【弁護士が解説】交通事故の休業損害(自営業・個人事業主編)確定申告と固定経費の考え方

さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故集中チームの弁護士が執筆しています。交通事故における「休業損害」の重要ポイントについて、実務上の知識を交えて詳しく解説します。

交通事故で怪我を負い、仕事を休まざるを得なくなったとき、自営業や個人事業主の方が直面するのは「自分が動かなければ売上が止まってしまう」という切実な不安です 。会社員のように給与明細で減収が証明しづらいため、保険会社との交渉で最も難航しやすいのがこの分野です。

加害者側の保険会社は、確定申告書の所得額だけを見て低い金額を提示してくることが多々ありますが、適切な知識があれば、より実態に即した正当な賠償を受けられる可能性があります。

本記事では、さいたま市大宮区にある、埼玉県内でトップクラスの弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故集中チームが、自営業者の休業損害における計算ルールを解説します。

会社員の休業損害の計算方法と「基礎収入」

会社員の休業損害の計算方法と「基礎収入」

休業損害の基本的な計算式は、以下の通りです。

休業損害 = 1日あたりの基礎収入 × 休業日数

会社員の場合、この「1日あたりの基礎収入」を算出する際、基本的には事故前直近3ヶ月間の総支給額を、その期間の稼働日数で除して計算します。

では、自営業の場合は、どうでしょうか。

1. 自営業者の休業損害の計算式

1. 自営業者の休業損害の計算式

自営業(事業所得者)の休業損害は、原則として以下の計算式で算出します。

1日あたりの基礎収入 = (事故前年の所得金額 + 固定経費) ÷ 365日

ここで最大のポイントは、単なる「所得(利益)」だけでなく、「固定経費」を加算できる点にあります。

2. 「固定経費」を加算できる理由

2. 「固定経費」を加算できる理由

自営業者の場合、仕事を休んでいる間も、事業を維持するために支払わなければならない経費が発生します。これらは事故がなければ売上の中から支払えていたはずのものであり、休業中も出費だけが続くため、損害として認められます。

具体的に加算が認められやすい固定経費には、以下のようなものがあります。

  • 店舗や事務所の地代家賃
  • 租税公課(事業に関連するもの)
  • 従業員の給料
  • 減価償却費
  • 水道光熱費や通信費
  • 損害保険料
  • 支払手数料や諸会費

これらを所得に合算することで、1日あたりの単価を適正な水準まで引き上げることが可能です。保険会社はこれらの経費を除外して計算してくることが多いため、確定申告書の決算書(収支内訳書)を詳細にチェックする必要があります。

3. 青色申告特別控除と所得の捉え方

3. 青色申告特別控除と所得の捉え方

節税のために「青色申告特別控除(最大65万円)」を利用している場合、この控除額は税法上の特典であり、実際の支出を伴うものではありません。そのため、休業損害の計算においては、「控除前の所得額」をベースに考えるのが実務上のルールです。

4. 保険会社の「減収がない」という反論への対策

4. 保険会社の「減収がない」という反論への対策

自営業者の方が直面しやすいのが、保険会社からの「事故後の確定申告を見ても所得が減っていないから、損害はない」という反論です。しかし、数字上減収がなくても、実質的な損害が認められる場合があります。

親族の支援等による売上維持: 被害者が休んでいる間、親族らが本人に代わって事業を維持した結果として減収を回避した場合、それは親族の努力によるものであり、本人には休業損害が認められる余地があります。

事故前に受注した仕事の消化: 事故前に受注していた仕事をこなしただけで、新規の営業ができず、将来の売上の種が消えてしまった場合などは、一定の休業損害を認めるべきと考えられています。

このような事情がある場合、業務実態や親族の寄与度を詳細に主張し、実質的な「労働能力の喪失」を立証していく必要があります。

認められなかった判例

【事件番号】 大阪地方裁判所判決/令和2年(ワ)第3597号
【判決日付】 令和5年7月20日

原告は、本件事故当時、防水工事の自営業を始めようとしていた旨主張し、その証拠として名刺(甲23)を提出するが、これのみで、原告が本件事故当時に防水工の自営業を現実的に開始しようとしており、本件事故による休業のために本来得られるはずの収入を失ったと認めることは困難であり、その他に原告の主張を裏付ける具体的な証拠はない。

