紛争の内容(ご相談前の状況)
依頼者は、パートタイムで働きながら家事を一手に担う主婦の方。その日も、いつものように自転車に乗り、買い物からの帰路、道路の左側を直進走行していました。

十字路に差し掛かったその時、左側の道から一時停止の標識を無視した乗用車が、安全確認を怠ったまま右折しようと飛び出してきました。避けきれなかった依頼者は、車と接触・転倒し、手首や膝を強く打ち付ける怪我を負われました。

事故後、整形外科を受診し、幸い骨に異常はありませんでしたが、痛みが引かず、約5ヶ月間の通院を余儀なくされました。普段当たり前のようにこなしていた掃除や料理といった家事にも支障が出て、ご家族の助けを借りなければならない状況でした。

事故後早い段階で当事務所にご依頼いただきましたが、相手方保険会社との交渉では、以下の3点が大きな争点となりました。

慰謝料の金額: 保険会社は、自社の内部基準に基づいた低額な慰謝料しか提示しませんでした。
主婦の休業損害: 保険会社は、依頼者が主婦であることなどを理由に、休業損害の支払いに難色を示しました。
過失割合: こちらに全く非がない事故であるにもかかわらず、保険会社は「自転車側にも過失があった」として、賠償金を減額しようと試みました。

交渉・調停・訴訟等の経過(当事務所の対応)
「安易な妥協は、依頼者の不利益に繋がる」
当事務所の弁護士は、この信念に基づき、相手方保険会社との粘り強い交渉を開始しました。

弁護士の中には、交渉を早々に切り上げ、低い水準で示談を進めてしまうケースもあると聞きます。
もちろん早期解決を重視する選択もありますが、当事務所は、依頼者様の正当な補償を追求するため、安易な妥協はしません。

慰謝料・休業損害
弁護士は、過去の裁判例に基づいた法的に正当な「裁判基準」での算定を要求。主婦の家事労働も金銭的に評価されるべき「労働」であると強く主張し、休業損害が認められるべき法的根拠を何度も、そして論理的に説明し続けました。

特に主婦の休業損害は争いになりやすく、弁護士を通さずに示談してしまった方の中には、実は主婦の休業損害が請求できたのに、そもそもそのような項目が計上されておらず一円も受け取らないまま示談してしまったとか、非常に低額で示談してしまったという声もあります。

過失割合について
弁護士は、刑事記録(実況見分調書)を取り寄せ、相手方が一時停止標識を無視したという客観的な事実を突きつけました。
その上で、依頼者の走行状況に何ら問題がなかったことを主張し、相手方が提示する過失割合(80:20)を断固として拒否しました。

保険会社の担当者が変わっても、当方の主張が一貫して揺るがないことを示すことで、徐々に交渉の主導権を握っていきました。

本事例の結末(結果)
数ヶ月にわたる粘り強い交渉の結果、相手方保険会社はついに当方の主張を全面的に受け入れました。

慰謝料は「裁判基準」満額で算定。
主婦としての休業損害も、満額で認められる。
過失割合は、当方にとって極めて有利な【依頼者(自転車):10% 対 相手方(四輪車):90%】で合意。

これにより、依頼者様は、最終的に治療費とは別に、約120万円の損害賠償金を受け取ることができ、事故によって受けた苦痛に見合う、正当な補償を手にすることができました。

本事例に学ぶこと(弁護士からのアドバイス)
・主婦の家事労働も、休業損害として正当に請求できる
主婦(主夫)の家事労働は、家族の生活を支える重要な労働です。
交通事故によって家事に支障が出た場合、それは金銭的に評価されるべき「損害」であり、休業損害として請求する正当な権利があります。
決して諦める必要はありません。

・弁護士の「交渉姿勢」が、結果を大きく左右する
本件のように、保険会社は当初、被害者にとって不利な条件を提示してくるのが常です。
ここで弁護士が安易に妥協すれば、低い水準での解決となってしまいます。
それだけでなく、保険会社に「この法律事務所は、強く出れば折れる」という印象を与え、将来の他の依頼者様にも悪影響を及ぼしかねません。

私達は、依頼者様の正当な利益を守ることを第一に考え、必要であれば何度でも、粘り強く交渉します。
交通事故の被害に遭われた際は、ぜひ当事務所の「交渉姿勢」にご期待ください。

弁護士 時田 剛志