紛争の内容
事故の現場は、田畑に囲まれた見通しの良い農道のような場所でした。
信号機のない交差点を、ご依頼者様の車が直進していたところ、右方向から進入してきた相手方の車と衝突してしまったのです。
この事故により、ご依頼者様は「むち打ち症(頸椎捻挫)」を負われました。幸いにも骨折などの重傷ではありませんでしたが、首の痛みや身体の重だるさは日常生活に少なからず影を落とします。
相手方の保険会社による一括対応(治療費の直接払い)を受けながら、約4ヶ月弱の通院リハビリを続けられましたが、痛みと付き合いながらのパート勤務や家事は、精神的にも肉体的にも負担の大きいものでした。
過失割合については、当方に15%、相手方に85%という形で見通しがついていましたが、治療終了後の示談交渉において、いかに正当な賠償額を認めさせるかが課題となりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
治療が一通り終了し、いよいよ保険会社との示談交渉が始まりました。
ここで大きな争点となったのが「休業損害」です。
ご依頼者様はパートタイムで働いていらっしゃいましたが、責任感が強く、事故による痛みを我慢して出勤されており、仕事を休んだ日はほとんどありませんでした。
通常、保険会社側の提示では、実際に減収がない場合、休業損害は低く見積もられがちです。
しかし、弁護士の視点は異なります。「仕事は休まなかったが、帰宅後の家事が痛みで思うようにできなかったのではないか」という点に着目しました。
法律実務には「主婦休業損害」という考え方があります。
これは、現実に金銭のやり取りが発生しない家事労働であっても、経済的な価値があるものとみなすものです。
私たちは、ご依頼者様がパート勤務以外にも家庭で主婦としての役割を担っていることを強調し、実際のパート収入ではなく、女性の平均賃金(賃金センサス・年額約400万円)を基礎として日額を算出し、家事に支障が出た分についての損害を強く主張しました。
本事例の結末
粘り強い交渉の結果、私たちの主張は相手方保険会社に受け入れられました。
通院期間が4ヶ月弱であり、かつご依頼者様にも15%の過失がある事案でしたが、最終的には慰謝料や主婦休業損害などを合わせ、過失分を差し引いた(相殺した)金額として、100万円を受領することで解決に至りました。
パートの仕事を休んでいないにもかかわらず、しっかりとした賠償額を獲得できたのは、家事労働への支障を正当に評価させた結果と言えます。
本事例に学ぶこと
本件からお伝えしたい最も重要な点は、「仕事を休んでいなければ休業損害は出ない」と思い込んでしまうのは早計である、ということです。
特に兼業主婦(主夫)の方の場合、パート収入よりも金額が高い「平均賃金」をベースにした主婦休業損害が認められるケースが多々あります。
また、たとえ無理をして仕事に行っていたとしても、家事労働に支障が出ていれば、その分は賠償の対象となり得ます。
保険会社からの提示額をそのまま受け入れる前に、「自分の家事労働の価値」が適正に評価されているか一度立ち止まって考えることが大切です。
「痛みがある中で、仕事も家事も頑張った」。その苦労と努力は、法律上、正当な賠償として報われるべきものです。
適正な評価を受けるためにも、ぜひ専門家である弁護士にご相談ください。















