紛争の内容
ご依頼者の方は、お子様を乗せて自家用車を運転中、信号待ちで停車していたところ、後方から来た車両に追突されました。
ご依頼者の方には過失がなく、100対0の事故でした。

ご依頼者の方は専業主婦として家事や育児に従事しており、事故後は首や腰の痛みのため、通院しながら家事に支障をきたす日々が続きました。

また、事故の衝撃により車両は大きく損傷し、修理費が車両の時価額を上回るいわゆる経済的全損の状態でした。

さらに、後部座席に設置していたチャイルドシートも衝撃により破損していました。

相手方保険会社は、車両の時価額について市場の実勢価格よりも相当低い金額を提示し、主婦としての休業損害についても十分に考慮しない姿勢でした。
チャイルドシートの損害についても、当初は賠償の対象として明確に認める姿勢を示していませんでした。

交渉・調停・訴訟等の経過
ご依頼を受け、まず車両の時価額について検討しました。相手方保険会社の提示額は、車種や年式、走行距離、グレード等を十分に反映しておらず、実際に同種の車両を購入する場合の価格と乖離していました。

そこで、中古車市場における同一車種・同程度の年式・走行距離の車両の販売価格資料を収集し、これらを根拠として相手方保険会社の提示額が不当に低いことを主張しました。

次に、主婦休業損害については、ご依頼者の方が家事や育児を担っていたこと、事故後の症状により家事に支障が生じていたことを、通院状況や診断書、ご家族の陳述等をもとに具体的に主張しました。
専業主婦であっても、家事労働には経済的価値があり、賃金センサスの女性全年齢平均賃金を基礎として休業損害が認められるべきことを説明しました。

また、チャイルドシートについては、破損状況を写真で記録し、購入時の価格や使用期間を示す資料を整えたうえで、事故によって使用できなくなったものであることを主張し、買い替え費用相当額を請求しました。
チャイルドシートは安全装置であり、一度強い衝撃を受けたものは外観上の損傷がなくとも交換が推奨されていることも指摘しました。

これらの主張と資料をもとに、相手方保険会社と粘り強く交渉を重ねました。

本事例の結末
交渉の結果、車両の時価額についてはこちらの主張が認められ、相手方保険会社の当初提示額を大きく上回る金額で合意に至りました。
主婦休業損害についても、通院期間や症状の経過に応じた相当額が認められました。さらに、チャイルドシートの破損についても損害として認められ、買い替え費用相当額を獲得することができました。
これらを含めた内容で示談が成立し、訴訟に至ることなく、ご依頼者の方にとって納得のいく解決となりました。

本事例に学ぶこと
追突事故のような過失割合に争いのない事故であっても、損害の金額については保険会社との間で見解が分かれることが少なくありません。

特に車両の時価額については、保険会社の提示額が実際の市場価格を下回っていることが多く、同種車両の市場価格資料を丁寧に集めて反論することで、大きく金額が変わる可能性があります。

また、専業主婦の方であっても、家事労働には経済的な価値があり、事故によって家事に支障が生じた場合には休業損害が認められます。
ご自身が収入を得ていないからといって諦めてしまう必要はなく、症状や家事への影響をきちんと記録し、主張していくことが大切です。

さらに、車両以外にも、チャイルドシートのように車内にあった物が事故で損傷した場合には、その損害も賠償の対象となり得ます。
見落とされがちな損害についても、写真や購入資料を残しておき、漏れなく請求することが適正な賠償につながります。

保険会社の提示額をそのまま受け入れる前に、一度専門家にご相談いただくことで、本来受け取ることができる賠償を確保できる場合があることを、本事例は示しています。

弁護士 遠藤 吏恭