紛争の内容
ご依頼者様はバイクで走行中、対向車線から右折してきた自動車との衝突事故に遭われました。
この事故で顔面、膝などに重度の傷害を負い、治療後に顔面瘢痕(9級16号)、味覚障害(14級相当)、左膝疼痛(14級9号)の【併合9級】が後遺障害として認定されました。

保険会社との交渉において、賠償額の最大の争点となったのは、顔面瘢痕に起因する逸失利益(将来の収入減少分)でした。

保険会社は、外貌醜状は労働能力に影響がないとして逸失利益を認めようとしませんでした。

交渉・調停・訴訟等の経過
訴訟となりました。

当職は、被告が主張する「外貌醜状は原則として逸失利益を認めない」という原則論に対し、ご依頼者様の職業(人前で話す機会が多い職種や、外貌が重視される職業など)や精神的苦痛が、将来の就労意欲や昇進に実際に与える影響を詳細に立証しました。

特に、顔面の瘢痕が日常生活や対人関係に与える心理的な負担を具体的に示し、裁判所の過去の判例を参照しながら、本件において逸失利益を考慮すべき特段の事情があることを強く主張しました。

本事例の結末
当職が粘り強く主張し、顔面瘢痕による逸失利益を裏付ける証拠と法的根拠を提示し続けた結果、裁判所はその主張の一部を認めました。
その結果、顔面瘢痕を含む併合9級に基づく逸失利益が考慮され、最終的に和解し、約3000万円(既払金込み、労災からの受給込み)という高額な賠償額を得ることができました。

本事例に学ぶこと
後遺障害に顔面瘢痕などの外貌醜状が含まれる場合、逸失利益の算定で争いになることは必至です。

保険会社側は原則を盾に低い賠償額を提示してきますが、裁判基準においても、個別の事情(職業、醜状の程度、精神的苦痛など)によっては逸失利益が認められるケースはあります。

この争点を乗り越え、適正な賠償を得るためには、顔面瘢痕が生活や仕事に与える影響を具体的に立証できる弁護士への依頼が不可欠です。

弁護士 申 景秀