交通事故の後遺障害第1級とは?認定基準・慰謝料・逸失利益を弁護士が解説

※本記事は、さいたま市大宮区にある弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の交通事故専門チームの弁護士が執筆しています。

交通事故で治療を続けても症状が残った場合、「後遺障害等級」が認定されるかどうかは、その後に受け取る賠償額へ大きな影響を与えます。後遺障害が認定されると、原則として後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益が新たな損害項目として問題になります。

後遺障害等級は、最も重い第1級から最も軽い第14級まであります。さらに、第1級・第2級には「介護を要する後遺障害」として別表第一の等級があるため、自賠責制度上は合計16の区分があります。国土交通省も、後遺障害等級は施行令別表第一第1級・第2級と別表第二第1級から第14級に区分されると案内しています。

重要なのは、単に症状が残っているだけで自動的に等級が付くわけではないという点です。事故との因果関係が認められ、症状が将来にわたり回復困難と見込まれ、その存在が医学的に認められ、法令上の等級基準に該当する必要があります。

本記事では、後遺障害第1級について、法令上の全ての認定基準、自賠責保険の限度額、慰謝料、逸失利益、認定を受ける際の実務上のポイントまで、個人の交通事故被害者向けに整理して解説します。

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後遺障害第1級とは

後遺障害第1級とは

後遺障害第1級は、自動車損害賠償保障法施行令の後遺障害等級表に定められた障害のうち、第1級に該当するものです。第1級が最も重く、第14級が最も軽い等級であるため、第1級はその中の一つの区分です。

第1級には、通常の後遺障害を定める別表第二のほか、神経系統・精神又は胸腹部臓器に著しい障害が残り介護を要する場合の別表第一があります。別表第一と別表第二では自賠責保険の限度額や慰謝料等の扱いが異なります。

代表的には、次のような障害が問題になります。

  • 遷延性意識障害や重度高次脳機能障害などで常時介護が必要となるケース
  • 両眼失明など極めて重い視覚障害
  • 両上肢・両下肢の切断又は機能全廃など、日常生活と就労の双方へ決定的な影響を及ぼす障害

後遺障害第1級の認定基準をすべて確認

後遺障害第1級の認定基準をすべて確認

以下は、国土交通省及び自動車損害賠償保障法施行令の等級表に基づく基準です。公的な等級表の文言を基礎として掲載しています。

【介護を要する後遺障害(別表第一)】

1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

具体的には、脳・脊髄・精神又は胸腹部臓器の重い障害により、日常生活動作について他人の介助が必要な状態が問題となります。常時介護か随時介護かは、介助が必要となる行為と頻度を具体的に確認します。

2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

具体的には、脳・脊髄・精神又は胸腹部臓器の重い障害により、日常生活動作について他人の介助が必要な状態が問題となります。常時介護か随時介護かは、介助が必要となる行為と頻度を具体的に確認します。

【通常の後遺障害(別表第二)】

1. 両眼が失明したもの

2. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの

3. 両上肢をひじ関節以上で失つたもの

4. 両上肢の用を全廃したもの

5. 両下肢をひざ関節以上で失つたもの

6. 両下肢の用を全廃したもの

認定基準に出てくる用語をわかりやすく解説

認定基準に出てくる用語をわかりやすく解説

失明について

「失明」は、単に視力が悪いという意味ではなく、自賠責の認定基準上の視覚機能の状態に該当するかを医学的に確認します。視力は原則として矯正視力を基準として評価されます。

咀嚼について

咀嚼・言語機能障害では、口腔・顎・舌などの損傷内容と、実際に食事や発音にどの程度支障があるかが問題になります。歯牙障害とは別の系列として評価されることがあります。

神経系統について

神経系統・精神の障害では、高次脳機能障害、脊髄損傷その他の中枢神経障害が問題となります。画像所見だけでなく、神経心理学的検査、日常生活状況、家族や職場からの情報などを総合評価することがあります。

胸腹部臓器について

胸腹部臓器の障害では、心臓、肺、肝臓、腎臓、消化器などの機能障害が対象となり得ます。単なる傷病名ではなく、残った機能障害と仕事・日常生活への影響を確認します。

用を全廃について

「用を全廃した」「用を廃した」という表現は、単に痛くて使いにくいという意味ではなく、関節可動域や筋力、神経障害などからみて機能がほぼ失われたと評価される状態を指します。

