事故態様が争いになっている場合(過失)に必要な証拠を解説します②

事故が発生した際、特に「どのようにして事故が起きたのか」、いわゆる「事故態様」が争点となるケースは少なくありません。

例えば、信号の色はどちらが青だったのか、どちらの車両がどの程度の速度で走行していたのか、どちらが優先道路だったのかなど、事故の状況に関する当事者の言い分が食い違うことは珍しくありません。

このような場合、事故の真相を明らかにし、正当な権利を実現するためには、客観的な「証拠」に基づいて事故態様を正確に立証することが重要になります。

私たち弁護士は、ご依頼者様のお話を伺うとともに、様々な証拠を・分析し、事故の全体像を把握していきます。

本記事では、交通事故で事故態様が争点となった場合に、どのような証拠が重要となり、それらをどのように収集・検討していくのかについて、弁護士の視点から詳しく解説していきたいと思います。

本ページは、「事故態様が争いになっている場合(過失)に必要な証拠を解説します①」の続きです。未読の方は先に、①をご覧ください。

実況見分調書の読み方

実況見分調書の読み方

実況見分調書を入手できたとしても、その内容を鵜呑みにするのではなく、批判的に検討することが重要です。

特に注意すべき点としては、誰が立会人となって実況見分が行われたのか(例えば、一方当事者のみの立会いで作成されていないか)、実況見分が行われた日時(事故発生からどの程度時間が経過しているのか、事故発生時刻と同じ時間帯に行われたのか、夜間の事故であれば夜間に見分が行われたのか等)といった点です。

これらの状況によっては、実況見分調書の記載内容の信用性が左右されることもあります。

また、物損事故では詳細な実況見分調書が作成されないし、物件事故報告書では内容が乏しく事故態様の解明に十分でない場合もあります。

そのような場合には、当事者ご自身が事故直後に撮影した事故現場や車両の損傷状況を示す写真、あるいはご自身で作成した事故状況を示す図面などが、重要な証拠として提出されることがあります。

事故現場の写真は、言葉だけでは伝わりにくい現場の状況(道路の幅、カーブの状況、見通し、標識の有無など)を視覚的に把握するのに非常に役立ちます。

最近では、インターネット上の地図サービス(Googleマップのストリートビューなど)で事故現場の住所を検索することにより、現場の写真や映像を容易に入手できることが多くなっています。

これらの情報も活用しながら、多角的に現場の状況を把握することが、事故態様を正確に理解する上で有効です。

客観性の高い証拠「ドライブレコーダー」等の映像記録

客観性の高い証拠「ドライブレコーダー」等の映像記録

交通事故で一番の証拠になるといっても過言ではありません。

近年、交通事故の証拠として極めて重要な役割を果たすようになってきているのが、「ドライブレコーダー」の映像記録です。
ドライブレコーダーは、事故の瞬間やその前後の状況を映像と音声で記録するため、事故態様に関する客観的な事実を把握する上で非常に有用です。

特にトラックやタクシーなどの事業用車両には、現在ではほぼ全ての車両に搭載されていると言っても過言ではなく、一般の自家用車への普及も急速に進んでいます。

ドライブレコーダーの多くは、急ブレーキや衝突などの衝撃を感知すると、その時点から遡って一定時間と、その後の一定時間の映像を自動的に保存する仕組みになっています。

この記録は、事故の当事者の主観や記憶違いが入り込む余地のないもので、客観的な証拠の一つとして極めて高い価値を持っています。実際、ドライブレコーダーの記録が提出されることによって、それまで争いがあった事故態様に関する当事者間の認識が一致し、紛争が早期に解決することも少なくありません。

ただし、ドライブレコーダーの映像を利用する際には、いくつか注意すべき点もあります。
まず、カメラの取り付け位置によっては、運転席から見える実際の視界と異なる映像が記録されている可能性があることです。

例えば、カメラが低い位置に取り付けられていれば、運転者からは見えていたものが映っていなかったり、逆にカメラには映っていても運転者の死角に入っていたりする可能性があります。

また、広角レンズが使用されているドライブレコーダーの場合、映像に歪みが生じやすく、特に距離感や速度感が実際とは異なって見えることがあります。
そのため、映像が必ずしも現実を忠実に再現しているとは限らない点に留意が必要です。

したがって、ドライブレコーダーの映像だけで事故態様の全てを判断できるわけではなく、他の証拠、例えば前述の実況見分調書や車両の損傷状況、当事者の供述などと総合的に照らし合わせて評価することが重要になります。

ドライブレコーダーの映像を証拠として裁判所に提出する際には、動画ファイルそのものに加えて、事故のポイントとなる場面をコマ送りで静止画(写真)にしたものを書面で提出することも有効です。これにより、裁判官が映像の内容を把握しやすくなります。

ドライブレコーダーは、記録媒体(DVDやUSBメモリなど)で提出します。

それと、ドライブレコーダーには、速度が表示されるものもあります。実際の速度と一致するとはかぎりませんので、注意が必要です。

当事務所の事例として、依頼者は40kmしかだしていなかったところ、ドライブレコーダーに65kmと表示されており、不利になってしまったことがあります(バグであったことがわかり難を逃れましたが)。