認められた判例

【事件番号】 大阪地方裁判所判決/平成25年(ワ)第5632号
【判決日付】 平成27年7月28日

前記(1)カにおけるのと同様,葛城病院入院中(40日間)における休業割合は10割とするのが相当である。他方,葛城病院退院後の平成21年12月18日から症状固定日である平成23年2月18日まで(428日間)については,左上下肢の知覚障害・筋力低下,左足関節底屈背屈不能,歩行障害が残ったため,現場作業のみならず現場の見回りや監督等に従事するのも困難となったこと(甲44,75,原告本人),他方,第2事故後である平成22年には,原告は自営業で198万2216円の事業所得を計上していること(なお,同年の事業収入は8493万7969円を計上しているが,これは,外注割合の増加に伴って経費が増加したことが影響していると判断することが可能である。)(甲59)を考慮し,期間全体を通じて休業割合を5割とするのが相当である。

基礎収入を前同様433万6904円として休業損害を算定すると,301万8009円となる(円未満切捨て)。
4,336,904円÷365日×(40日×1+428日×0.5)=3,018,009円

弁護士へ依頼するメリットと正当な賠償

弁護士へ依頼するメリットと正当な賠償

自営業の休業損害は、保険会社が自発的に認めてくれることは極めて稀なケースです。そのため、初期段階から適切なアドバイスを受け、必要な証拠を揃える必要があります。

交通事故の休業損害は、保険会社が提示する金額(任意保険基準)と、裁判実務で認められる金額(弁護士基準・裁判基準)との間に大きな開きがあることが少なくありません。

弁護士にご依頼いただくことで、医学的見地や過去の膨大な裁判例に基づいた適切な反論を行い、被害者様が本来受け取るべき正当な賠償額の獲得を目指すことができます。

なお、休業損害だけでなく、後遺症が残った際の後遺障害慰謝料や逸失利益を含め、トータルで数百万から数千万円単位の差が出るケースも珍しくありません。

弁護士特約とは?弁護士費用がかからない?

弁護士特約とは?弁護士費用がかからない?

【弁護士費用特約】とは、ご自身が加入している、自動車保険、火災保険、個人賠償責任保険等に付帯している特約です。

弁護士費用特約が付いている場合は、交通事故についての保険会社との交渉や損害賠償のために弁護士を依頼する費用が、加入している保険会社から支払われるものです。

被害に遭われた方は、一度、ご自身が加入している各種保険を確認してみてください。わからない場合は、保険証券等にかかれている窓口に電話で聞いてみてください。

弁護士特約の費用は、通常300万円までです。多くのケースでは300万円の範囲内で、自己負担一切なしでおさまります。

骨折や重傷の場合は、一部超えることもありますが、弁護士費用特約の上限(通常は300万円)を超える報酬額となった場合は、越えた分を保険金からいただくということになります。

なお、弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼する場合、どの弁護士を選ぶかは、被害に遭われた方の自由です。

※ 保険会社によっては、保険会社の承認が必要な場合があります。

弁護士費用特約を使っても、等級は下がりません。弁護士費用特約を利用しても、等級が下がり、保険料が上がると言うことはありません。

弁護士特約はご自身に過失があっても使えます。また、過失割合10:0の時でも使えます。なお、被害者に過失があっても利用できます。

まずは、ご自身やご家族の入られている保険に、「弁護士特約」がついているか確認してください。火災保険に付いている事もあります。

自営業者の方にとって、事故による休業は事業の存続に関わる重大な事態です。保険会社の事務的な対応に納得がいかない、適正な単価で計算してほしいという方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

ご相談 ご質問

ご相談 ご質問

大きなケガ(重傷)の事故では、相手保険会社の提示額が、弁護士基準よりも大幅に低い「任意保険基準」で計算されているケースが少なくありません。

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所は、さいたま市大宮区にあり、設立以来35年以上の実績があり、多数の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。

交通事故においても、専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。

交通事故でお悩みの方に適切なアドバイスができるかと存じますので、まずは、一度お気軽にご相談ください。ラインや電話での無料相談も可能です。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 申 景秀

弁護士のプロフィールはこちら

交通事故コラム 休業損害関連リンクはこちら

  1. 【弁護士が解説】交通事故の休業損害(会社役員・無職者編)認められるための高い壁
  2. 【弁護士が解説】交通事故の休業損害(主婦・主夫編)家事労働も正当に評価されます
  3. 【弁護士が解説】交通事故の休業損害(会社員編)有給休暇や残業代も請求できる?
  4. 【弁護士が解説】交通事故の休業損害(自営業・個人事業主編)確定申告と固定経費の考え方