紛争の内容
ご相談者が、一時停止のある交差点を一時停止後、直進しようと頭を出したところ、交差する道路上には信号機が設置されており、当該信号機は青色のため、スピードを上げた相手方の車が止まりきれずに衝突した交通事故でした。

十字路の交差点で、一方の道路には車用の信号機があり、他方の道路には一時停止のみで信号機がないという場面です。
最初は、信号機により交通整理されている交差点かどうかが争いになりましたが、結論としては、それには当たらないものでした。
このような交差点は、比較的珍しいと思いますが、弊所では複数件、担当したことがありました。

争点としては、過失割合、特に、ご相談者が一時停止していたか否か、相手方が15km程度のスピード違反をしていたかどうか、損害の内容等でした。

交渉・調停・訴訟等の経過
依頼当初から、すでに相手方には代理人弁護士がついており、過失割合で争いが収まりませんでした。
ご依頼者は、50:50を主張、相手方は、100:0を主張しておりました。

まずは、当該道路の制限速度を調べました。
また、相手方にはドライブレコーダーが存在したため、任意に開示を受けました。
そこには、大きな音楽を鳴らす音声や、スピードが約15kmオーバーしている速度計が記載されており、相手方にとっては不利な内容も含まれておりました。
一方、ご相談者の車両には、一時停止線から右に障害物があり、相手方車両のドラレコからもご相談者が一時停止したかどうかまでは確認できませんでした。

相手方の保険会社は、賠償交渉ではかなり渋いことが有名な会社であり、滅多にありませんが、相手方側から、「債務不存在確認訴訟」を提起してきました。

そのため、ご依頼者は、全面的に受けてたち、反訴を提起して、損害賠償請求を裁判上で行使しました。
裁判では、お互いに主張立証を尽くし、また、人身傷害保険金(ご依頼者の加入する任意保険会社からの保険金)を受け取り、その残りを請求しました。

主張としては、先ほどのドライブレコーダーの映像を提出し、また、部分ごとに写真を切り取って、どのタイミングで何kmオーバーであったか、ブレーキを操作したのはいつか、などを細かく主張しました。

本事例の結末
結局、裁判所から和解案が提示され、双方納得のうえ、和解が成立しました。
裁判所には、あらかじめ主張していたとおり、「裁判基準差額説」の考え方により、ご依頼者の過失に関わらず、人身傷害保険金をまず過失部分に充当し、その残りを相手方に支払わせるという内容で幕を閉じました(もちろん、自分の過失に当たる相手の物損は負担する必要がありますが、対物保険金により持出しはありませんでした)。
裁判所の定めた過失割合は、相手方30:ご依頼者70という内容であり、0:100から大きく過失を削ることができました。

本事例に学ぶこと
保険金が絡む交通事故は、複雑です。
それゆえ、専門性が必要になります。
判例を知らなければ、損をすることがあります。

今回は、「訴訟基準差額説」や「裁判基準差額説」といわれる考え方により、人身傷害保険金を受け取ることで、その残り(つまり過失部分で、本来は相手方に請求できない部分)を含め、全額を受け取ることができました。
つまり、自分の保険と相手の保険の併用で、過失にかかわらず、損害をすべて補える場合があるということです。
「私も交通事故を受け過失があり悩んでいる」
「私も交通事故で悩んでいるが、この記事を読んでも今一わからない」
このような方はぜひ、ご相談ください。

ホワイトボードに図を書きながら、対面かつ口頭で、分かりやすくご説明いたします。

弁護士 時田 剛志