紛争の内容
Aさんは、商業施設の立体駐車場内という、一般道とは異なる特殊な環境下での接触事故に遭い、相手方の保険会社から「駐車場内の事故であり、お互いに動いていた」という理由だけで、一律に過失割合5:5(折半)の主張を受け、相手方保険会社の機械的な対応に強い不満を抱かれ、当事務所に交渉をご依頼されました。

交渉・調停・訴訟等の経過
弁護士受任後、速やかに「過失割合の修正」と「適切な修理費の確保」の2点に絞って交渉を開始しました。

① 過失割合の見直し交渉
駐車場内の事故は、公道の事故に比べて明確な判例基準(過失割合の目安)が定まりにくい傾向があります。

もっとも、当方は、ドライブレコーダーの映像や車両の損傷位置から、相手方の前方不注意や速度超過、動静注視義務違反を 主張し、この結果、相手方保険会社も「5:5」の主張を維持できなくなり、最終的に相手方75%:Aさん25%という、当初の提示を大幅に覆す有利な条件を認めさせました。

② 修理費および特約適用の交渉
車の時価額が低い場合、法律上の賠償金は「時価額×過失割合」に制限されてしまい、実際の修理ができないケースが多々あります。 そこで当方は、相手方が加入している自動車保険の「対物超過特約(対物全損時超過修理費用特約)」に着目しました。この特約を適用し、時価額ベースではなく「実際の修理額」を基準として損害額を算出するよう相手方保険会社と粘り強く交渉を行いました。

本事例の結末
・過失割合: 75(相手方):25(ご依頼者)
・修理の実施: 相手方の「対物超過特約」の適用を認めさせ、Aさんは車を実際に修理。
・賠償金の支払い: 実際の修理に要した費用に対し、確定した過失割合を乗じた額(修理総額 × 75%)を相手方保険会社が支払うことで合意。

これにより、Aさんは自己負担(25%分)を最小限に抑えることができました。

本事例に学ぶこと
①「駐車場内は5:5」という保険会社の言い分は覆せることが可能
保険会社は過失割合を定型的に処理しがちですが、駐車場内であっても、どちらの注意義務違反が大きかったかを具体的に立証すれば、過失割合は大きく変わる場合があります。

②物損事故における「対物超過特約」の重要性
古い車や愛着のある車の場合、時価額が低いために「修理代が出ない」と言われて諦めてしまう方が多いです。しかし、相手方が「対物超過特約」に加入していれば、本件のように実修理を前提とした解決が可能です。相手方の特約の有無を確認・追求することも弁護士の重要な役割です。

③弁護士費用特約(弁特)の活用価値
こうした物損のみの事故(お怪我のない事故)では、弁護士費用倒れを心配される方も多いですが、ご自身の保険に「弁護士費用特約」がついていれば、実質自己負担ゼロで弁護士に依頼できます。不満を感じたら、まずは特約の有無を確認し、早めに相談することが最善の防衛策となります。

弁護士 安田 伸一朗