関節について

関節機能障害では、肩・肘・手首や股・膝・足首の可動域を測定し、原則として健側との比較等により障害の程度を評価します。測定方法が適切であることも重要です。

第1級が認定された場合にもらえる金額の考え方

第1級が認定された場合にもらえる金額の考え方
項目第1級の目安
自賠責保険の後遺障害限度額3,000万円(別表第二)/4,000万円(常時介護を要する別表第一)
自賠責基準の後遺障害慰謝料等1,150万円(別表第二。被扶養者がいる場合は増額)/1,650万円+初期費用500万円(別表第一)
弁護士基準(裁判基準)の後遺障害慰謝料2,800万円
自賠責の労働能力喪失率100%

後遺障害慰謝料には、自賠責保険の支払基準と、裁判例・交通事故実務で用いられるいわゆる弁護士基準(裁判基準)があります。任意保険会社が当初提示する金額が弁護士基準と同額とは限りません。

また、自賠責保険の「保険金限度額」と「後遺障害慰謝料」は同じものではありません。限度額の中には、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益も含まれます。したがって、限度額の数字をそのまま慰謝料額と理解しないことが重要です。

弁護士基準の後遺障害慰謝料は法令で固定された金額ではなく、裁判実務上の一般的な目安です。事故態様や被害の内容などにより個別に増減が問題となることがあります。

介護を要する別表第一の第1級・第2級では、自賠責の慰謝料等に加えて初期費用が定められています。また、民事上の損害賠償では将来介護費等が大きな損害項目となることがあります。

第1級の後遺障害逸失利益

第1級の後遺障害逸失利益

第1級の労働能力喪失率は、自賠責の支払基準上、原則として100%です。

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったために将来の労働能力が低下し、得られなくなった収入を賠償するものです。一般には「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という考え方で算定します。

自賠責の支払基準には等級ごとの労働能力喪失率がありますが、民事上の損害賠償でその率が機械的に適用されるとは限りません。職種、具体的な仕事上の支障、収入への影響、障害の性質を踏まえて争われることがあります。

特に醜状障害、歯牙障害、神経症状などでは、等級が認定されても実際の労働能力への影響を相手方保険会社から争われることがあります。逆に、職業上の影響が大きいことを具体的に立証できれば、相応の逸失利益を主張できる場合があります。

第1級の認定で特に重要なポイント

第1級の認定で特に重要なポイント

第1級・第2級には、通常の後遺障害を定める別表第二とは別に、神経系統・精神又は胸腹部臓器の重度障害で介護を要する場合の別表第一があります。介護の必要性が認められると自賠責限度額も異なるため、日常生活で実際にどのような介助が必要かを具体的に記録することが重要です。

重度後遺障害では、後遺障害慰謝料と逸失利益だけでなく、将来介護費、家屋・自動車改造費、介護器具費、近親者付添費などが大きな争点になることがあります。自賠責限度額だけで損害全体が収まるケースばかりではありません。

第3級以上では労働能力喪失率は自賠責基準上100%です。ただし、実際の損害賠償では基礎収入、就労可能年数、事故前の就労状況などを正確に資料化する必要があります。

また、同じ等級の中でも障害の種類は大きく異なります。例えば視覚障害と関節障害では必要な検査も、仕事への影響の立証方法も異なります。「第1級だからこの資料を出せばよい」という一律の申請ではなく、該当する号に応じた医学資料を揃える必要があります。

事故直後から症状固定までに気を付けたいこと

事故直後から症状固定までに気を付けたいこと

後遺障害認定を考える場合でも、認定のためだけに不必要な治療や検査を受けるべきではありません。まず医師の医学的判断に従って必要な治療を受け、そのうえで残存症状を客観化するために必要な検査が実施されているかを確認します。

ケガによっては。交通事故後に整骨院へ通うこと自体が直ちに問題となるわけではありませんが、後遺障害診断書を作成するのは医師です。症状が続いているのに整形外科への受診間隔が長期間空くと、事故との因果関係や症状の継続性を争われる原因になることがあります。

画像所見がある場合には、その画像が事故直後からのものか、経年性変化との区別が可能かが重要です。MRI、CT、レントゲン等は、傷病と症状に応じて必要性を医師と相談します。

症状の内容は、受診のたびに大げさに伝えるという意味ではなく、改善した点・残っている点を正確に医師へ伝えることが重要です。事故直後には存在した症状が長期間カルテに記録されず、症状固定直前に初めて記載されると、事故との関係を疑われることがあります。

