紛争の内容
依頼者は50代の女性で、自転車で走行中に自動車との衝突事故に遭い、鎖骨骨折の重傷を負いました。
治療後も鎖骨に変形障害(痛みあり)が残存したため、当事務所で自賠責保険に対する後遺障害の申請を行った結果、後遺障害等級12級が認定されました。

事故の状況について、相手方保険会社は、依頼者(自転車側)にも信号無視などの重大な過失があったとして、過失割合を「自転車:車=40:60」と主張し、賠償額を大幅に減額した提示を行ってきました。

依頼者はこの過失割合に納得がいかず、また、提示された賠償額も後遺障害12級に対する裁判基準と比較して著しく低かったため、当事務所にご依頼されました。

交渉・調停・訴訟等の経過
ご依頼を受け、当職はまず交通事故鑑定資料や現場検証の結果に基づき、ドライブレコーダーの記録などを精査しました。
その結果、相手方(車側)の一方的な不注意が事故原因であり、依頼者の過失は極めて限定的であると判断し、交渉段階から過失割合「90:10(車:自転車)」を主張しました。

交渉が決裂したため、適正な賠償を勝ち取るべく直ちに地方裁判所に訴訟を提起しました。
裁判では、過失割合のほか、後遺障害慰謝料、そして鎖骨の変形障害が将来の労働能力に及ぼす影響(逸失利益)の算定が主な争点となりました。
裁判所は当職の主張をほぼ認め、過失割合を「90:10」とする判断を示しました。

相手方はこの判決に不服として控訴しましたが、高等裁判所も原審の判断が正当であるとして相手方の控訴を棄却し、判決が確定しました。

本事例の結末
裁判所による判決が確定し、依頼者は自賠責保険から先に受領した金額(既払い金)とは別に、最終的に総額で700万円を超える賠償金を受け取りました。
これは、保険会社が当初提示した金額を大幅に上回る結果であり、過失割合、後遺障害慰謝料、そして逸失利益の全額が認められたことで、依頼者の精神的・経済的損害に対する十分な補償が実現しました。

本事例に学ぶこと
交通事故の賠償請求において、過失割合は賠償金額を大きく左右する最重要の争点の一つです。
特に自転車と車の事故では、保険会社が自転車側に不利な過失割合を主張してくることが多くあります。

また、後遺障害が認定されても、変形障害の場合、逸失利益の有無や算定が争点となることがあります。
本事例は、安易な示談に応じず、粘り強く証拠を収集し、専門家である弁護士が訴訟によって裁判所の判断を仰いだことで、被害者にとって最も有利な過失割合を確定させ、後遺障害12級に対する正当な裁判基準の賠償(逸失利益を含む)を全うできた好例です。

過失割合や後遺障害の等級・逸失利益に疑問を持った際は、最終的な判決まで見据えた法的サポートを受けることが極めて重要です。

弁護士 申 景秀