紛争の内容
事故が起きたのは、車がすれ違うのに十分な余裕があるとはいえない道路上でした。
依頼者は、対向してくる車と行き違うために、自らの車を左側に寄せて完全に停止し、相手の車が通り過ぎるのを待っておられました。
運転者としては、これ以上ないほど適切な行動です。
ところが、そこへ進行してきた対向車が、依頼者の車に接触してきたのです。
依頼者の車は、修理費だけで九〇万円を超えるほどの損傷を負いました。
それだけの被害を受けながら、依頼者を苦しめたのは、金額そのものよりも過失割合をめぐる相手方の主張でした。
当初、この接触については、依頼者にも半分の責任がある、すなわち五分五分であると言われていたのです。
止まっていた自分の車に、動いてきた車がぶつかってきた。それなのに、半分は自分のせいだと言われる。
停止していた側に、いったいどのような落ち度があるというのか――。
依頼者が納得できないのは、当然のことでした。
すれ違いざまの接触事故は、双方が動いている場面が多いこともあって、実務上も「お互い様」として過失を分け合う処理がされがちです。
しかし本件の実態は、それとはまったく異なるものでした。この理不尽さを正したいというお気持ちから、依頼者は当事務所に相談を寄せられたのです。
交渉・調停・訴訟等の経過
当職がまず着目したのは、依頼者の車に搭載されていたドライブレコーダーの映像でした。
事故の状況を客観的に物語る、何より強力な証拠です。
もっとも、映像を「見れば分かる」というだけでは、交渉の場では十分ではありません。
相手方が過失を争っている以上、その映像から何が客観的に読み取れるのかを、動かしがたい形で示す必要があります。
そこで当職は、映像等を専門的に解析したテクニカルレポートを取得し、事実関係を科学的に裏づけることにしました。その解析により、いくつもの重要な事実が明らかになりました。
第一に、依頼者の車は接触の時点で完全に停止していたこと。
第二に、相手方の車が、すれ違う直前に道路の中心を越えて走行していたこと。
そして第三に、現場の状況からすれば、相手方の側にはすれ違う際の回避スペースが存在していたということです。
これらの事実を土台に、当職は法的な主張を組み立てました。依頼者は左側に寄せて完全に停止しており、それ以上の回避行動をとることは不可能な状態にありました。
他方、相手方は、回避するための余地がありながら適切な措置をとらず、道路の中心を越えて漫然と進行してきたのです。この構図のもとで、依頼者に結果回避義務違反などの過失を論じる余地はありません。
当職は、そのように整理したうえで、相手方の共済組合に対し、過失割合を百対〇とする全面的な賠償を求めました。
あわせて当職は、修理費に加えて評価損(いわゆる格落ち損害)についても請求を行いました。
修理箇所に車体の骨格部分が含まれており、依頼者の車が中古車市場で修復歴車として扱われることになるため、その交換価値の下落を損害として主張したのです。
当初は、修理費のおよそ二割に相当する金額を請求しました。
もっとも、交渉を進めるなかで、依頼者の車の年式などを踏まえると、評価損についてはこちらの主張を貫き通すことが必ずしも容易ではないという見通しが立ってきました。
ここで当職が優先したのは、依頼者にとって何が最も大切かという視点です。本件で依頼者が何より求めておられたのは、「自分に非はなかった」という一点を認めさせることでした。
評価損に固執して交渉を長引かせるよりも、過失割合という本丸を確実に押さえ、早期に解決へと導くほうが、依頼者の利益にかなうと判断したのです。
そこで当職は、依頼者と十分に協議したうえで、評価損の請求は取り下げるという決断をしました。
本事例の結末
その結果、当初は五分五分と言われていた過失割合は、最終的に百対〇へと改められ、依頼者にはまったく非のない事故として示談が成立しました。
修理費についても、依頼者の負担なく全額の賠償を受けることができています。
もし当初の主張どおり五分五分で処理されていれば、依頼者は九〇万円を超える修理費のうち、半分近くを自ら負担しなければならなかったことになります。
客観的な証拠に基づいて主張を尽くしたことが、金額面でも大きな差を生んだのです。そして何より、停止していた自分に落ち度はなかったという当たり前の事実が、正式に認められました。
長く抱えていた理不尽さに区切りをつけることができ、依頼者は深く安堵しておられました。
本事例に学ぶこと
すれ違いざまの接触事故では、双方に一定の過失があるとして、五分五分に近い過失割合を提示されることが少なくありません。
しかし、それが常に事故の実態を正しく反映しているとは限らないのです。本件のように、一方が完全に停止していて回避の余地がなく、他方が道路の中心を越えて進行してきたという場合には、停止していた側の過失を認める余地はありません。
提示された割合に違和感を覚えたときは、その直感を大切にしていただきたいと思います。
そして、その違和感を結果に結びつけるために欠かせないのが、客観的な証拠です。
ドライブレコーダーの映像は、その代表格といえます。もっとも、映像があるだけで自動的に主張が通るわけではありません。
そこから何が読み取れるのかを専門的に解析し、法的な論理へと組み立てて初めて、相手方を動かす力を持つのです。
本件で専門的な解析レポートを取得したことは、まさにその作業にあたります。
もう一つ、本件が示すのは、交渉においては「何を優先し、何を手放すか」という判断もまた重要だということです。
本件では、年式などの事情から立証に困難が予想された評価損の請求を取り下げる一方で、依頼者が最も重視していた過失割合を確実に勝ち取りました。
すべてを求め続けることが、常に依頼者の利益になるとは限りません。
何を大切にしたいのかを依頼者と共有し、そこへ資源を集中させる。
そうした判断ができるのも、代理人が関与する意義の一つといえるでしょう。
交通事故の過失割合や賠償額に納得がいかないとお感じの方は、どうか泣き寝入りをなさらないでください。
客観的な証拠と適切な主張によって、結論が大きく変わることがあります。まずは一度、グリーンリーフ法律事務所にご相談ください。
私たちは、依頼者が本当に大切にしたいものを見据えながら、最善の解決に向けて力を尽くしてまいります。














