
本記事は、さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故集中チームの弁護士が執筆しています。
交通事故で怪我を負った場合、治療費・慰謝料・休業損害といった項目はよく知られています。しかし、子供や学生が被害者になった場合に特有の損害項目——学費・塾代・通学費・保育料・家族の監護料——は見落とされることが非常に多いです。
「入院中に通えなくなった学校の授業料は?」「事故のせいで1年留年した大学の学費は?」「子供が入院している間の保育料は?」「学校に付き添った親の交通費は?」——これらはすべて交通事故の損害賠償として加害者に請求できる可能性があります。
本記事では、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(通称・赤い本)2026年版」に掲載された裁判例を引用しながら、こうした学習費・保育費・通学付添費等の損害項目を詳しく解説します。
学習費・保育費・通学付添費等の法的根拠と認定基準

学習費・保育費・通学付添費等は、治療費や将来介護費と同じく「積極損害」(被害者が実際に支出を余儀なくされた費用)として損害賠償の対象になります。
| 【原則】 「被害者の被害の程度、内容、子供の年齢、家庭の状況を具体的に検討し、 学習、通学付添の必要性が認められれば、妥当な範囲で認める。」 (赤い本2026年版 第1・6 学生・生徒・幼児等の学習費、保育費、通学付添費等) |
「妥当な範囲で認める」とある通り、機械的に認められるのではなく、事故との因果関係・必要性・相当性を具体的に立証する必要があります。これが実務上のポイントです。
以下、8つのカテゴリ別に裁判例を紹介します。
進級遅れの場合の授業料・補習費

入院や長期通院が原因で留年・休学を余儀なくされた場合、余分にかかった授業料・補習費・生活費等が損害として認められます。
| 【裁判例①】女子高校生、入院のため1年休学 退院後1年前後にわたる補習費47万円余を認めた。 (横浜地判昭57.1.28 交民15・1・135) |
| 【裁判例②】事故のため1年留年した大学生学費97万円余及び1年分のアパート賃借料55万円を認めた (岡山地判平9.5.29) |
| 【裁判例③】左股関節の機能障害(12級7号)・右膝痛(14級9号)・歯牙障害(10級4号)・外貌醜状(14級10号、併合9級)の大学生(男・事故時33歳) 秋学期の欠席はやむを得ないとし、支払った大学授業料83万円余を認めた。 (東京地判平22.10.13 交民43・5・1287) |
| 【裁判例④】死亡した被害者(男・19歳)、入学予定だった大学に支払済みの学費 入学予定だった大学に支払済みの学費73万円のうち入学金に相当する25万円について返還されないことから 本件事故と相当因果関係ある損害と認めた。 (東京地判平24.11.28 交民45・6・1388) |
| 【裁判例⑤】事故による長期間の入院のため大学の授業が始まるのに合わせて 大学近くに借りたアパートの賃貸借契約を余儀なくされた大学4年生(男・固定時23歳) 礼金4万円・前払家賃5万円余等の合計10万円余を認めた。 (大阪地判平30.4.16 自保ジ2028・95) |
| 【裁判例⑥】事故直後にピアノ演奏の卒業試験が予定されていたが 頸部痛・左手麻痺により練習ができず卒業を1年間見送った音大4年生(女) 1年間の留年期間中の授業料・実験実習費・諸会費等合計120万円余と、 実日数32日間の通学費用(名古屋・京都間)35万円余を認めた。 (名古屋地判平15.5.30 交民36・3・815) |
家庭教師・塾の費用等を損害と認めた事例

