
さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故集中チームの弁護士が執筆しています。交通事故における重要ポイントについて、実務上の知識を交えて詳しく解説します。
交通事故に遭って病院に行くと、窓口で「交通事故の場合は健康保険を使えません」「自由診療になります」と言われることがあります。 「保険料を払っているのになぜ使えないのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。 また、「自分にも少し過失(不注意)がある事故」の場合、健康保険を使わないと、最終的に受け取れる賠償金が数十万円も減ってしまうリスクがあることをご存じでしょうか。
今回は、交通事故治療における健康保険の利用について、その仕組みやメリット、病院での対応方法について、具体的な対話形式を交えて交通事故チームの弁護士が分かりやすく解説します。
「交通事故では保険証が使えない」と言われたら?

まずは、実際によくある相談事例をもとに、弁護士と相談者(被害者)の対話を見てみましょう。
相談者(田中さん・仮名): 先生、相談があります。先日、信号のない交差点で車同士の出会い頭の事故に遭いました。私にも少し前方不注意があったようで、過失割合が「私2:相手8」くらいになりそうなんです。
弁護士: なるほど、お怪我の具合はいかがですか?
田中さん: 首と腰を痛めて整形外科に通っています。ところが、初診のときに受付で保険証を出したら、「交通事故では健康保険は使えません。自由診療になります」と言われてしまって…。相手の保険会社が払ってくれるからいいかと思ってそのままにしているんですが、これで良かったんでしょうか?
弁護士: 田中さん、それは非常に重要なポイントです。結論から言うと、交通事故でも健康保険は使えますし、田中さんのようにご自身に過失がある場合は、むしろ使ったほうが良いです。そのまま自由診療を続けると、最終的に田中さんの手元に残る賠償金が減ってしまう可能性がありますよ。
田中さん: えっ、どういうことですか? 治療費は相手の保険会社が払っているのに、私が損をするんですか?
弁護士: はい。「過失相殺」といって、田中さんの過失分(2割)は、発生した損害全体から差し引かれます。自由診療は治療費が非常に高額になるため、その分、差し引かれる金額も大きくなってしまうのです。 病院が「使えない」と言うのは、実は病院側の都合や誤解であることが多いのです。詳しく解説していきましょう。
1. 交通事故でも健康保険は利用可能です

まず、大前提として「交通事故の治療に健康保険は使える」というのが法的な正解です。
健康保険法や国民健康保険法には、第三者の行為(交通事故など)によって生じたケガについて保険給付を行った場合、保険者(健保組合など)が被害者の損害賠償請求権を取得する旨の規定があります(健康保険法57条、国民健康保険法64条)。 これは法律自体が、交通事故で健康保険を利用することを当然の前提としていることを意味します。
なぜ病院は「使えない」と言うのか?
一部の医療機関では、以下のような理由から健康保険の利用を断るケースがあります。
- 治療の制限: 健康保険を使うと、使用できる薬剤の種類や量、検査内容に制限がかかるため、自由な治療がしにくいと考える医師がいます。
- 収益の問題: 後述しますが、自由診療の方が病院にとっての診療報酬単価が高く設定できるため、病院の利益が多くなる傾向があります。
- 手続きの煩雑さ: 健康保険組合への請求手続きなどが面倒だと敬遠されることがあります。
しかし、旧厚生省の通達(昭和43年)でも、「自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変わりなく、保険給付の対象となる」と明記されており、医療機関に対して誤解のないよう周知が求められています。 したがって、病院の窓口で断られたとしても、患者側が強く希望し、必要な手続きを行えば健康保険を利用することは可能です。
2. 「自由診療」と「健康保険」でお金はどう変わる?

なぜ、被害者にとって健康保険の利用が重要なのでしょうか。その最大の理由は「治療費の単価」の違いです。
- 健康保険の場合: 診療報酬点数1点あたり10円と決まっています。
- 自由診療の場合: 単価を自由に設定できます。交通事故の場合、多くの医療機関で1点あたり20円(健康保険の2倍)や、それ以上に設定されることが一般的です。
つまり、全く同じ治療を受けても、自由診療だと治療費が2倍以上に膨れ上がるのです。 加害者が100%悪い(追突事故など)場合は、加害者側の保険会社が全額払うため、被害者はあまり気にする必要がないかもしれません。しかし、被害者にも過失がある場合は、この差が致命的になります。
具体的な計算例(過失20%の場合)
田中さん: 先生、自由診療と健康保険でどう金額が変わるのか、結論を教えてください。
弁護士: 承知いたしました。まず、田中さんの今回の事故の損害(慰謝料や休業損害)が合計で200万円だったと仮定します。ここに治療費が加わります。
【ケースA:健康保険を利用した場合】
健康保険を使うと、治療費単価が安くなるため、治療費の総額が20万円で済んだとします。
- 損害の合計額:220万円(慰謝料等200万 + 治療費20万)
- 過失相殺(30%引き):154万円(220万 × 0.7)
- 相手が先に払った治療費を差し引く:154万円 - 20万円
- 田中さんの手元に残る金額: 134万円
【ケースB:自由診療を利用した場合】
自由診療は単価が高いため、全く同じ内容の治療でも治療費が40万円(健康保険の2倍)になったとします。
- 損害の合計額:240万円(慰謝料等200万 + 治療費40万)
- 過失相殺(30%引き):168万円(240万 × 0.7)
- 相手が先に払った治療費を差し引く:168万円 - 40万円
- 田中さんの手元に残る金額: 128万円
田中さん: 本当だ! 全く同じ治療を受けているのに、健康保険を使ったAさんの方が、自由診療のBさんより6万円も多くお金を受け取れるんですね。
弁護士: その通りです。自由診療は治療費が高いため、その分「すでに相手から受け取った賠償金(既払金)」として差し引かれる金額も大きくなってしまうのです。 つまり、高い治療費が田中さんの最終的な取り分を削っている状態と言えます。
結果: 「自分は被害者なのに、なぜ自分の保険を使わなければならないのか」と不満に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ご自身の受け取る賠償金を最大化するためには、健康保険の利用が賢い選択のときがあります。
3. 健康保険を利用するための手続き

