紛争の内容
依頼者は、走行中に後ろから追突されるという事故に遭われました。
停止していたところ、あるいは通常どおり走行していたところへ後続車が突っ込んでくる。
ご自身にはまったく落ち度のない、典型的な「もらい事故」です。
この事故により、依頼者は怪我を負われ、通院を余儀なくされました。

事故の被害に遭われた方が直面するのは、身体の痛みだけではありません。
加害者側の保険会社とのやり取りという、慣れない交渉が待ち構えています。
そして、そこで提示される賠償額が、はたして適正な水準なのかどうか。
多くの方にとって、それを判断するのは容易ではありません。

もっとも本件には、もう一つ別の事情がありました。
依頼者が、当事務所から遠く離れた場所にお住まいだったのです。
「弁護士に相談したいけれど、事務所まで足を運べない」「遠方の事務所に依頼して、きちんと進めてもらえるのだろうか」――そうした不安を抱かれる方は少なくありません。
事故で怪我を負っている状況であればなおのこと、移動そのものが負担になります。
距離という壁が、正当な賠償を受ける機会を遠ざけてしまいかねない。
そんな状況からのご相談でした。

交渉・調停・訴訟等の経過
当職はまず、依頼者に無理な負担を強いない進め方を組み立てることから始めました。
本件では、やり取りをメール中心とし、必要に応じて電話を交えながら手続を進めていく方針をとったのです。

弁護士に依頼するというと、何度も事務所へ足を運ばなければならないと思い込んでおられる方が多くいらっしゃいます。
しかし、交通事故の賠償交渉において実際に必要となるのは、診断書や診療報酬明細書といった資料のやり取り、治療経過や日常生活への影響についての聞き取り、そして交渉方針のご相談です。
これらの多くは、対面でなくとも十分に進めることができます。
当職は、依頼者に対して逐一状況をご報告し、確認すべき点はメールで丁寧にお尋ねしながら、必要な資料を漏れなく揃えていきました。
依頼者は、遠方にいながら、ご自宅にいながらにして、手続の進行をご確認いただくことができたのです。

そのうえで当職が力を注いだのが、賠償水準そのものでした。
交通事故の慰謝料には、大きく分けて自賠責保険の基準、保険会社が独自に用いる基準、そして過去の裁判例の蓄積に基づくいわゆる裁判基準(実務家がよりどころとする書籍の表紙の色から「赤い本」の基準とも呼ばれます)という三つの水準があります。
同じ怪我、同じ通院期間であっても、どの基準によるかで金額は大きく変わります。
そして、被害者ご本人が直接交渉した場合、多くは低い水準にとどまってしまうのが実情です。

当職は、通院の経過や依頼者が受けた不利益を丁寧に整理したうえで、裁判基準に沿った賠償を相手方保険会社に対して求めました。
単に「基準が違う」と述べるのではなく、なぜ本件でその水準が相当といえるのかを、資料に即して具体的に主張していったのです。
粘り強い交渉の結果、保険会社は当方の主張をおおむね受け入れ、ほぼ裁判基準に沿った水準での賠償に応じることとなりました。

本事例の結末
こうして本件は、依頼者が一度も遠方まで足を運ぶことなく、ほぼ裁判基準に沿った水準で示談が成立しました。
当初、保険会社が独自の基準で提示していた金額と比べれば、依頼者が受け取ることのできた賠償は相当に上積みされたことになります。

そしてもう一つ、依頼者にとって大きかったのは、費用の面です。
本件では、依頼者が加入されていた保険に弁護士費用特約が付いていたわけではなく、また、増額分から弁護士費用を差し引いても十分に手元に残る形での解決となりました。
つまり、弁護士に依頼したことで賠償額が上がり、その恩恵が費用負担を上回って依頼者に還元されたのです。
「弁護士に頼むと費用がかかって、かえって損をするのではないか」という不安は、本件においては杞憂でした。

身体の負担も、移動の負担も、費用の負担も抑えながら、賠償水準は高い。
依頼者にとって、これ以上望むところの少ない着地であったと考えています。

本事例に学ぶこと
本件が伝えるのは、大きく三つのことです。

第一に、弁護士に依頼することは、遠方にお住まいの方にとっても現実的な選択肢だということです。
今日では、メールや電話を活用することで、依頼者が事務所に足を運ぶことなく手続を進められる場面が多くあります。
事故で怪我を負い、通院にも時間を取られているなかで、さらに弁護士事務所への往復まで重なれば、負担は相当なものになります。
距離を理由に相談をあきらめてしまうのは、あまりにもったいないことです。

第二に、賠償の水準は、誰が交渉するかによって変わり得るということです。
保険会社が当初提示してくる金額は、必ずしも裁判で認められるであろう水準を反映したものではありません。
弁護士が代理人として関与し、裁判基準に沿った賠償を根拠とともに求めることで、金額が大きく変わる場合があります。
提示された金額が妥当かどうか、ご自身で判断がつかないときこそ、専門家の目を通す価値があります。

第三に、費用の面です。
弁護士費用を心配して依頼をためらう方は少なくありませんが、本件のように、増額された分が費用を上回り、依頼者の手元に残る金額がかえって多くなるケースは決して珍しくありません。
また、ご自身やご家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、費用の負担を大きく軽減できる場合もあります。
まずは、ご加入の保険を確認してみることをお勧めします。

交通事故の被害に遭われ、遠方であること、費用のこと、手続の煩わしさなどから相談をためらっておられる方がいらっしゃいましたら、どうかその壁を理由にあきらめないでください。
グリーンリーフ法律事務所では、ご事情に応じた柔軟な進め方でご相談をお受けしております。
まずはお気軽にお声がけください。
私たちは、依頼者の負担をできる限り抑えながら、正当な賠償の実現に力を尽くしてまいります。

弁護士 時田 剛志