事故による入院・通院で学習が遅れた場合、学校以外の補習(家庭教師・塾)の費用も損害として認められる場合があります。
| 【裁判例①】醜状瘢痕(7級12号)・高次脳機能障害(5級2号)、併合3級の小学生(女・固定時13歳) 退院後、通学を再開したが、傷害・入院及び後遺障害のため、学校の勉強に充分ついていくことが できなくなった場合に、退院直後から4年6か月間、家庭教師謝礼、及び特別に使用しなければ ならなくなった教科書等の購入費合計272万円余を認めた。 (大阪高判平19.4.26 判時1988・16) |
| 【裁判例②】事故により約2か月入院し中学校を欠席した中学3年生(女・事故時14歳) 高校受験前約5か月分の補習塾費用につき、入院中12日間は院内学級での学習があり 遅れることなく進むことができたことを考慮しても、事故により中学校における学習に 支障が生じたことが推認されるとして、入院による学習の遅れを取り戻す目的での通塾の 必要性を認め、補習塾費用の3分の1である10万円余を認めた。 (東京地判平30.9.14 自保ジ2035・68) |
無駄になった支払済み教育費・通学定期代等

事故によって学校に行けなくなった期間の既払授業料・通学定期代・資格試験費用等は、「無駄になった費用」として損害に含まれます。
| 【裁判例①】大学生(男・18歳)の死亡事案 授業料及び教材費49万円余・通学定期代3万円余を認めた。 (東京地判平6.9.29 交民27・5・1329) |
| 【裁判例②】死亡した男児(6歳) 小学校の入学金・整備拡充費及び寄附金・制服その他備品購入費合計100万円を認めた。 (東京地判平6.10.6 交民27・5・1378) |
| 【裁判例③】被害者(男・22歳)の傷害事案、普通免許を取得するため自動車教習所に通っていたが事故のため修了できなかった場合 教習所代32万円全額を認めた。 (東京高判平14.6.18 交民35・3・631) |
| 【裁判例④】大学生(男・22歳)の傷害事案、司法書士の資格を得るための専門学校の学費全額 47万円余を認めた。 (東京高判平14.7.30 自保ジ1455・2) |
| 【裁判例⑤】大学1年生(男・20歳)の死亡事案 入学金は認められなかったが、大学入学の2週間後の事故であったことから前期の授業料等60万円を認めた。 (名古屋地判平17.11.30 交民38・6・1380) |
| 【裁判例⑥】胸郭出口症候群を発症した美大生(女・固定時25歳・12級10号) 入通院治療のため留年した2年分の授業料208万円余を認めた。 (東京地判平16.12.21 交民37・6・1695) |
| 【裁判例⑦】大学3年生(男)、半年卒業が延びた結果大学に支払うこととなった学費増額分 31万円余を認めた。 (千葉地判平24.8.28 自保ジ1882・137) |
| 【裁判例⑧】薬学部生(男・事故時19歳)、 事故による入院治療のため1年留年となったことから、 既払の後期授業料89万円余及び事故前に進級に必要な単位を取得済みで受講の必要がなく 休学した翌年前期の在籍料6万円余を認めた。 (神戸地判平30.3.29 自保ジ2027・103) |
保育料を損害と認めた事例

子供を持つ親が被害者になって入院した場合、保育所・幼稚園への預け入れが必要になることがあります。この保育料も損害として認められます。
| 【裁判例①】3歳女子の付添看護のため、母親が2歳と0歳の乳幼児2人を常時面倒を見ることが困難となり 保育所に預けざるを得なくなった場合に、保育園・幼稚園に入園させることが一般に見受けられる 満4歳になるまでの保育料166万円余を認めた。 (山口地判令4.3.19 判タ793・217) |
| 【裁判例②】外傷性クモ膜下出血等を受傷した7歳女子の付添看護のため、 生後間もない子の緊急一時保育を32日間利用した利用料4万円余を認めた。 (東京地判平28.2.25 交民49・1・255) |
通学付添費等を損害と認めた事例

