紛争の内容
依頼者(被害者)は、所有する高年式の高級輸入車を、第三者に300万円で売却することが事故の3日前に確定していました。
しかし、その車両が追突事故に遭い、リア部分に大きな損傷を負いました。
事故後、売却予定の買主は、修復歴が生じたことや市場価格を考慮し、購入価格を200万円に引き下げると主張。
結果として、依頼者は事故前より100万円低い価格(差額)で車両を売却せざるを得なくなりました。
依頼者は、この100万円の損害について加害者側の保険会社に請求しましたが、保険会社は「時価額を超える損害は認められない」「評価損は限定的な場合にしか認められない」として、修理費用以上の賠償に応じませんでした。
交渉・調停・訴訟等の経過
当事務所は、依頼者から損害賠償請求の依頼を受け、以下の点を主張しました。
実損額の立証: 事故直前に売買契約が確定し、具体的な売却価格(300万円)が既に定まっていたことを示す証拠(売買契約書等)を提示し、現実に発生した差額100万円が事故と因果関係のある損害であると主張しました。
評価損の積極的な主張: 単なる「格落ち」ではなく、売却直前という特殊な状況下で、修復歴が付くことによって買主から減額されたことは、客観的に車両の経済的価値が下落したこと(評価損)に他ならないと主張しました。また、車両が高年式の高級輸入車であり、走行距離も少なかった点も評価損の根拠として強調しました。
粘り強い交渉の結果、保険会社は、事故前の売却決定が客観的な損害額の根拠となることを認め、当初の提示額を大幅に増額。
評価損として、一定額を支払うことで和解が成立しました。
さらに、加害者本人とも交渉し(ここは本人が)、保険会社が出さなかった部分を加害者が自己負担することになりました。
本事例の結末
評価損100万円を受取、紛争は解決しました。
本事例に学ぶこと
交通事故による車両の損害賠償請求において、保険会社は原則として「修理費用」または「時価額」のいずれか低い方を上限とする傾向があります。
しかし、本事例のように、事故直前に車両の売却が確定しているなど、特殊な事情がある場合は、その確定していた売却価格と事故後の売却価格との差額(実損額)を、評価損として主張できる可能性があります。
ただし、こうした特殊事情がない場合、通常の評価損は、修理費の○%という形でしか認められないのと、車体の重要な部分に損傷が及んでいない限り評価損は認められない傾向にあります。
本件は特殊事情もあったという点は注意する必要があります。















