紛争の内容
Aさんは自転車で直進中、側方から進行してきた自動車に衝突されました。この事故により被害者は負傷し、通院治療を余儀なくされました。

怪我の治療が一段落した際、相手方の任意保険会社から示談金の提示がありましたが、その内容は「自賠責保険基準」に基づいた極めて低額なものでした。

被害者は、事故による身体的・精神的苦痛に対して提示額が不十分であると感じ、また保険会社の事務的な対応にも強い不満を抱いたため、法的知識を持つ弁護士に解決を依頼しました。

交渉・調停・訴訟等の経過
弁護士は受任後、直ちに保険会社から提示されていた示談内容の精査を行いました。

保険会社が提示した金額は、法律で定められた最低限の補償である「自賠責基準」でした。

弁護士は、過去の裁判例に基づいたより高額な「裁判所基準(弁護士基準)」を適用すべきであると主張しました。

当初、保険会社は自社の規定を理由に増額を拒んでいましたが、弁護士が訴訟も辞さない構えで交渉を継続した結果、徐々に譲歩の姿勢を見せました。

本事例の結末
交渉の結果、最終的に保険会社は当初の提示額から15万円の増額を認めました。

これにより、Aさんは裁判所基準に近い形での賠償金(51万円)を受け取ることができ、納得感を持って示談書を交わすことができました。
早期の解決を希望していた被害者の意向も踏まえ、訴訟に至ることなく、スピード感を持った合意に至った事例です。

本事例に学ぶこと
①賠償基準には「3つの基準」がある
交通事故の賠償金には、低い順に「自賠責基準」・「任意保険会社基準」・「裁判所基準」があります。
保険会社は通常、自社基準や自賠責基準で提示してきますが、弁護士が介入しない限り、最も高い「裁判所基準」が適用されることは稀です。

②金額の多寡に関わらず専門家に相談する意義
「増額分が15万円なら弁護士費用で赤字になるのでは?」と思われがちですが、自動車保険などの「弁護士費用特約」を利用していれば、自己負担なしで依頼できるケースがほとんどです。少額の増額であっても、手元に残る金額は確実に増え、何より精神的な負担が軽減されます。

③納得できない場合は「合意」を急がない
一度示談書にサインをしてしまうと、後から内容を覆すことは非常に困難です。
保険会社の提示額や対応に少しでも違和感を覚えたら、署名する前に専門家の意見を仰ぐことが、正当な権利を守るための第一歩となります。

弁護士 安田 伸一朗