紛争の内容
事故が起きたのは、信号機のない交差点でした。
依頼者が車を走らせていたところ、右方から一台の車が飛び出してきて、接触したのです。
いわゆる出会い頭の事故でした。
この事故により、依頼者はいわゆるむち打ち、すなわち頸椎捻挫の症状に悩まされることになりました。
むち打ちは、外見からは分かりにくい一方で、首や肩の痛み、しびれ、頭痛などが長く続くことがあり、日常生活にも仕事にも影を落とします。
依頼者も、およそ四か月近くにわたって通院を続けなければなりませんでした。
このような事案には、被害者の方が見落としがちな難しさがいくつも潜んでいます。
第一に、信号機のない交差点での出会い頭事故は、双方が走行しているという性質上、被害者の側にも一定の過失が認められるのが通常だということです。
相手が飛び出してきたのだから自分に責任はないはずだ、と感じられるお気持ちはもっともですが、法的にはそう単純にはいきません。
第二に、むち打ちは症状が目に見えにくいため、賠償の場面で軽く扱われがちだということです。
そして第三に、治療のために仕事を休めば収入が減りますが、その補償をどこからどのように受けるべきかを、ご自身で見極めるのは容易ではありません。
こうした状況のなか、依頼者は当事務所に相談を寄せられました。
交渉・調停・訴訟等の経過
当職がまず依頼者にお伝えしたのは、労災保険の申請という選択肢でした。
本件は業務あるいは通勤の途上で生じた事故であり、労災保険を利用できる事案だったのです。
交通事故に遭われた方の多くは、加害者側の任意保険会社に対応してもらうものと考えておられます。
しかし、労災が使える事案であれば、労災保険から療養に関する給付や休業補償給付を受けることができます。
これは、単に窓口が増えるという話ではありません。
労災保険を利用すれば、治療費の負担を気にせず必要な治療を続けやすくなり、また、休業中の収入についても一定の補償を確保できます。
相手方保険会社の判断に治療の継続を左右されにくくなるという意味でも、被害者にとって大きな支えとなるのです。
当職の助言を受けて依頼者は労災の申請を行い、休業補償給付などを受け取ることができました。
そのうえで当職は、加害者側に対する損害賠償の交渉に臨みました。
ここで重視したのが、慰謝料の算定基準です。
交通事故の慰謝料には、自賠責保険の基準、保険会社が独自に用いる基準、そして過去の裁判例の蓄積に基づく裁判基準という三つの水準があり、同じ通院期間であっても、どの基準によるかで金額は大きく変わります。
むち打ちの事案では、症状が目に見えにくいことを理由に低い水準を提示されることも少なくありません。
当職は、通院の経過や症状が依頼者の生活に与えた影響を丁寧に整理したうえで、裁判基準に基づく慰謝料を求めました。
休業損害についても、注意を要する点がありました。
労災保険から休業補償給付を受けている場合、その分が損害から差し引かれることになりますが、労災でカバーされない部分が残ることがあります。
当職は、その労災の給付では埋められない部分を、加害者側への請求としてきちんと積み上げていきました。
労災と賠償請求は、どちらか一方を選ぶものではなく、両者を適切に組み合わせることで、被害者の受けられる補償を最大化できるのです。
もっとも、本件では過失相殺という現実にも向き合う必要がありました。
信号機のない交差点での出会い頭事故という性質上、依頼者の側にも二割の過失が認められることとなり、賠償額はその分減額されることになります。
当職は、この点について依頼者に率直にご説明し、見通しを共有したうえで交渉を進めました。
本事例の結末
こうした交渉の結果、依頼者は、過失相殺による二割の減額を経てもなお、およそ六〇万円の賠償を受け取る形で示談を成立させることができました。
これに加えて、労災保険からの給付も受けておられます。
賠償額そのものは、決して大きな数字ではないかもしれません。
しかし本件で意味があったのは、受けられるはずの補償を、取りこぼすことなく確保できたという点です。
労災保険を活用したことで治療と休業中の生活が支えられ、賠償交渉では裁判基準に基づく水準を確保し、労災でカバーされない部分もきちんと請求する。
一つひとつは地味な作業ですが、それらを積み重ねた結果として、依頼者は納得のいく形でこの一件に区切りをつけることができました。
本事例に学ぶこと
本件から学んでいただきたいことの第一は、労災保険という制度の存在です。仕事中や通勤途中の交通事故であれば、労災保険を利用できます。
相手方の保険会社に任せておけばよいと考え、労災の申請という発想自体をお持ちでない方は、実は少なくありません。
しかし労災を使うことで、治療を続けやすくなり、休業中の収入についても補償を得られます。
使える制度を知らないまま手続を終えてしまうことは、本来受けられたはずの補償を手放してしまうことにほかなりません。
第二に、むち打ちのように症状が外から見えにくい怪我であっても、その苦痛は正当に評価されるべきものだということです。
慰謝料には複数の基準があり、弁護士が関与することで裁判基準に基づく賠償を求めていける場合が多くあります。
通院期間が数か月程度だからと軽く考えず、適正な水準を確認してみる価値は十分にあります。
第三に、複数の制度を組み合わせる視点の重要性です。
労災保険からの給付と加害者への損害賠償請求は、それぞれ別の制度であり、重複する部分は調整されますが、労災ではカバーされない部分が残ることがあります。
その残された部分をきちんと請求できるかどうかで、最終的に手元に残る金額は変わってきます。
そして最後に、過失相殺という現実についてです。
信号機のない交差点での事故では、被害者の側にも過失が認められるのが一般的です。
それは残念なことではありますが、そうした条件のなかでも、受け取れる補償を最大限に確保していくことはできます。
交通事故に遭われ、どこにどう請求すればよいのか分からずお困りの方は、どうか一人で判断なさらないでください。
使える制度を知り、適切な基準で交渉するだけで、結果は変わり得ます。
まずは一度、グリーンリーフ法律事務所にご相談ください。
私たちは、皆様が受けられるはずの補償を取りこぼすことのないよう、力を尽くしてまいります。














