紛争の内容
事故が起きたのは、丁字路の交差点でした。
依頼者は自転車に乗り、横断歩道を渡っておられました。
横断歩道は、歩行者や自転車が最も守られるべき場所です。
ところが、そこへ進行してきた自動車の運転者が依頼者を見落とし、そのまま衝突してしまったのです。
幸いにも、お怪我は比較的軽く済みました。
もっとも、自転車と自動車では、身体を守るものの有無に決定的な差があります。
ひとつ間違えば、重大な結果になりかねない事故でした。
依頼者は、ご高齢の方でした。
そして、そのことが本件におけるもうひとつの困りごとを生んでいました。
事故に遭った後、いったい何をどう進めればよいのか。
保険会社から連絡が来るけれど、言われている内容が適切なのかどうか判断できない。
どのような損害を、どこまで請求できるのか。
書類のやり取りにも不安がある。
手続そのものが分からず、途方に暮れておられたのです。
さらに本件では、依頼者の自転車も損傷していました。
もっとも、その自転車は決して新しいものではありませんでした。
年数の経った自転車について、物としての損害がどこまで認められるのか。
これも、ご本人だけでは判断のつきにくい問題でした。
こうした状況のなか、依頼者は当事務所に相談を寄せられました。
交渉・調停・訴訟等の経過
当職がまず行ったのは、依頼者に代わって窓口となり、手続の全体像をお示しすることでした。事故に遭われた方にとって、先の見えない状態ほど不安なものはありません。
これから何が起こり、いつ頃どのような判断が必要になるのか。それを具体的にご説明するだけでも、依頼者の負担は大きく軽くなります。
ご高齢の方にとって、慣れない書類のやり取りや保険会社との折衝を一手に引き受けてもらえることの意味は、決して小さくありません。
そのうえで当職が力を注いだのが、賠償水準そのものでした。交通事故の慰謝料には、自賠責保険の基準、保険会社が独自に用いる基準、そして過去の裁判例の蓄積に基づく裁判基準という3つの水準があります。
同じ怪我、同じ通院期間であっても、どの基準によるかで金額は大きく変わります。そして、被害者ご本人が直接交渉した場合、低い水準にとどまってしまうことが少なくありません。とりわけ、お怪我が軽い事案では、その傾向が強く表れます。
当職は、通院の経過や、事故が依頼者の生活に与えた影響を丁寧に整理したうえで、裁判基準に基づく慰謝料を求めました。
また、本件では、休業損害について事故後に先払いを受けておられましたが、その分も含めて全体の損害を積み上げ、最終的にいくらの賠償を受けるべきかという観点から交渉を組み立てていきました。
物損についても、当職は妥協しませんでした。年数の経った自転車であっても、依頼者が現に使用していた財産であることに変わりはなく、それを失った以上、正当な賠償を受ける権利があります。当職は、この点についても相応の金額を認めるよう求め、交渉を進めました。
本事例の結末
交渉の結果、人身に関する損害については、先に支払いを受けていた休業損害を含めて合計およそ53万円が認められ、そのうち未払いであった分の支払いを受けることができました。
あわせて、自転車の損害についても3万円が認められ、こちらも支払われています。
金額の規模としては、決して大きな事案ではありません。
しかし本件で意味があったのは、二つの点です。
ひとつは、裁判基準に基づく賠償水準を確保できたこと。
ご本人が直接交渉していれば、これより低い金額での示談となっていた可能性が高かったと考えています。
もうひとつは、依頼者が手続の負担から解放されたことです。
何をすればよいのか分からないまま、言われるがままに書類に署名してしまう。そうした事態を避け、納得したうえで解決に至ることができました。
ご高齢の依頼者にとって、この一件に安心して区切りをつけられたことは、金額以上の価値があったと考えています。
本事例に学ぶこと
まず、自転車で事故に遭われた場合も、自動車同士の事故と同じく、正当な賠償を求めることができるということです。
自転車は道路交通法上は軽車両にあたりますが、横断歩道を渡っていた側が一方的に見落とされて衝突されたような場合、被害者としての立場に変わりはありません。
「自転車だから仕方がない」と考える必要はありません。
次に、賠償の水準は、誰が交渉するかによって変わり得るということです。
慰謝料には複数の基準があり、弁護士が代理人として関与することで、裁判基準に基づく賠償を求めていける場合が多くあります。
お怪我が軽く、通院期間が短い事案であっても、この差は生じます。提示された金額をそのまま受け入れる前に、一度専門家の目を通してみる価値があります。
また、古くなった物についても、損害としてきちんと請求できるということです。年数が経っているからといって、賠償を諦める必要はありません。
そして何より、手続そのものが負担になっている方こそ、専門家を頼っていただきたいということです。
とりわけご高齢の方や、こうした手続に不慣れな方にとって、保険会社とのやり取りは大きなストレスとなります。
何が適切なのか判断できないまま話が進み、後になって「あのとき署名しなければよかった」と悔やまれる方もいらっしゃいます。
代理人が窓口となることで、その不安から解放され、内容を理解したうえで納得のいく解決を選ぶことができます。
交通事故に遭われ、どう進めればよいのか分からずお困りの方、ご家族が事故に遭われて心配されている方は、どうか一人で抱え込まず、グリーンリーフ法律事務所にご相談ください。
私たちは、皆様の不安に寄り添いながら、正当な賠償の実現に力を尽くしてまいります。














