紛争の内容
ご依頼者の方は主婦であり、不慮の交通事故により怪我を負われました。
治療を継続していましたが、事故からわずか3か月が経過した段階で、相手方の保険会社から治療費の支払いを打ち切る旨の連絡が入りました。

ご依頼者の方は、依然として症状が残っているにもかかわらず治療を終了しなければならないのかという強い不安を抱かれ、弊所に相談にお越しになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
ご依頼を受けた後、まずは治療期間の確保に注力いたしました。

保険会社からの治療打ち切りの打診に対しては、必ずしもそのまま従う必要はありません。
本件では、医学的な必要性に基づき、安易な打ち切りを認めず粘り強く交渉を重ねた結果、治療期間を6か月まで延長させることができました。
これは実務上の運用としては限界に近い長期の対応となります。

治療終了後、確定した治療期間に基づき慰謝料の請求を行いました。
保険会社は当初、自社独自の低い算定基準を提示してきましたが、これに対しては裁判所基準(弁護士基準)で対抗いたしました。
相手方は「訴訟外(裁判外)での和解である以上、裁判所基準の7割から8割程度での解決が妥当である」と主張し、譲歩を求めてきました。

本事例の結末
裁判官経験者の著書等においても、訴外での解決には一定の割り引きを考慮すべきとの見解が見られることは事実です。
しかし、本件では妥協をせず、断固として裁判所基準に近い形での解決を求めました。

その結果、最終的には裁判所基準の95%という、訴外の示談交渉としては極めて高い水準での支払いで合意し、解決に至りました。

本事例に学ぶこと
本事例から得られる教訓としてまず大切なことは、保険会社から提示される治療の中止打診に対して、ご自身だけで判断せず専門家に相談することの重要性です。

適切な治療期間を確保することは、お怪我の回復はもちろん、その後の適正な慰謝料算定の基礎となるため、粘り強い交渉が必要不可欠です。

また、慰謝料の請求段階においても、相手方の提示する基準を当然のものと考えず、裁判所基準という正当な物差しで主張を貫くことが大切です。

訴外での和解では一定の減額が提案されることが一般的ですが、根拠を持って断固とした態度で交渉を継続することで、裁判を待たずして裁判上の満額に近い納得のいく結果を導くことが期待できます。

弁護士 遠藤 吏恭