その他の映像について

その他の映像について

ドライブレコーダー以外にも、街頭や店舗(特にコンビニエンスストアなど)に設置されている防犯カメラの映像が考えられます。

しかし、一般的には入手は困難です。
弁護士が依頼しても難しいことが多いです。たまに、保険会社が入手していることはあります。

ドライブレコーダーがなくても、再現映像や、実際に道路を走ってみるということが有効な場合もあります。
事案によって、弁護士が現場にいって撮影することもあります。

信号機の表示状況が争点となる場合の「信号機表示周期表」等

信号機の表示状況が争点となる場合の「信号機表示周期表」等

交差点での事故などで、信号機の表示(どちらが青信号で、どちらが赤信号だったかなど)が争点となる場合には、「信号機表示周期表」またはそれに関する捜査報告書などが証拠となります。

これは、当該交差点の信号機が、どのくらいの時間間隔で青→黄→赤と変わるのか、また、対向する信号機との関連(いわゆる「時差式信号」など)がどうなっているのかを示した資料です。

これらの資料は、所轄の警察署に保管されていることが多く、弁護士がその必要性を明らかにして、弁護士法23条の2に基づく弁護士照会を行ったり、民事訴訟の裁判所を通じて調査を依頼する「調査嘱託」(民事訴訟法186条)の申出をしたりすることによって、送付してもらえることがあります。
なお、信号機表示周期表は、刑事事件の記録に含まれていなくても、所轄警察署が独自に保有している場合もあります。

これにより、信号サイクルが明らかになるので、●交差点が赤のときに、●交差点は青であるから、●は青信号であった等、立証につながることがあります。

しかし、前提として、事故が、何時何分何秒に起きたかを正確に把握する必要があるでしょう。

事故現場の状況を伝える「現場写真」

事故現場の状況を伝える「現場写真」

事故現場の写真は、事故態様を具体的にイメージするために非常に有効な証拠です。
弁護士が裁判所に証拠として提出する際には、誰がいつどこで撮影した写真なのかを明確にするために、「証拠説明書」という書面に撮影者、撮影日時、撮影場所を記載します。

お怪我や後遺障害に関する重要な証拠「診療録(カルテ)」

お怪我や後遺障害に関する重要な証拠「診療録(カルテ)」

交通事故によってお怪我をされた場合、その傷害の内容や治療経過、あるいは後遺障害の有無や程度などが争点となることがあります。このような場合に極めて重要な証拠となるのが、病院で作成される「診療録」、いわゆるカルテです。

診療録には、受傷時の状態、検査結果、治療内容、医師の所見などが時系列で記録されており、事故と傷害との因果関係や、後遺障害の内容・程度を医学的に立証するための基礎資料となります。

そのため、これらの点が争いになる可能性がある場合には、できるだけ早期に、立証に必要となる診療録を収集し、証拠として提出することが望ましいと言えます。

診療録は、患者さんご本人(被害者であり、民事訴訟では原告となることが多いです)が、治療を受けた医療機関に直接開示を請求して入手することが可能です。

しかし、訴訟を提起した後になって、初めて診療経過の詳細が争点として顕在化することもあります。そのような場合には、原告・被告のいずれの当事者も、裁判所に対して、医療機関に診療録の送付を求める「文書送付嘱託」の申立てをすることができます。

当事者は、送付された診療録の中から、自らの主張を裏付けるために必要と考える部分を抜粋し、証拠として改めて裁判所に提出する(「書証の申出」と言います)ことになります。

まとめ

まとめ

ここまで、交通事故で事故態様が争点となった場合に重要となる様々な証拠について、その内容や収集方法、注意点などを解説してまいりました。
事故の態様は、過失割合を決定する上で最も重要な要素であり、それがひいては受け取れる賠償額にも大きく影響します。ご自身にとって納得のいく解決を得るためには、どのような証拠が存在し得るのかを把握し、それらを適切に収集・分析した上で、説得力のある主張・立証を行うことが不可欠です。
ぜひ一度、交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

交通事故を弁護士に依頼するメリット

交通事故を弁護士に依頼するメリット

過失については、意外と保険会社と争いになることがあります。ケガをしている方もいらっしゃるかと思います。そうすると、慰謝料や後遺障害でも過失が影響してきます。

ケガをしているケースでは弁護士に依頼するのとしないのでは、数十万〜事案によって数千万円の違いがでる可能性もあります(実際に当事務所でありました)。

弁護士に依頼をすることによって、保険会社との交渉や手続、裁判を代理で行うことができます。
また、弁護士特約に加入されている場合は、弁護士費用が原則として300万円まで保険ででます。

弁護士特約に加入している場合は、法律相談費用も特約ででますので、まずは相談ください。

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弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
交通事故においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
入院中でお悩みの方や、被害者のご家族の方に適切なアドバイスもできるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。