交通事故で健康保険を利用するためには、加入している健康保険組合(社保)や市町村(国保)に、「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります。
- 病院に伝える: 「交通事故ですが、健康保険を使って治療を受けたい」と明確に伝えます。
- 健康保険組合や国保に連絡する: お持ちの保険証に記載されている連絡先に電話し、「交通事故で保険証を使いたい」と伝えます。
- 書類の提出: 「第三者行為による傷病届」「事故発生状況報告書」「念書」などの必要書類を作成し、提出します。
なお、通勤中や業務中の交通事故の場合は「労災保険」が優先されるため、健康保険は使えませんのでご注意ください(その場合は労災を利用するメリットがあります)。
4. 正当な賠償金を得るために重要な「慰謝料の基準」

健康保険の利用で治療費を抑えることと同時に重要なのが、「慰謝料」などの賠償金を正当な基準で計算することです。
交通事故の慰謝料計算には「3つの基準」があります。
- 自賠責基準: 法律で定められた最低限の補償。最も金額が低い。
- 任意保険基準: 各保険会社が独自に設定している基準。自賠責よりは高いが、弁護士基準には及びません。
- 弁護士基準(裁判基準): 過去の裁判例をもとに設定された基準。3つの基準の中で最も高額であり、法的に認められる正当な賠償額です。
保険会社が被害者本人に提示してくる金額は、通常「任意保険基準」か、それに近い低い金額です。 例えば、後遺障害等級12級が認定された場合、自賠責基準などの提示額よりも、弁護士基準(290万円程度)の方が200万円近く高くなることもあります。
健康保険を使って治療費の控除額を減らし、さらに弁護士基準で慰謝料を計算することで、最終的な受取額を最大化することができます。
5. 交通事故を弁護士に依頼するメリット

交通事故の被害に遭われた場合、弁護士に依頼することで多くのメリットがあります。
① 賠償金の増額 前述の通り、弁護士基準での交渉により、慰謝料や逸失利益が大幅に増額される可能性があります。特に過失割合が争いになるケースや、後遺障害が残るケースでは、数百万円から数千万円の違いが出ることもあります。
② 保険会社との対応を任せられる 治療中に保険会社から「そろそろ治療費を打ち切ります」「健康保険を使ってください」などと言われ、対応にストレスを感じる方は少なくありません。弁護士に依頼すれば、窓口はすべて弁護士になり、治療に専念することができます。また、不当な治療費打ち切りに対しても、弁護士が延長の交渉を行います。
③ 後遺障害等級認定のサポート 後遺障害の等級認定は、書面審査が中心です。医師の作成する後遺障害診断書の内容が不十分だと、本来認定されるべき等級が認められないことがあります。弁護士は、適切な等級認定を受けるための診断書のチェックや、医師への依頼事項のアドバイスを行います。
弁護士特約とは?弁護士費用がかからない?

「弁護士に頼むと費用が高いのでは?」と心配される方も多いでしょう。 そこで確認していただきたいのが【弁護士費用特約】です。
これは、ご自身が加入している自動車保険、火災保険、個人賠償責任保険等に付帯している特約です。 弁護士費用特約が付いている場合は、交通事故についての保険会社との交渉や損害賠償のために弁護士を依頼する費用が、加入している保険会社から支払われるものです。
- 費用負担なし: 通常300万円まで補償されます。多くのケースでは300万円の範囲内で、自己負担一切なしでおさまります。
- 等級への影響なし: 弁護士費用特約を使っても、保険の等級は下がらず、翌年の保険料が上がることもありません。
- 過失があっても使える: ご自身に過失がある場合や、もらい事故(過失0)の場合でも利用できます。
- 家族の保険も確認を: 被害者ご本人だけでなく、ご家族の加入している保険の特約が使える場合もあります。
まずは、ご自身やご家族の入られている保険証券を確認してみてください。
ご相談・ご質問

交通事故で「健康保険の利用」や「過失割合」、「賠償金の提示額」にお悩みの方は、決して一人で判断せず、専門家にご相談ください。
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 交通事故においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
入院中でお悩みの方や、被害者のご家族の方に適切なアドバイスもできるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。 LINEでの無料相談も行っています。友達登録して、お気軽にお問い合わせください。

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。