事故による怪我の影響で、子供が一人で通学できなくなった場合、親等が付き添うための交通費・宿泊費等が損害として認められます。
| 【裁判例①】脳挫傷で5級の高校生(男・17歳) 1年間留年した学費約13万円と、1年分(183日)の通学付添費日額3,000円(計54万9,000円)を認めた。 (横浜地判平11.2.24 自保ジ1330・3) |
| 【裁判例②】右足背部皮膚剥脱、左下腿挫滅創、左足デグロービングの傷害を負った左足瘢痕(14級5号)の小学生(男・固定時8歳) 退院後車いすで登校した61日間について母親の通学付添費日額1,000円、合計6万円余を認めた。 (東京高判平26.12.24 自保ジ1942・30) |
| 【裁判例③】両下肢麻痺及び神経因性膀胱直腸障害等(1級1号)で入浴や夜間のバルーン設置・摘便の介助を要する小学生(女・事故時10歳) 介助のために修学旅行に同行した母の交通費・宿泊費2万8,618円余を認めた。 (大阪地判令4.7.26 交民55・4・986) |
| 【裁判例④】右脛骨(けいこつ)・腓骨骨折等の傷害を負った右第1・4・5趾知覚異常・感覚障害等(14級9号)の高校生(男・事故時16歳) 通学付添費日額3,000円、50日間のほか、レンタカー代・駐車場代及びガソリン代を認めた。 (名古屋地判令6.3.6 交民57・2・311) |
| 【裁判例⑤】右上腕骨近位骨折の小学生(男・事故時7歳) 年齢及び受傷状況からランドセルが背負えなかった状況等に鑑み、 通学付添費日額2,000円・35日分を認めた。 (東京地判令5.10.6 交民56・5・1333) |
| 【裁判例⑥】高次脳機能障害(自賠責非該当、労働能力喪失率20%認定)の高校生(女・事故時15歳) 自転車通学が事故によって自転車が使えなくなり、バス通学に変更したこともやむを得ないとして、 高校卒業までのバスの定期代17万円余を認めた。 (名古屋地判平30.3.20 交民51・2・330) |
通学のため賃借したマンションの賃料等を認めた事例
| 【裁判例①】受傷により自宅からの通学が困難となった大学生(20歳) 大学近くに借りたマンションの卒業まで2年分の賃料・保証金等140万円余を認めた。 (神戸地判平7.2.22 交民28・1・241) |
家族の監護料等を損害と認めた事例

被害者の親・配偶者等が、被害者の入院・通院に伴って子供の監護を他者に依頼せざるを得なくなった場合、その監護費用も損害として認められることがあります。
| 【裁判例①】四肢完全麻痺・遷延性無呼吸の男児(4歳) 母親が付添いをしなければならない場合に、祖母によるその弟(2歳)の監護の必要性を認め、 弟が小学校に入学するまでの監護費として日額3,200円を認めた。 (大阪地判平5.2.22 交民26・1・211) |
| 【裁判例②】受傷のため、被害者が、痴呆状態の母親の介護を自ら行うことができない場合に 母親の施設介護費48万円余を認めた。 (横浜地判平5.9.2 交民26・5・1151) |
| 【裁判例③】主婦が入院したため、小学生の娘の養育・監護を両親に依頼せざるを得なくなった場合 休業480日のうち387日分、日額3,000円、合計112万8,000円を認めた。 (仙台地判平19.2.9 自保ジ1740・19) |
| 【裁判例④】妻が病気入院中の被害者の父母による子の監護につき、事故当時10歳の子が 小学校に行っている間は手がかからず、必要なのは夜間や休日に過ぎないとして、 交通費込みで泊まり4,000円・通い2,000円、合計53万円を認めるとともに、 家政婦代として、平日1時間当たり1,200円・休日1時間当たり1,500円・交通費500円、 合計294万円余を認めた。 (名古屋地判平20.12.10 交民43・6・1601) |
| 【裁判例⑤】透析を受ける夫を自宅で介護している脊柱変形(11級7号)の家事従事者(女・事故時77歳)が入院し、 入院期間中、夫を自宅で介護することが不可能なため夫を施設に入所させた場合に、 費用としても著しく高額であるともいえないことから、夫の施設入所期間中の休業損害に代えて、 施設入所費62日分、合計61万円余を認めたほか、ベッドレンタル費用1万8,000円を認めた。 (大阪地判平27.3.3 交民48・2・279) |
復学のために要した費用

| 【裁判例①】受傷した医大生、復学について大学と話し合いをするために要した交通費10万5,000円 (本人分6万3,000円及び父母いずれか1人分の4万2,000円の合計)を認めた。 (東京地判平12.10.4 交民33・5・1603) |
実務上のポイント:どうすれば認めてもらえるか

