紛争の内容
ご依頼者様(以下「当方」)は、駐車場で車両に損害を与える当て逃げ事故の被害に遭いました。

目撃情報により加害車両のナンバープレートは判明したものの、運転者が現場から立ち去ったため、加害者の氏名や住所が不明の状況でした。

保険会社から、相手が不明なままでは請求が難しいと説明を受け、当方に損害が残ってしまう可能性に直面し、ご依頼いただきました。

交渉・調停・訴訟等の経過
まず、弁護士は職務上の権限である「弁護士会照会(23条照会)」の手続きを利用し、判明しているナンバープレート情報から、加害車両の所有者情報(氏名・住所)を照会しました。

しかし、照会結果が出たものの、その所有者情報だけでは実際に運転していた加害者本人を特定し、確実に賠償請求を行うことが困難であると判明しました。

そこで、当方の契約内容を精査したところ、幸いにも「車両保険」に加え、「弁護士費用特約」、そして「無過失事故の費用特約(または類する名称の特約)」が付帯されていることが判明しました。

本事例の結末
加害者本人への直接請求を継続することは費用対効果が低いと判断し、戦略を転換しました。

当方の加入している無過失事故の費用特約(または過失特約)を利用し、当方の車両保険を使用することなく、当て逃げによる損害(修理費用)を全額保険で填補することができました。

また、弁護士費用についても弁護士費用特約が適用され、自己負担なく事件を解決することができました。

本事例に学ぶこと
当て逃げ事故で加害者が不明な場合、弁護士照会によってナンバーから所有者を探すことは可能ですが、最終的に賠償金を得るまでのハードルは高い場合があります。

本事例では、加害者の特定・請求に固執するのではなく、ご自身の加入している自動車保険の特約を最大限活用するという柔軟な発想が功を奏しました。

特に、ご自身の過失がない事故にも対応できる特約や、弁護士費用特約は、このような不測の事態において非常に有用です。事故の際は、単に相手への請求を考えるだけでなく、ご自身の保険内容を弁護士と共に確認することが、早期かつ確実な解決への鍵となります。

弁護士 申 景秀