大きく高まります。