紛争の内容
交差点で右折しようと普通乗用自動車に乗りウインカーを付けて道路上に停車していた相談者に対し、後方から普通乗用自動車に追突された事故でした。
相談者は、首と腰に衝撃を受け、即日、通院を開始しました。
交通事故は二回目とのことでしたが、一回目に何かと大変な思いをされたそうで、今回は事故直後頃から弊所に相談され、通院期間中から弊所の交通事故専門チームの弁護士がご依頼を受けました。

交渉・調停・訴訟などの経過
当面は、依頼者には安心して通院をしていただき、治療を受けていただきました。
通院期間は190日程でしたが、その間、相手保険会社からは、治療費一括対応の打切りを提示されたこともありましたが、通院継続の必要性を説明し、医師の判断のもと、双方が合意できる日付まで通院することはできました。問題は、後遺障害でした。
依頼者は、腰部の痛みを訴えており、弊所では、自賠責に対する後遺障害申請を進める方針を固めました。医師には、漏れなく、後遺障害診断書、とりわけ「他覚症状および検査結果」を充実するように書いていただくことができました。つまり、捻挫・打撲などの症状では、他覚所見がないと諦めてしまいがちですが、神経学的所見を調査するなど、例えば、本件では、スパーリングテスト「+」などの診断を受けることができました。
その結果、後遺障害等級14級9号に認定されました。
その上で、裁判基準に基づいて相手保険会社に損害賠償請求を提示しました。
当初、相手保険会社は、依頼者に「変形性腰椎症」や「腰部脊柱管狭窄症」などの既往症があったことから、責任負担額の大幅な減額(40%減)を求めてきました。
もっとも、こちらとしては、裁判例を用いて反論を加えました。
具体的には、以下のような主張を行いました。

40%の減額については、到底承服できません。
素因減額をしなければ損害の公平な分担の見地に反すると言える場合には一定の減額の余地はありますが、当職依頼者は、事故前は重労働を熟せる程度に腰部の状態は極めて良好であったのであり、本件事故後に痛みが顕著に現れております。参考までに、被害者本人の陳述書、被害者妻の陳述書を提出しますので、ご覧下さい(資料1乃至2)。
この点、類似の裁判例では、そもそも既存の脊柱管狭窄及び頚椎ヘルニアを負っていた被害者につき、事故前に具体的な症状が出ておらず、その程度は加齢に伴う通常の変性の範囲内のものであるとして、考慮対象とせず、減額を否定した判例(名古屋地判平成26年1月31日)(資料3)、外傷性ではない頚椎椎間板ヘルニアについて、事故の衝撃の程度に照らして頚部に14級9号に該当する後遺障害が発生することは何らおかしくないとし、素因減額しなければ損害の公平な分担に反するとはいえないとして、考慮しなかった判例(東京地判平成23年1月26日)(資料4)があり、主治医の診断書に変形性脊椎症の既往症と記載されているに過ぎない当職依頼者とも共通するのであるから、素因減額は認められないと思料します。
万一、素因減額の主張を維持されるのであれば、まずは具体的な証拠として、貴社顧問医の意見を裏付ける意見書等、医師の見解を明確にご開示下さい。

本事例の結末
その結果、保険会社も折れ、結果として、依頼者も5%程度の減額については受け入れたものの、当初保険会社の回答から10倍もの金額で裁判をせず示談することができました。回収額は合計約390万円にのぼります。

本事例に学ぶこと
後遺障害という前哨戦で、きちんと神経学的所見を書き入れてもらったため、14級9号の獲得に結び付きました。示談交渉では、実は裁判をやってみると予想しなかった不利益となる点が判明するなどリスクもありますから、かようなリスクを背負わず、迅速に、かつ最も高い賠償を得られるというのが、ベストな解決でした。
交通事故でお悩みの方、とくに後遺障害申請についてお悩みの方、相手保険会社との示談交渉でできるだけ賠償額を勝ち取りたい方は、グリーンリーフ法律事務所の交通事故専門チームまでお気軽にご相談ください。

弁護士時田剛志