後遺障害等級認定の申請方法と異議申立て

後遺障害等級認定の申請方法と異議申立て

後遺障害申請は、一般に治療を続けた後、医師が症状固定と判断した段階で後遺障害診断書を作成し、必要な画像資料や検査結果等とともに申請します。任意保険会社を通じて行う事前認定と、被害者側が自賠責保険へ直接請求する被害者請求があります。

審査では書面資料が重要です。診察の場で本人が症状を訴えていても、診療録や後遺障害診断書に十分反映されていなければ、審査機関へ伝わりません。症状固定直前だけ対策するのではなく、事故直後からの治療経過と検査の積み重ねが重要です。

結果が「非該当」だったり、想定していた等級より低かったりする場合には、理由を確認した上で異議申立てを検討できます。単に同じ資料を再提出するのではなく、認定されなかった理由を分析し、新しい医学的資料や意見書等を追加できるか検討することが重要です。

自賠責保険の支払・等級認定に疑問がある場合には、異議申立てのほか、自賠責保険・共済紛争処理機構の紛争処理手続や、最終的には裁判で後遺障害の程度を争うことも考えられます。

複数の後遺障害がある場合は「併合」が問題になる

複数の後遺障害がある場合は「併合」が問題になる

交通事故によって複数の部位に後遺障害が残ることがあります。その場合、単純に二つの等級の保険金を足すのではなく、自賠責の「併合」ルールにより最終的な等級を定めることがあります。

別表第二では、5級以上の障害が二つ以上ある場合は原則として重い方を3級繰り上げ、8級以上が二つ以上なら2級、13級以上が二つ以上なら1級繰り上げるルールがあります。14級が複数ある場合は原則として14級のままです。ただし、組合せや上限等の例外があるため、具体的な事案では個別に確認します。

また、事故前から同じ部位に障害があり、事故によって程度が重くなった場合は「加重障害」として既存障害分を控除する考え方が問題となります。

よくある質問

よくある質問

Q 「症状固定」と言われたら治療を続けられないのですか

A 症状固定は、一般に治療を続けても大幅な改善が期待しにくい状態を意味します。症状固定後も医学的に必要な治療を受けること自体が禁止されるわけではありませんが、交通事故賠償上は治療費の扱いが変わるため、時期について慎重な判断が必要です。

Q 等級が高ければ示談金は自動的に決まりますか

A いいえ。後遺障害等級は慰謝料や逸失利益の重要な基礎になりますが、休業損害、治療費、過失割合、将来介護費など他の損害項目もあり、最終的な示談額は個別に算定します。

Q 保険会社の提示した等級は変更できませんか

A 認定結果に納得できない場合には、理由を精査し、追加資料を準備して異議申立てを行う方法があります。また、訴訟では自賠責の認定に裁判所が必ず拘束されるわけではありません。

まとめ

まとめ

後遺障害第1級には、視覚、聴覚、手足、神経系統、臓器など、法令で定められた複数の障害類型があります。認定されるかどうかは傷病名だけではなく、症状固定時の障害の程度が具体的な等級基準を満たしているかによって判断されます。

第1級が認定された場合、自賠責の労働能力喪失率は100%で、弁護士基準の後遺障害慰謝料は一般的な目安として2,800万円です。ただし、最終的な損害賠償額は基礎収入、労働能力喪失期間、過失割合その他の事情によって変わります。

適正な後遺障害認定を受けるためには、事故直後から必要な治療を受け、症状を医師へ正確に伝え、必要な検査を行い、症状固定時に後遺障害診断書へ残存症状を過不足なく反映してもらうことが重要です。

ご相談・ご質問

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グリーンリーフ法律事務所は、設立35年、弁護士18名が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。

当事務所では交通事故専門チームを設け、治療中の対応、後遺障害等級認定、異議申立て、過失割合、休業損害、逸失利益、慰謝料、保険会社との示談交渉など、交通事故に関するご相談をお受けしています。

後遺障害等級は、同じ傷病名であっても、画像所見、検査結果、症状の内容、治療経過、後遺障害診断書の記載等によって結論が異なります。保険会社から提示を受けた後に初めて検討するのではなく、症状固定や後遺障害診断書作成の段階から資料を整理することが重要です。

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この記事を書いた弁護士:弁護士 申 景秀

交通事故

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属。
獨協大学法科大学院を卒業し、司法試験を70番台という高順位で合格。札幌での司法修習を経て、現在は交通事故案件を中心に多数の損害賠償請求に対応している。後遺障害等級認定や保険会社との示談交渉を含む実務に精通し、緻密な法的思考に基づいた立証に注力。被害者の適正な賠償実現のため、専門知識を活かした迅速な解決を追求している。

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