紛争の内容
ご依頼者の方は、自転車で道路を走行していたところ、交差点付近で進行してきた自動車と接触し、転倒して負傷されました。事故により頸部や腰部に痛みが生じ、整形外科への通院を続けることとなりました。
自転車と自動車の事故では、自動車側に高い注意義務が求められる一方で、自転車側の走行位置や交差点への進入方法等をめぐって過失割合が争われることが少なくありません。本件でも、相手方保険会社は、ご依頼者の方の側にも一定の落ち度があったと主張していました。
さらに、通院を続けている最中に、相手方保険会社から治療費の支払いを終了したいとの連絡がありました。ご依頼者の方には痛みが残っていたにもかかわらず、治療を打ち切られそうな状況となり、このまま治療を続けられなくなるのではないか、事故によって残った症状が正当に評価されないのではないかという不安を抱えて、ご相談にお越しになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
まず、相手方保険会社による治療費打ち切りの打診に対し、治療の継続が必要であることを主張しました。医師に症状の推移や治療の必要性について確認したうえで、通院の頻度、施行されている治療の内容、症状の改善状況を整理し、現時点で症状固定と判断するのは相当でないことを具体的に説明しました。その結果、相手方保険会社による治療費の支払いを一定期間延長させることができ、ご依頼者の方は必要な治療を継続することができました。

その後も通院を続けましたが、痛みやしびれといった症状が残存したため、医師と相談のうえで症状固定とし、後遺障害の申請を行う方針としました。
後遺障害の申請にあたっては、後遺障害診断書の記載内容が極めて重要になります。そこで、医師に対し、残存している自覚症状の内容と程度、神経学的検査の結果、画像所見、症状の一貫性や常時性が分かるよう、診断書に具体的に記載していただけるようお願いしました。あわせて、事故直後からの通院状況や症状の推移が客観的に分かる資料を整え、事故の態様からしても相応の衝撃が加わっていることを説明できるよう、事故状況に関する資料も揃えました。これらの資料を揃えたうえで、被害者請求の方法により自賠責保険に対して後遺障害の申請を行いました。

その後、相手方保険会社との間で、損害額および過失割合について交渉を行いました。治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料について、裁判所基準に基づいて算定した金額を提示し、相手方保険会社の当初提示額が低額にとどまっていることを指摘しました。過失割合についても、事故当時の状況や道路の形状、双方の進行状況を踏まえ、ご依頼者の方の過失は相手方の主張する程度には至らないことを主張し、粘り強く交渉を重ねました。

本事例の結末
交渉の結果、入通院慰謝料については裁判所基準に近い水準で算定され、過失割合についても当方の主張に沿った修正がなされました。最終的に、相手方保険会社が当初想定していた金額を上回る内容で示談が成立しました。
治療を途中で打ち切られることなく必要な治療を受けられたこと、そして残存した症状について後遺障害の申請まで手を尽くしたうえで解決に至ったことにより、ご依頼者の方にご納得いただける形で事件を終えることができました。

本事例に学ぶこと
交通事故の被害に遭われた方にとって、治療費の打ち切りは大きな不安のもととなります。相手方保険会社から支払いの終了を告げられたとしても、それは保険会社の判断にすぎず、治療を終えるべきかどうかを最終的に決めるのは医師の医学的判断です。症状が残っているにもかかわらず自己判断で通院をやめてしまうと、症状が改善しないだけでなく、その後の賠償の場面でも不利に働くおそれがあります。治療の継続が必要であることを、医学的な根拠とともに適切に伝えていくことが大切です。

また、後遺障害の申請は、単に書類を提出すれば足りるというものではありません。自覚症状の内容、他覚的所見、通院の経過、症状の一貫性といった要素が総合的に判断されるため、どのような資料を、どのような形で揃えるかによって結論が変わり得ます。特に後遺障害診断書は判断の要となる書類であり、記載が不十分であったために本来の症状が正しく伝わらないという事態も起こり得ます。申請を行う以上は、できる限りの準備を尽くしておくことが重要です。

さらに、自転車で自動車と接触した事故の場合、自転車側にも一定の過失があると主張されることが多く、この過失割合の差は最終的な受取額に直結します。事故状況を客観的な資料に基づいて的確に主張することが欠かせません。

事故に遭われた直後から、治療の受け方、通院の仕方、資料の残し方について助言を受けられるかどうかで、最終的な結果は大きく変わってまいります。事故に遭われた際には、できるだけ早い段階で弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

弁護士 遠藤 吏恭