紛争の内容
本件は、依頼者の方が交通事故に遭われ、負傷によりお仕事に休業が発生した事案です。
保険会社との間で、特に休業損害の算定方法が争点となりました。

依頼者の方は収入に波がある職種であったため、一般的な算定方法である前年度の源泉徴収票や確定申告書に基づく平均収入を用いると、事故直前の高い収入実態が反映されず、適正な賠償額を得られない状況にありました。

交渉・調停・訴訟等の経過
交渉の過程において、昨年の収入をならして計算する通常の算定方法ではなく、依頼者の方の事故直近の収入実態に基づき休業損害を算定するよう強く主張いたしました。
その結果、保険会社側も、例外的に直近の収入を根拠とした算定を受け入れました。
この交渉の成功により、依頼者様が本来得られるべき経済的利益を大幅に引き上げることができました。
さらに、治療が終了してから2か月もかからずに示談解決に至り、訴訟などの長期化を避け、極めて迅速に紛争を終結させることができました。

本事例の結末
事故直近の収入を基にした休業損害の算定が認められ、依頼者様は適正な賠償金を受領し、経済的利益の最大化を実現しました。治療終了から迅速に解決に至ったことで、依頼者様は精神的負担を最小限に抑え、早期に生活再建に移行することができました。

本事例に学ぶこと
交通事故の損害賠償請求においては、休業損害の算定一つとっても画一的な対応をすべきではありません。
もちろん、通常は前年の課税証明書をベースとしますが、収入に大きな変動がある方の場合は、事故直前の状況が最も実態を反映していることを具体的に示し、柔軟な算定方法を採用するよう交渉することが重要となります。
この柔軟な対応が、経済的利益を大きく左右することもあります。

また、交渉の場においても、依頼者の個別具体的な状況を深く理解し、その実態を裏付ける資料を準備することで、保険会社の原則論を覆すことが可能になることがあります。

さらに、法的正当性を主張するだけでなく、早期解決という双方のメリットを提示することで、治療終了後2か月以内で合意形成に至ることができました。
依頼者の方の利益を最大化するためには、「正当な賠償」の追求と「迅速な解決」の実現という二つの要素をバランスよく実現する戦略的なアプローチが不可欠です。

弁護士 遠藤 吏恭