① 事故との因果関係の立証
「事故がなければこの費用は発生しなかった」という因果関係の立証が最重要です。入院期間・通院状況・後遺障害の程度と、学習費等の発生時期・金額を丁寧に対応させることが必要です。
② 「必要性」と「相当性」の両方を主張する
裁判例④(塾代)のように、3分の1しか認められなかった事例もあります。必要な費用であること(必要性)に加え、金額が過大でないこと(相当性)も合わせて主張・立証することが求められます。
③ 記録・領収書を保存しておく
学費・塾代・定期代・保育料の領収書、家庭教師の契約書、監護を依頼した記録等を保存しておくことが重要です。事後的に請求しようとしても証拠がなければ認めてもらえないことがあります。
④ 示談前に全項目を洗い出す
示談後に「学費の損害を請求し忘れた」と気づいても、原則として後から請求することはできません。示談前に弁護士と全損害項目を洗い出すことが重要です。
まとめ:損害項目一覧

| 【子供・学生が被害者の場合に請求できる主な損害項目】 ① 進級遅れによる授業料・補習費・アパート代 ② 家庭教師・塾の費用 ③ 無駄になった既払授業料・通学定期代・資格試験費用 ④ 保育料(親が入院中に子供を保育所に預けた費用) ⑤ 通学付添費(親等が付き添う際の交通費・宿泊費) ⑥ 通学のため賃借したマンション等の賃料 ⑦ 家族の監護料(被害者が監護できなくなった家族の世話費用) ⑧ 復学のために要した費用 ※いずれも事故との因果関係・必要性・相当性の立証が必要 |
「こんな費用も請求できるのか」と思われた方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。示談前の相談が、受取額を大きく変えることがあります。
弁護士に相談すべき理由

保険会社との示談交渉では、治療費・慰謝料・逸失利益という「基本三項目」以外の損害は、被害者側が積極的に主張しなければ提示されないことが多いのが実態です。学費・保育料・通学付添費等は、弁護士が介入して初めて適正に請求される損害項目の代表例です。
また、弁護士基準(裁判基準)を用いることで、慰謝料・逸失利益のベース金額自体も大きく変わります。「弁護士に頼む費用が心配」という方は、弁護士費用特約のご確認をお勧めします。
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- 利用しても翌年の保険料は上がりません
- 自分の保険以外(同居家族の保険・火災保険等)でも使える場合があります
- 子供・学生が被害者の場合でも利用できます
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所について

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、さいたま市大宮区に拠点を置く、設立35年以上の歴史を持つ法律事務所です。埼玉県内トップクラスの実績を誇り、交通事故専門チームを擁して多くの被害者の方をサポートしてきました。
学費・保育料・通学付添費を含む損害賠償請求に関するご相談は初回無料で承っております。
- 所在地:埼玉県さいたま市大宮区
- 対応エリア:埼玉県全域・首都圏
- 初回相談:無料
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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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この記事を書いた弁護士:弁護士 申 景秀
交通事故
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属。
獨協大学法科大学院を卒業し、司法試験を70番台という高順位で合格。札幌での司法修習を経て、現在は交通事故案件を中心に多数の損害賠償請求に対応している。後遺障害等級認定や保険会社との示談交渉を含む実務に精通し、緻密な法的思考に基づいた立証に注力。被害者の適正な賠償実現のため、専門知識を活かした迅速な解決を追求している。














